発表

3B-081

動機づけと学業成績に対する自律性支援の有効性認知

[責任発表者] 岡田 涼:1
1:香川大学

目 的
 教師の指導や支援のあり方を捉える概念として,自律性支援(autonomy support: Deci & Ryan, 1987)がある。Reeve(2016)によると,自律性支援は児童・生徒がもつ自律性の欲求を満たすような教室環境や教師との関係を提供しようとする教師の試みであるとしている。その対極には,教師が意図している通りに考えたり,行動したりするように児童・生徒に求める指導として統制がある。
 教師の自律性支援は,さまざまな学習成果につながることが示されている。岡田(2018)が行ったメタ分析では,児童・生徒が認知した教師の自律性支援は,内発的動機づけと.44(95%CI: .40~.48),学業成績と.16(95%CI: .11~.21)の相関をもつことが示された。
 動機づけや学習指導について実証研究の知見と一般的な認識とは必ずしも一致しない。Murayama et al.(2016)は,実証研究の知見とは異なり,一般の人々は外的報酬が内発的動機づけを高めると考えていることを明らかにしている。
 本研究では,自律性支援の効果に関する実証研究の知見と一般的な認識との相違を明らかにすることを目的とする。自律性支援と統制について,動機づけに対する有効性認知と成績に対する有効性認知との違いを検討する。仮説としては,成績に対してよりも動機づけに対して,自律性支援の有効性認知が高いことが予想される。なお,発達段階を考慮して,小学生に対する効果と中学生に対する効果を比較する。
方 法
要因計画 指標(動機づけ・成績)×学校段階(小学生・中学生)の2要因計画。いずれも実験参加者間要因。
協力者 教育学部学生119名(男性57名,女性62名)。
質問紙 指標と学校段階を組み合わせた4種類の冊子を作成した。冊子には,岡田(2017)の「自律性支援―統制の有効性認知尺度」(17項目)の教示と項目をもとに,条件ごとに文言を操作したものを載せた。算数・数学場面を想定し,各指導について,小学生もしくは中学生を想定して,動機づけ(やる気)もしくは成績(テスト成績)に対する有効性を評定してもらった(5件法)。
結 果
 自律性支援―統制の有効性認知尺度について確認的因子分析を行った。修正指数をもとに項目間の誤差間に1か所共分散を想定したところ,適合度はχ2 (42)=58.05(n.s.),CFI=.92,RMSEA=.06,SRMR=.07と一定の値が得られた。下位尺度ごとに合計得点を算出し,自律性支援の有効性認知(α=.71),統制の有効性認知(α=.66)とした。
 それぞれの有効性認知に対して,2要因の分散分析を行った。自律性支援の有効性認知については,指標の主効果が有意傾向であり(F(1,115)=2.84, p<.10, 偏η2=.02),成績条件(Mean=4.12, SD=0.55)よりも動機づけ条件(Mean=4.27, SD=0.45)の方が高かった。学校段階の主効果(F(1,115)=1.79, n.s., 偏η2=.02)と交互作用(F(1,115)=0.08, n.s., 偏η2=.00)は有意ではなかった。統制の有効性認知については,指標の主効果が有意であり(F(1,115)=4.12, p<.05, 偏η2=.03),動機づけ条件(Mean=3.46, SD=0.66)よりも成績条件(Mean=3.70, SD=0.60)の方が高かった。学校段階の主効果(F(1,115)=0.53, n.s., 偏η2=.00)と交互作用(F(1,115)=0.18, n.s., 偏η2=.00)は有意ではなかった。
考 察
 本研究の対象者は,概ね実証研究の知見と一致する認識をもっていることが示唆された。自律性支援については,学業成績に対してよりも動機づけに対して有効であると認知されていた。これは,岡田(2018)のメタ分析の結果と一致するものである。自律性支援的な指導は意欲を促すのに有効なものであると考えられており,一般的にも実証研究の知見と同じ認識がなされているといえる。
 一方で,統制については,動機づけに対してよりも学業成績に対して有効であると認知されていた。先行研究において,自律性支援と統制は両極で考えられる場合と別次元と考えられる場合があり,統制の単独の効果は明確にされていない。大学生においては,学業成績等がもたらすプレッシャーを考えた場合に,統制的に取り組むことに慣れているため,統制的な指導の有効性を高く認知したのかもしれない。今後,有効性認知を規定している要因について明らかにすることが必要である。また,岡田(2017)と同様に,現職教員を対象とした検討を行う必要がある。
引用文献
Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1987). The support of autonomy and the control of behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 53, 1024-1037.
Murayama, K., Kitagami, S., Tanaka, A., & Raw, J. (2016). People’s naiveté about how extrinsic rewards influence intrinsic motivation. Motivation Science, 2, 138-142.
岡田 涼 (2017). 教師の自律性支援―統制の有効性認知に関する研究―学校種,教職経験年数,教師効力感との関連から― 香川大学教育実践総合研究, 35, 27-37.
岡田 涼 (2018). 教師の自律性支援の効果に関するメタ分析 香川大学教育学部研究報告第I部, 150, 31-50.
Reeve, J. (2016). Autonomy-supportive teaching: What it is, how to do it. In W. C. Liu, J. C. K. Wang, & R. M. Ryan (Eds.), Building autonomous learners: Perspectives from research and practice using self-determination theory (pp.129-152). Singapore: Springer.

キーワード
自律性支援/動機づけ/大学生


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