発表

3B-075

教員希望者のストレス反応に対する精神的回復力と援助要請スキルの効果

[責任発表者] 吉田 馨:1
[連名発表者・登壇者] 川島 一晃:2
1:鈴鹿医療科学大学, 2:椙山女学園大学

目 的
 近年,中学校教員の労働負担が大きな問題となっている。文部科学省(2015)によると,教員の精神疾患による病気休職者数は年々増加傾向にあり,その割合は10年間で約3倍にも増加している。さらに,精神疾患による休職教員のうち,約6割は所属校に勤務後3年以内という比較的早い時期から休職していることも報告されている。こうした背景には,新規配属校での新たな人間関係や生徒対応の難しさなどが引き金となり,うつ状態やバーンアウトなどの精神的不調に陥った可能性が考えられる。たとえば貝川(2009)は,小中学校の教師の半数以上がバーンアウト状態であり,不健康状態にあることを見出した。また,教員のバーンアウトの原因については,主に児童生徒との人間関係の問題や職場の同僚との葛藤によるものであることが指摘されている(平岡, 2003)。
 そこで本研究では,教員のこうしたストレス反応を低減する要因のひとつとして,レジリエンスを仮定した。レジリエンスとは,「困難で脅威的な状況にもかかわらず,それにうまく適応する能力(小塩, 2002)」のことを指し,これまで数多くの研究において心理的健康との関連が指摘されている(石毛・無藤, 2005; 山下・甘佐・牧野, 2011)。ただし,レジリエンスとはストレス場面を自らが経験し対処することで獲得されていくものであることから,周囲に頼ってストレス対処に臨んでいる人たちにとっては,レジリエンス本来の柔軟性が身につきにくい可能性がある。こうした人たちは,周りが自分のストレスを低減してくれることを強く期待し,それを優先する傾向が強いので,たとえストレス場面に直面した場合でも,ストレス反応の低減に関してレジリエンスの能力をうまく活用できないと考えられる。したがって,援助要請スキルが高い教員たちの間では,レジリエンスが強く内在化されていたとしても,ストレス反応の低減は得られにくいと予想することができる。別の言い方をすると,レジリエンスによるストレス低減効果は,援助要請スキルが低い教員間でのみ確認されるであろう。
方 法
調査協力者
 教員を希望する私立大学の学生124人(男性67人,女性57人)に質問紙調査を実施した。平均年齢は20.63歳(SD=1.68)である。
質問紙の構成
 レジリエンスの測定では,精神的回復力尺度(小塩ら, 2002)のうち感情調整9項目を利用した(1-5の5件法)。援助要請スキルの測定では,本田ら(2010)の作成した17項目を利用した(1-4の4件法)。ストレス反応の測定では,鈴木ら(1997)が作成した尺度を使用した(0-3の4件法)。とくにこの尺度では,生徒に対する無気力(6項目)と不機嫌・怒り(6項目)の2種類に分けて測定を試みた。

結果と考察
無気力に対する効果
 無気力反応に対する感情調整と援助要請スキルの主効果,およびそれらの交互作用効果を検討するため,階層的重回帰分析を行った。感情調整×援助要請スキルの交互作用項を追加投入したところ,決定係数増分が有意傾向となった(ΔR2 = .18, p < .10)。単純傾斜検定を行った結果(Aiken & West, 1991),図1に示す通り,援助要請スキルが高い人は,感情調整の高低によらず無気力感は低下されなかった。一方,援助要請スキルが低い人たちについてみると,感情調整は有意に無気力を低下させていた。
不機嫌・怒りに対する効果
 従属変数を不機嫌・怒りに変更して先ほどと同じ階層的重回帰分析を行ったところ,感情調整×援助要請スキルの交互作用項がやはり決定係数を有意に増加させる傾向にあった(ΔR2 = .13, p < .10)。単純傾斜検定を行った結果,図1に類似した反応パターンが得られ,感情調整による不機嫌・怒りの低減効果は,援助要請スキルが低い人においてのみ確認された(図2)。以上の分析結果は,レジリエンスのストレス低減効果が援助要請スキルの高低によって制限を受けるとする本研究の仮説を裏づけるものであり,教員間の高い援助要請スキルはレジリエンスとしての感情調整機能に対して妨害的にはたらく可能性が示唆された。

キーワード
レジリエンス/援助要請スキル/ストレス反応


詳細検索