発表

3B-076

高校生におけるコンピテンシー尺度の因子構造

[責任発表者] 扇原 貴志:1
[連名発表者・登壇者] 押尾 恵吾:1, 岸 学:1
1:東京学芸大学

問 題
 本研究の目的は,中学生を対象に作成されたコンピテンシー(資質・能力)の程度を測定する尺度が高校生においても適用可能か検討するものである。
 コンピテンシーの枠組みとしては,OECD DeSeCoのキー・コンピテンシー(Rychen & Salganik, 2003),ATC21Sの21世紀型スキル(Griffin, et al., 2012)などがこれまで提唱されてきた。しかし,いずれも汎用性のある認知・社会的スキル(以下,汎用的スキルとする)と何らかの態度・価値の育成を主張 し て い る (Fadel et al., 2015)。
 こうした潮流の中で,関口(2017)は,児童・生徒の学習におけるコンピテンシー(資質・能力)の構成要素を明らかにすることを目的に,教科教育を専門とする大学教員に各教科等で育成可能なコンピテンシーについて自由記述による調査を行った。得られた回答についてカテゴリー分類した結果,コンピテンシーには「汎用的スキル」と「態度・価値」という2側面が見られるとした。さらに,汎用的スキルには「批判的思考力」「問題解決力」「協働する力」「伝える力」「先を見通す力」「感性・表現・創造の力」「メタ認知力」の7下位尺度が存在し,態度・価値には「愛する心」「他者に対する受容・共感・敬意」「協力しあう心」「好奇心・探求心」「困難を乗り越える力」「向上心」「正しくあろうとする心」「より良い社会への意識」の8下位尺度が存在するとした。そして,各概念について,その定義を記した。
 関口(2018)は,各汎用的スキル,態度・価値の各下位尺度に対応する尺度を作成した。汎用的スキルについては21項目を作成し,態度・価値については16項目を作成した。なお,「愛する心」は対象が多岐にわたり質問が難しいといった理由から測定対象から除外している。その上で,中学1,2年生を対象にコンピテンシーの程度を測定した。
 先行研究の対象は義務教育段階の中学生であったが,中等教育段階の高校生であっても学習におけるコンピテンシーの重要性は同じであろう。そこで本研究では,関口(2018)の尺度を用いて,高校生であってもコンピテンシーの概念構造が中学生と同様であるか検討する。

方 法
対象・時期 東京都と広島県の3校の高校生1533名を対象に実施した。そのうち,回答内容に不備が見られた者を除いた1409名(1年生577名,2年生572名,3年生260名;性別不問)を分析対象とした。調査は2018年11月―12月に各学級のホームルームの時間内に担任教諭が質問紙を配布し,生徒がその場で回答し,直ちに回収する手法で行われた。
尺度 関口(2018)のコンピテンシー尺度全37項目を6件法(1.「非常に当てはまらない」―6.「非常に当てはまる」)で用いた。

結 果
 コンピテンシー尺度について各項目の得点をその下位尺度の項目数で除して得点化した上で,関口(2017)が提唱した下位尺度をモデルとした確認的因子分析を行った。その結果,汎用的スキル,態度・価値ともに高い適合度が示された(汎用的スキル:χ2(210)=12807.65, p<.001, CFI=.94, TLI=.93, RMSEA=.06, SRMR=.04;態度・価値:χ2(120)=11864.63, p<.001, CFI=.97, TLI=.95, RMSEA=.06, SRMR=.03)。また,汎用的スキル,態度・価値ともに,各項目に対応する下位尺度に対しては,.50以上の負荷量を示した。
 次に,各下位尺度間の相関係数を算出し,同時に各下位尺度の信頼性係数(Cronbachのα係数),平均,標準偏差を算出した(Table 1)。

考 察
 確認的因子分析の結果,適合度や因子負荷量の高さから判断して,関口(2017)が示した7つの汎用的スキル,愛する心を除く7つの態度・価値の下位尺度と同様の因子構造が高校生においても確認されたといえる。また,各下位尺度の信頼性係数はα=.64以上であり,一定の内的整合性が示された。よって,関口(2018)が中学生を対象に作成したコンピテンシー尺度は,高校生に対しても適用可能であるといえる。
 各下位尺度間の相関を見ると,おおむね中程度から強い相関が見られた。このことから,コンピテンシーの下位尺度間には密接な関連があり,コンピテンシーの各要素が多様な側面と関連し合っていた。これは,コンピテンシーの1要素を伸ばすことが他の側面に伝播する可能性を示すものである。
 以上の通り本研究では,中学生を対象に作成されたコンピテンシー尺度が高校生にも適用可能であることが確認された。

注)本研究は,東京学芸大学「次世代型コンピテンシー育成のための教育方法開発とその国内外への発信」(文部科学省機能強化経費「機能強化促進分」対象事業)の研究成果の一部である。

キーワード
コンピテンシー(資質・能力)/高校生/確認的因子分析


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