発表

3B-080

高校生の対人スキル自己評価と対人場面の困り感について
ソーシャルスキルトレーニングの目標設定のためのアセスメント

[責任発表者] 松本 秀彦:1,2
[連名発表者・登壇者] 畑山 ふみ#:2
1:高知大学, 2:高知大学

1.目的
高知県公立高等学校における不登校・中途退学生徒数の割合は全国平均を上回っており,不適応の背景である人間関係構築能力(ソーシャルスキル)の弱さの改善が喫緊の課題となっている。ソーシャルスキルの発揮のあり方は学校生活満足度に一定の影響力があり,友人との関係力は学校適応感に強い影響力を持つとされる。高校生のソーシャルスキルの実態解明については,「高校生の同級生へのソーシャルスキル自己評定尺度」(関係開始,解読・関係維持,感情表出,記号化)と「高校生の教師へのソーシャルスキル自己評定尺度」(関係開始・主張,解読,関係維持,感情表出)が開発され,高校生のソーシャルスキルと学校適応との関係が明らかにされてきた(水津・児玉, 2015)。
本研究の目的は,高知県の教育課題の解決も見据え,サポートが必要な生徒が多く在籍する高等学校に特徴的なソーシャルスキルの課題があるのか,また特別な教育的ニーズのある生徒が多く在籍する現状を踏まえ対人行動の心理プロセスを細分化することで認知プロセスのいずれでつまずくのか明らかにすることとした。そこで同級生・教師へのソーシャルスキル自己評定と学校生活における対人場面での困り間について質問紙調査を行った。
2.方法
対象者:単位制高等学校A校114名(男74名,女40名),小規模高等学校B校84名(男48名,女36名),都市部高等学校C校317名(男103名,女214名)のいずれも第1,2学年の生徒を調査対象とした。有効回答率はA校86.0%,B校92.9%,C校98.7%であった。調査用紙を一斉配布し,「高校生が学校内でクラスメイトや教員にどのように自分のことを伝え,どのように関わろうとしているのかを知るためのもの」と伝え無記名で回答させ,担任が回収した。
調査内容:ア)「同級生」および「教師」に対するソーシャルスキルについて,「高校生の同級生に対するソーシャルスキル尺度」(水津・児玉,2015)と「教師に対するソーシャルスキル」(水津・児玉,2015)を参考に,同級生に対しては,「関係開始」「読解・関係維持」「感情表出」「記号化」の4下位尺度18項目,教師に対しては「関係開始・主張」「読解」「関係維持」「感情表出」の4下位尺度17項目で構成した。それぞれの項目について4件法(1:まったくあてはまらない2:あまりあてはまらない3:ややあてはまる4:とてもよくあてはまる)で尋ねた。イ)思い考えをうまく伝えられないと感じる場面については他者からの働きかけから自己表出までの過程を段階的に分割した質問項目を作成した。「質問の意味がわからないとき」「聞かれたことの答えが見つからないとき」「言葉・書字で答えなくてはいけないとき」などであった。ウ)学校生活の苦手なコミュニケーション場面について,自己表現・自己表出が必要な場面を想定し「あいさつ」程度から「質問」「相談」「考えを話す」といったことまで苦手さを感じるか質問した。エ)高校生活の間に身につけたいと思うコミュニケーションの力を,ソーシャルスキルの基本的な心理プロセスについて質問した。
3.結果と考察
ア)同級生に対するソーシャルスキルの4下位尺度(「関係開始」「解読・関係維持」「感情表出」「記号化」)×3校の2要因の分散分析の結果,交互作用は認められず下位尺度の主効果が認められた(F(3,1458)=93.98, p<.001)。「解読・関係維持」と「記号化」の得点が高く,続いて「感情表出」,最も低かったのが「関係開始」であった。3校ともに「関係開始」「感情表出」得点が低いことから自分から同級生に働きかけることは高校生全般が苦手だ感じていること,また「解読・関係維持」「記号化」得点が高かったことは同級生の感情読み取りやその場に合う行動を示すことが相対的に得意だと感じていることがわかった。
イ)教師に対するソーシャルスキルの4下位尺度(「関係開始・主張」「解読」「関係維持」「感情表出」)×3校の2要因の分散分析の結果,交互作用は認められず下位尺度の主効果が認められ(F(3,1458)=15,88, p<.001),「解読」「関係維持」「感情表出」が高く「関係開始・主張」が低かった。下位尺度すべて“できる“側の自己評定であったので,教師とのコミュニケーションは問題ないと思っていると考えられる。
ウ)自分の思いや考えをうまく伝えられないときについては,3校とも「質問の意味がわからないとき」「聞かれたことの答えが見つからないとき」と回答した者が50%を超えた。このことは教員が生徒に指示するあるいは質問する際に適切な質問方法によって行わなければならないことを示している。例えば,発達障害の特性を持ちうる生徒に対しては,ワーキングメモリーへの配慮,多感覚による発信を心がけるなどの意識が必要である。
エ)生徒や教師に対してコミュニケーションで苦手だと思うことで3校に共通して高いのは「授業中での発表」であった。また単位制高校A校に多い回答はANOVAの結果,「同級生に質問する」「困っている同級生への声かけ」「授業中生徒の前で発表」であり,学校生活での多くの場面において対人的側面で困っていることが特徴づけられた。
オ)高校生活の間に身につけたいと思うコミュニケーション力については,因子分析を行った結果「思考と伝達能力(自分の考え・他者の考え・伝える力)」と「挨拶」の2因子が抽出されたが因子得点の学校間差はなかった。3校に共通して高い身につけたい力は「思考と伝達能力」であり高校生は比較的高い目標を持っていることが明らかになった。
参考文献
水津孝紀・児玉真樹子(2015).ソーシャルスキルが友人および教師との関係,学業を媒介して学級適応感に及ぼす影響−高校生を対象として−.学習開発学研究, Vol.9, 37-44.

キーワード
ソーシャルスキル/自己評定尺度/高校生


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