発表

1A-085

幼児の交通行動と親の行動の関係1
-保護者に対する質問紙調査の結果より-

[責任発表者] 徳田 克己:1
[連名発表者・登壇者] 水野 智美:2, 西館 有沙:3
1:子ども支援研究所, 2:筑波大学, 3:富山大学

目 的
幼児にとって保護者や兄姉,祖父母は交通行動のモデルとなる.しかし,保護者が子どもに「~しなさい」あるいは「~してはいけない」と教えていながらも,自身ができていないことは多い(Mizuno, Edano & Tokuda, 2015).つまり, 子どもの不適切な交通行動は, 親などの子どもの周辺にいる年長者の行動をモデルにしているのである.さらに子どもに不適切な行動を指摘されると,親は言い訳をしたり,開き直ったりすることがある.例えば,赤信号で横断しようとした(してしまった)場面を子どもに指摘されたときに,約4割の保護者が「大人と一緒の時は大丈夫」「今は仕方がなかったから」などと言い訳をしたり,開き直りをしていることが確認されている(Mizuno et al., 2015).これによって,子どもは保護者の言い訳を含めて,行動をまねていくことになる.
 そこで,交通場面(横断歩道の信号遵守の状況,一般歩道の歩きスマホの状況,エスカレータの利用の状況)における観察調査,保護者に対する質問紙調査,幼児に対する個別ヒアリング調査を実施することにした。本稿では幼児を持つ保護者が子どもと一緒の時,また子どもがいない時にどのような交通行動をとっているのか,子どもに不適切な交通行動をまねされた経験がないかなどについて,質問紙調査の結果から確認する.
方 法
1.調査対象者
 東京都内,北海道内,茨城県内,千葉県内,沖縄県内の幼稚園,保育所,こども園に子どもを通わせている保護者1150名に質問紙を配布し794名(69%)から回答を得た.そのうち,回答に不備がある人を除き766名の回答を分析対象とした.
2.調査手続き
 上記の園の管理者に調査を依頼し,承諾を得た園・所の保護者に質問紙を配布し,留置法によって回収した.無記名,自記式の質問紙を用いた.調査時期は2018年7~8月であった.
結 果
 13の交通行動, すなわち「自動車の助手席に乗る時にシートベルトを着用する」「信号のない横断歩道を渡る時自分が左右の確認をする」「信号がある横断歩道を渡る時自分が左右の確認をする」「エスカレータを歩かないで立ち止まって利用する」「自動車の後部座席に乗る時にシートベルトを着用する」「急いでいるときはエスカレータをかけ上がったりかけ下りたりする」「横断歩道を渡る時に自分が手を挙げる」「渡り始める前に歩行者用信号が点滅していても,渡る」「横断歩道が近くにあるにもかかわらず,横断歩道ではない場所を横断する」「道を歩いていて歩きスマホをする」「車が来ていなければ,赤信号で横断歩道を渡る」「横断歩道を渡っている時に歩きスマホをする」「歩行者用信号が青に変わる前に渡り始める」について「非常によくする(5点)」から「全くしない(1点)」までの5段階リッカート尺度で尋ねた.
 「自動車の助手席に乗る時にシートベルトを着用する」ことを除いて,他の12項目において,子どもと一緒の場合と自分一人の場合の間に統計的に有意な差があることが確かめあっれた。つまり,保護者は一人で行動しているときには不適切な交通行動をとっていないわけではないことが確認された.子どもと一緒の場合であれば,「我が子を事故に合わせたくない」という思いや「子どもの前では適切な行動をしなくてはならない」という規範意識が働き,我が子の前だけでは適切な行動をとろうとするが,我が子がいなければ,その思いや規範意識が薄れるということである.
 ただし,子どもと一緒の場合と保護者が一人の場合の交通行動に差異が見られたとはいえ,おおむね保護者は適切な交通行動を行っていることが確認できた.注目すべき行動としては「急いでいるときはエスカレータをかけ上がったりかけ下りたりする」が子どもと一緒の場合には1.96であったが,保護者一人の場合には2.94であること,「渡り始める前に歩行者用信号が点滅していても,渡る」が子どもと一緒の場合には1.85であったが,保護者一人の場合には2.95であること,「横断歩道が近くにあるにもかかわらず,横断歩道ではない場所を横断する」が子どもと一緒の場合には1.79であったが,保護者一人の場合には2.68であることの3つの行動に関しては2つの場合における差異が大きかった。
 自分が赤信号を渡る姿を子どもに見られた経験の有無を尋ねたところ,35%(271名)があると答えた.子どもに見られた経験のある人を対象に,子どもがまねをして赤信号で渡ろうとした経験の有無を「非常によくある」から「全くない」までの4件法で尋ねた.その結果「非常によくある」「時々ある」と答えた人を併せると16%となり,割合としては多くはないが,子どもが不適切な保護者の行動を模倣しているケースがあることが確認できた. 
 さらに,子どもにエスカレータを歩く姿を見られた経験の有無を尋ねたところ,52%(399名)が「ある」と答えた.子どもに見られた経験のある人を対象に,子どもがまねをしてエスカレータを歩こうとした経験の有無を「非常によくある」から「全くない」までの4件法で尋ねた.その結果「非常によくある」「時々ある」と答えた人を併せると46%となり,約半数を占めた.赤信号で渡ってはいけないことは幼稚園や保育所等でも教えられているため,保護者が赤信号で渡っている姿を見ても,多くの子どもはいけないことであると認識できるが,エスカレータを歩いてはいけないことについては幼稚園や保育所で教えられる機会がないため,保護者が歩いていれば,子どもも当然,自分もしてよいことであると考えるであろう.

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