発表

3C-080

小学校における学校規模のポジティブ行動支援の効果

[責任発表者] 大対 香奈子:1
[連名発表者・登壇者] 田中 善大:2, 庭山 和貴:3
1:近畿大学, 2:大阪樟蔭女子大学, 3:大阪教育大学

【問題】
最近教育現場において注目されているポジティブ行動支援(Positive Behavior Support; PBS)は,個人の生活の質を向上し問題行動を最小化することを目的として,教育的方法により行動レパートリーを拡大し,生活環境を再構築するシステム改善を行う支援モデルである(Carr et al., 2002)。また,予防的観点から学校規模で全児童生徒を対象にPBSを適用する学校規模のポジティブ行動支援(School-Wide Positive Behavior Support/ Positive Behavioral Interventions and Supports; SW-PBS/PBIS)がアメリカでは急速に広がっている。本研究では,SW-PBSを日本の小学校に導入し,その効果を「学校適応アセスメントのための三水準モデル(大対・大竹・松見, 2007)」に基づいて検討することを目的とした。
【方法】
対象 本研究の対象となった公立A小学校では,X年(Year 1)よりSW-PBSの導入を開始し,2年間にわたり全校で取り組みを行っている。SW-PBSの実践は1~6年生の全学級,全児童を対象に実施しているが,本研究で効果検討の対象とするのは調査に回答可能な3~6年生8学級の児童生徒および学級担任8名とする。各学級の児童数は27名~41名であった。
手続き SW-PBSはX年からX+1年(Year 2)の2年間にわたり実施した。X年は導入の初年度のため,1学期にSW-PBSで取り組む学校目標とその目標に沿った具体的な期待される行動を全教員の協議により決定した。2学期は準備期間(Baseline; BL)とし,3学期に期待される行動が見られた児童生徒にはトークンである「スマイルチケット」を教師から渡す取り組みを行った(介入)。X+1年は4月~6月までをBLとし,7月以降に「給食を食べきる(1学期)」「掃除をやりきる(2学期)」「心を合わせて歌う(3学期)」に全校で取り組んだ(介入)。
指標 学校適応アセスメントのための三水準モデルに基づき,水準1の指標として学級状態の直接観察による評定,on-task行動の観察を行った。水準2としては,教師の賞賛と注意叱責の回数を観察した。水準3としては,アセス(栗原・井上, 2010)を用いて各学期末に児童に主観的な適応感を評価させた。
【結果および考察】
学級状態についてYear 1(4月)とYear 2(3月)の評定値を比較した結果,t検定ではどの項目も有意差は見られなかったが,効果量dの値が.50以上であった項目は「先生の言うことに従わない人がいる」「先生に反抗する人がいる」「注意されてもおしゃべりをやめない人がいる」「授業が始まってもざわざわしている」であり,いずれもYear 1よりYear 2の方が得点は下がっていた。on-task行動については,統計的には有意ではなかったが,Year 1ではBLより介入期でon-task率が上昇し,Year 2ではさらに高い90%近いon-task率が維持されていた(Figure 1)。賞賛と注意叱責の変化についてはいずれの年においてもBLでは叱責が上回り,介入期では賞賛が上回る傾向が見られた(Figure 2)。Year 1からYear 2にかけて賞賛は有意な傾向で,注意叱責は有意に回数の減少が見られた。アセスについては2学期同士で比較を行った(Figure 3)。t検定の結果,Year 1からYear 2にかけて有意差が見られたのは「非侵害的関係」であり,有意ではなかったが効果量dの値が.50以上であったのは「対人的適応」であった。いずれもYear 1よりYear 2において改善が見られた。以上の結果より,SW-PBSは日本の小学校においても適用可能であり,学校適応の促進に効果的であることが示唆された。また水準2の結果より,叱責という対応はSW-PBSにより抑制されることが分かったが,賞賛の増加は見られなったことから,賞賛を効果的に増やすことがSW-PBSの効果をより高めることにつながることが考えられる。

キーワード
小学校/ポジティブ行動支援/学校規模


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