発表

1C-080

新インバスケット・ゲームの信頼性と妥当性

[責任発表者] 伊藤 ひろみ:1
[連名発表者・登壇者] 森 美由紀#:2, 市川 竜太郎#:2, 伊藤 隆一:1
1:法政大学, 2:法政大学

1.研究の目的と意義
 今日,企業にとっての管理職は,部下やチームメンバーなどを指揮したり,日々の業務やプロジェクトを円滑に進行・運営させる重要な役職であり,大きな期待と責任を担う重要な存在であるといえる。今後,ますます管理職になりうる人材の発見と育成が必要だと考えられる。我々は,管理職の能力開発・能力把握の点からヒューマン・スキルを重視した能力開発用インバスケット・ゲーム技法が有用だと考えている。今回は,特に企業・組織や事業所単位の課題,問題の中で活躍する人物像を浮き彫りにするインバスケット・ゲーム問題を重要視した,日本SCT学会インバスケット・ゲーム研究会が作成した場面の異なる2つのインバスケット・ゲーム問題(A問題・S問題)の妥当性・信頼性について検証する。この技法を有効的に活用するためには,他の心理技法と同様,インバスケット技法においても作成後の妥当性・信頼性の検証が不可欠であると考えている。

2.方法
 今回のインバスケット・ゲームでは,被験者は,23問題からなるA問題,18問題からなるS問題において,各問題の解決法を表すディシジョンを記述した。また,各問題を,緊急度・重要度ともに各問題を「ー1~+3の評価を与える問題(緊急度・重要度の高い問題)」,「―1~+2の評価を与える問題(緊急度・重要度が中程度の問題)」,「-1~+1の評価を与える問題(緊急度・重要度の低い問題)」の3種類に分類して評価をつけた。各ディシジョンの採点に関しては,7名の訓練を受けた採点者が各々6名ずつの被験者のデータを採点し,合計得点としてのインバスケット・ゲーム得点を算出した。得たデータは,被験者の経験・能力・習熟度によりグループ分けをし,A問題においてはH,Lの2グループ,S問題においてはH,M,Lの3グループに分けて,採点者ごとのインバスケット・ゲーム得点の平均値の差の検定を行い,「問題の妥当性」の検証をした。
また,「問題の信頼性」を検証するため,Cronbachのα係数を算出した。
そして,「採点者の信頼性」を検証するため,採点者間のインバスケット・ゲーム得点の相関を確認した。
 さらに,インバスケット・ゲーム得点と登場人物評価の相関を確認することによって,被験者ごとに,インバスケット・ゲームの登場人物についての評価とインバスケット・ゲームの成績との間に関連性があるかどうかを検討した。

3.結果
 「問題の妥当性」は,A問題はt=7.877,df=40,p<.01,S問題F(df:2,29)=15.235,p<.01であった。A問題のデータ(各グループの平均値と標準偏差)を図1に,S問

題(各グループの平均値と標準偏差)のデータを図2に示す。どちらも,経験・能力・習熟度の高い被験者ほど良いインバスケット・ゲーム得点を出すことが示された。
「問題の信頼性」は,内部一貫法によってCronbachのα係数を算出したところ,A問題は0.816,S問題は0.895を示した。これは「問題の信頼性」を示す値としては十分な値であった。
 また,「採点者の信頼性」の結果は,A問題・S問題ともに2名の被験者のディシジョンを採点者全員が採点すると,相関関係がr=0.7~0.9と高いことが示された。訓練された評価者(採点者)はおおむね一定の評価を下せることが確認された。
 さらに,インバスケット・ゲーム得点と登場人物評価の相関係数は,A問題は0.781(p<.01),S問題は0.722(p<.01)となった。よって,A問題・S問題ともにインバスケット・ゲーム得点と登場人物評価との間に正の相関があることが示された。登場人物のパーソナリティを正しく評価できた被験者はインバスケット・ゲーム得点も高くなることが示されたことになる。

キーワード
インバスケット・ゲーム/マネジメント・ゲーム/管理能力


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