発表

3A-090

学生のキャリアレジリエンスと失敗に対する両親の対応の関係
失敗の原因帰属に着目して

[責任発表者] 児玉 真樹子:1
1:広島大学

問題と目的
 児玉(2015a)は,“キャリア形成を脅かすリスクに直面した時,それに対処してキャリア形成を促す働きをする心理的特性”として“キャリアレジリエンス”を提唱し,その構成要素の働きを検討した結果,特に“問題対応力”が社会に出てからの様々な危機の経験を回避する効果があることが明らかになった(児玉,2015b,2016,2017)。“問題対応力”は,困難な問題(変化も含む)にチャレンジし,対応できるという認知であるため,過去の失敗経験に関わる自身の認知や周囲の対応等がこの認知の形成に影響すると考えられる。レジリエンスの形成に関わる要因の一つに保護者の養育態度が報告されている(葛西・藤井,2013など)。これらを踏まえ本研究では,失敗経験に対する両親の対応が,キャリアレジリエンスの問題対応力の形成に及ぼす影響を検討する。その際,失敗経験の種類によってその影響が異なる可能性が考えられるため,失敗の原因帰属別に検討する。

方法
 学生(短期大学生,大学生,大学院生)を対象に,2019年2月にWeb調査を実施した。調査実施にあたり,調査への回答は任意であることを伝えた。調査内容は,学生用キャリアレジリエンス尺度(児玉,2017),大きな失敗経験の有無,失敗経験有と回答した者にはその失敗の原因帰属(能力不足,努力不足,課題困難,不運)とその際の両親の対応(葛西・藤井,2013)であった。キャリアレジリエンスと失敗への両親の対応はいずれも4段階評定で回答を求めた。失敗経験者のうち自身がそのような経験をしたことを父親が認識していた者246名(能力不足79名,努力不足116名,課題困難7名,不運23名,その他21名),母親が認識していた者262名(能力不足84名,努力不足122名,課題困難7名,不運26名,その他23名)のデータを得られた。

結果と考察
 各変数のα係数を算出したところ,キャリアレジリエンスの問題対応力,失敗への対応のうち受容・支持的対応,責める対応については.70以上であった。しかし失敗への対応のうち気遣いの対応,普段と変わらない対応については.70未満であったため,それぞれに含まれる1項目ずつ(気遣いの対応は「私を気遣った」,普段と変わらない対応は「普段と変わらない態度をとった」)を分析に用いた。
 失敗の原因帰属別(課題困難は人数が少なかったため分析から除外)に父親,母親それぞれの失敗への対応の得点の平均と標準偏差を算出したところ,Table 1のとおりとなった。
 失敗の原因帰属別,対応者(父親・母親)別に,失敗への対応を説明変数,問題対応力を目的変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行ったところ,失敗の原因を能力不足と捉えている場合は,父親,母親の対応による影響はみられなかったが,それ以外はTable 2のとおりとなった。失敗の原因を努力不足,不運と捉えている場合,父親,母親共に責める対応が負の影響を示した。葛西・藤井(2013)では落ち込んだときの両親の対応とレジリエンスの関係を検討しているが,彼らの研究においても母親の責める対応がレジリエンスに負の影響を与えており,本研究と同様の結果が報告されている。これらのことより,周囲からの責めるような対応は,本人を委縮させ,その後,困難な状況へ立ち向かう意欲を削ぐことがうかがわれる。しかし,失敗の原因を自身の能力とみるかそれ以外(努力,運)とみるかによって,上述のような両親の責める対応による悪影響の有無に違いが見られた。また,失敗原因を不運と捉えている場合は,父親の普段と変わらない対応が正の影響を示した。このことより,失敗経験がどのような出来事で本人がどのように認識しているかによって,周囲の対応によるキャリアレジリエンス形成への影響が異なる可能性が示唆された。
 なお,両親の養育態度のレジリエンス形成への影響は子どもの性別によって異なることが報告されていることから(葛西・藤井,2013),今後の課題として,学生の性別による差異も検討が必要であろう。

キーワード
キャリアレジリエンス/失敗/両親の対応


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