発表

1B-086

保育士の離職意思と職場環境の関係

[責任発表者] 國田 祥子:1
[連名発表者・登壇者] 小阪 芙由美#:1,2, 西 菜見子#:3
1:中国学園大学, 2:中国学園ソフトボール部, 3:中国学園大学・中国短期大学附属たねのくにこども園

目的
 近年,核家族や共働き家庭が増加し,保育所や幼稚園等の保育施設が子育て家庭の重要な存在として機能している。しかしその一方で,待機児童の多さや保育士不足など,多くの課題が指摘されている。
 2017年4月に施行された子ども・子育て支援新制度により,幼保連携型認定こども園等の子どもを保育する場は増加し,利用児童数も増加している。それにも関わらず待機児童が増加しているのは,保育施設の増加が需要の増大に追いついていないことを示している。保育施設が十分に増加しない最も大きな原因は,保育士不足であると言われている。2013年の調査によると,保育士の保育経験年数は7年未満が49.2%と半数近くを占めていた(厚生労働省,2015)。幼稚園教諭についても2017年の調査結果を見てみたところ,私立幼稚園では30歳未満の若手が49.5%を占めていた(文部科学省,2018)。若手の占める割合が多いのは早期離職者が多いためであり,そのことが保育士不足の一因なのではないだろうか。ではなぜ保育士や幼稚園教諭は,早期に離職してしまうのだろうか。
 幼稚園教諭の離職について調べた研究に,西坂(2014)がある。彼女は大阪府の私立幼稚園の教員756名を対象に,離職を考えた経験や職場環境について尋ねた。その結果,20-24歳では4-5年,25-29歳では3年以内に離職を考えている教諭が多かったことから,西坂(2014)は,多くの幼稚園教諭が30歳ごろを目安に離職を考えている可能性があると述べている。
 西坂(2014)は幼稚園教諭を対象にしており,保育士の離職と職場環境の関係を調べた研究は見当たらない。そこで本研究では保育士を対象に,離職を考えた経験(以下,離職希望経験)と職場環境への認識を尋ね,保育士の早期離職を防止するために必要な職場環境について検討することを目的とする。
方法
1.調査対象者
 保育所施設に勤める保育士145名を対象とした。
2.質問項目
 フェイス項目として保育経験年数,年齢,性別(任意)および離職希望経験の有無について尋ね,さらに職場環境尺度に「1.あてはまらない」-「5.あてはまる」の5件法で回答してもらった。職場環境尺度は西坂(2014)を参考に,保育士に対して使えるように一部改変して作成した。
3.手続き
 対象者が勤務する保育所等に質問紙を郵送もしくは持参し,回答後に封入用封筒に封入してもらった後,回収した。調査期間は2018年6月から2019年1月であった。
結果
 回答に不備のあったものを除き,93名分(男性1名,女性92名)を有効回答とした。離職希望経験あり群は65名,離職希望経験なし群は28名であった。回答者を年齢に基づき20-24歳,25-29歳,30-39歳,40-49歳,50歳以上の5群に分類したところ,それぞれ18名,19名,20名,20名,16名であった。また回答者を保育経験年数に基づき1-5年,6-10年,11-20年,21年以上の4群に分類したところ,それぞれ32名,19名,19名,23名であった。
 離職希望経験の有無と年齢および保育経験年数の関係について,直接確率検定を用いて調べた。その結果,年齢によって離職希望経験の有無に差が見られ(p = .016),20-24歳および50歳以上よりも25-29歳および30-39歳の方が,離職希望経験があると解答した人が多かった。また保育経験年数によっても差が見られ(p = .004),1-5年よりも6-10年の方が,21年以上よりも6-10年および11-20年の方が,離職希望経験があると解答した人が多かった。
 次に,離職希望経験の有無と職場環境尺度の因子得点を要因とする2要因分散分析を行った(図1)。因子の主効果が有意であり,「保育についての相談・支援機能」「研修・研究機会の保障」「産休・育休・介護休暇の取りやすさ」の順に得点が高かった(F(2,182) = 28.74, p < .001)。また,因子と離職希望経験の有無の交互作用に有意傾向が見られ(F(2,182) = 2.78, p < .10),離職希望経験がない人の方がある人よりも「研修・研究機会の保障」および「保育についての相談・支援機能」の得点が有意に高かった。
考察
 20代後半になり保育経験年数も6年を越えると,責任のある仕事を任せられることも多くなると考えられる。そうした負担の増加が,保育士の離職意思につながるのかもしれない。また,20代後半から30代は生活が変化する人も多く,そのことも離職意思を持つ要因となるのではないだろうか。
 また,保育士を辞めたいと思ったことがない人は,ある人よりも現在の職場には自らの保育の質を高める機会が多く,保育について相談できる人がいると感じていることが示された。保育の質を高める機会があることや,自分の保育について誰かに相談ができることが,保育士の向上心や安心感を高め,業務を前向きに捉えることにつながるのではないだろうか。

キーワード
保育士/離職/職場環境


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