発表

3B-082

生徒-教師間の関係性に焦点を当てたコンサルテーション事例の検討
外在化を用いたアプローチの有用性と課題

[責任発表者] 綾城 初穂:1
1:駒沢女子大学

問題と目的
 平成29年に公認心理師法が施行されるなど,近年心理職の社会的責任は増大している。特に教育現場では,中央教育審議会が「チームとしての学校」として提唱するように,心理職がその専門性をもって教職員と連携すること,すなわちコンサルテーションがこれまで以上に求められると言える。一般にコンサルテーションでは児童生徒個人のアセスメントが重視されるが,教育実践は児童生徒と教職員との関係を通して行われるため,関係性に着目したコンサルテーションの方法を検討することも重要である。そこで本発表では,生徒―教師間の関係性に焦点を当てたコンサルテーションの実践事例を報告し,その有用性を検討することを目的とする。なお,本発表は対象となったB教諭および当時の管理職より許可を得ている。
方法
 本実践は,中学2年の女子生徒Aへの対応に苦慮する学級担任Bへのコンサルテーションとして行われた。AはB教諭に強く反抗し,授業を拒否する,暴言を吐く,学級活動に参加しないといった問題行動を呈していた。そこでB教諭を中心にC教諭(Aの部活動顧問),D教諭(養護教諭)・E教諭(Aの一年次の担任)同席のもと関係者会議を行うこととなり,当該中学の管理職から依頼を受けた著者がコンサルテーションを実施することになった。
 本実践で参照したのは,ナラティヴセラピーと修復的実践の理念に基づいてWinslade & Williams (2012) が提案した関係者会議(修復会議)の手法であり,問題を個人から切り離す外在化と呼ばれる方法を活用したものである。本実践ではこれを簡略化し,次の手順で適用した。1. 傾聴:問題に悩む教員の語りを傾聴する。2. 問題の列記:ホワイトボードに円を描き,1で語られた内容を円の中に記す。3. 名前付け:問題を一言で表せるキーワード(関係に焦点を当て,性格など個人的特徴を表すものは避ける)を考えてもらい,円の中に記す。4. 影響のマッピング:問題が,教員・当該生徒・周囲にどういった影響をおぼしているかを尋ね,それらを円の周囲に記し,円から矢印を伸ばす(図左円参照)。5. 解決の意思確認:この問題を解決したいか尋ねる。6. オルタナティヴ・ストーリーの発見:新たな円を描き,当該生徒との間での例外的に良好な関係や,当該生徒の良好な側面について尋ね,それらを新しい円の周囲に書き,円に向かって矢印を伸ばす(図右円参照)。7. 名前付け:6で列記したものを一言で表せるキーワードを考えてもらい,それを新たな円の中に記す。その後,まとめて一つの名前を付ける。8. オルタナティヴ・ストーリー移行の意思確認:二つの円のどちらを好むかを尋ねる。9. 解決プランのブレインストーミング:思いつく解決手段を挙げる。10. 解決プランの選定:9で挙げたものから実行可能なものを選定し,具体的な方法と実行者を決定する。なお,本実践は全部で約2時間であった。
結果
 B教諭の語りを約1時間傾聴し(手順1),問題(Aの学習に対する無気力・B教諭への暴言・周囲への倦怠感の波及・学級活動への不参加等)を特定した。この問題をB教諭は「水と油」というキーワードでまとめた(手順2・3)。「水と油」が及ぼす影響としては,Aが勉強しなくなる,B教諭が苛立たされる・進路の話ができなくなる,クラスの私語が増える等が挙げられた(手順4)。解決の意思確認時はB教諭からやや投げやりな発言も見られたが(手順5),C・D・Eの各教諭からAの良好な側面が複数指摘された後は,B教諭もAとの良好な関係を挙げた(手順6)。こうしたAの側面は,エネルギーがある,気が利く,良いこだわりがある,情報リテラシーがある,といったキーワードで表現された(手順7)。会議に参加した教員全員で解決プランを検討し(手順9・10),登校時に声をかける,褒める際も叱る際も言葉を短くする,修学旅行や課外活動のプラン作りの役割を任せるといった方法が提案された。2か月後のフォローアップでは,Aが学習に取り組むようになり,B教諭と自然に会話したことが報告された。さらに2か月後のフォローアップでは,学期末に学級からB教諭に寄せ書きがあり,Aからも修学旅行について肯定的なコメントがあったことが報告された。
考察
 AとB教諭の関係は最終的に改善され,本実践はある程度奏功したと言える。本実践が効果的であった理由としては,a) B教諭の話を関係者と共に傾聴し,視覚的に書き出したため,B教諭を中心とした協働関係の構築と現状認識が促された,b) 複数の教員がいることで多様な見方が確保され,オルタナティヴ・ストーリーが生じやすかった,c) 外在化によって,個人(生徒や教員)を問題視しなかったため,Aの良好な側面や解決プランが考えやすかった,d) 現状に合ったローカルな解決策が出された,といったことが考えられる。一方で,解決プランの有効性が不明瞭である,参加者や時間・場所の確保が難しいといった課題もある。今後さらに実践を重ね,効果と課題を検討していく必要がある。

キーワード
コンサルテーション/外在化/ナラティヴセラピー


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