発表

3B-077

通信制高校における心理教育の実践
SSTと認知再構成法を用いた授業の効果

[責任発表者] 小合 君朋:1
[連名発表者・登壇者] 藤原 直子:2, 岩佐 和典:3
1:就実大学, 2:吉備国際大学, 3:就実大学

  目 的
 現在,高校生の20人に1人は通信制高校に通っており,その数は18万人を超えている(文部科学省,2018)。通信制高校は,全日制課程からの進路変更等に伴う転入学・編入学者,中学校までの不登校経験者など学校生活への適応に困難を抱える者など,多様な入学動機や学習歴を持つ者が多くなっている(文部科学省,2017)。さらに,通信制高校に通う生徒は,同世代より精神的健康が低いことが示唆され(平部ら,2016),精神的健康を保つ予防的介入が必要である(平部ら,2017)。しかし,高校生に対するソーシャルスキルトレーニング(SST)の実施報告はあるが(原田・渡辺,2011;渡辺・原田,2007他),通信制高校での心理教育は盛んではない。
 そこで本研究では,通信制高校の生徒にSSTと認知再構成法を取り入れた心理教育を実施し,その効果を検討した。
 方 法
対象者 A高校に通う1年生と2年生が参加した。全参加者数は1年生19名,2年生19名であった。そのうち,3回全てに参加した1年生5名(男子3名,女子2名),2年生8名(男子5名,女子3名)を分析対象とした。
実施者 第1著者(B大学心理学科3年生)が心理教育を進め,必要に応じて他の大学生2名が補助を行った。
実施時期 2018年2月から3月に実施した。
授業内容 テーマを「よりよい高校生活を送るために,気持ちと上手に向き合うスキルを身につける」とし,3回心理教育を実施した。各回のテーマは,第1回:ABC「こころの法則」とストレス,第2回:気持ちの伝え方・上手な断り方,第3回:自尊心であった(表1)。
評価方法 1.自律的学習動機尺度(西村ら,2011):20項目,2.高校生用対人場面の認知のゆがみ尺度(岡安,2009):16項目,3.ソーシャルスキル自己評定尺度 短縮版(吉良ら,2018):20項目, 4.心理的ストレス反応測定尺度(鈴木ら,2007):18項目, 5.授業評価:計15項目および自由記述,6.教師の満足度:12項目および自由記述,いずれの質問紙も4件法で回答を求めた。質問紙は,第1回の始めと第3回の終わりに実施し,振り返りは毎回配布し回答を求めた。教師の満足度は,心理教育実施後に配布し回答を求めた。
倫理的配慮 吉備国際大学倫理審査委員会の承認を得て研究を進めた。実施にあたっては,A高校キャンパス長に授業内容および研究要旨について承諾を得たうえで,授業前に生徒の同意を得て実施した。
 
 結 果 と 考 察
 心理教育実施前と実施後の変化について検討するため

に,wilcoxonの順位和検定を行った(表2)。その結果,ソーシャルスキルの「解読」が有意に上昇し(Z=2.06,p <.05),「感情統制」は有意に減少していた(Z=3.08,p <.01)。
 教師に対して行った満足度調査は,5名から回答が得られた。生徒の評価および教師の満足度調査は,いずれも3点以上の高評価であった。生徒の自由記述には,「認知の違いにより,感情にも違いが出てくることが分かった」,「授業を受けてよかった」や,教師からは「生徒たちにもっと考えさせたい内容だった」といった感想が複数みられた。 
 以上の結果から,ソーシャルスキルの「解読」は上昇し,「感情統制」は減少しており,一部ではあるが介入の効果が示された。また,授業後の生徒や教師の満足度も高いことから,本研究の心理教育プログラムが対象者にとって受容可能なものであったと考えられる。今後は,対象の人数を増やすとともに,統制群を設けたり,フォローアップを実施したりして,授業の効果をさらに検討する必要がある。

キーワード
心理教育/通信制高校/認知再構成法


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