発表

3A-089

複数の考えの共通点発見後の追加質問が課題解決に及ぼす影響

[責任発表者] 鈴木 豪:1
[連名発表者・登壇者] 藤村 宣之:2
1:群馬大学, 2:東京大学

問題と目的
多様な考えが授業内で比較・検討されることは,学習を促進する可能性がある。一方で,単に複数の考えが扱われるだけでは,不十分であることも指摘される(e.g., 藤村, 2012)。多様な考えを扱う際に,どのような発問を行うかや,学習者にどのような活動を促すかが重要であろう(e.g., Rittle-Johnson & Star, 2009; 鈴木, 2015; 小田切, 2012)。
鈴木(2015)は,複数の考えを比較する際に,共通点・相違点を考える方が,どれが最も良いかを考える場合よりも,事後の課題でより柔軟な解決ができることを示した。一方で,共通点を発見しただけでは,複数の考えを並列に扱えるようになるだけで,理解の深まりという点では十分に検討できていない可能性もある。
本研究では,複数のデータについて,共通点を考えたあとに,その共通点に関する追加質問をすることが,課題解決を促進するか否かを検証する。
方法
研究参加者と実施時期 関東の公立高校1校の1~3年生に研究に関する説明会を実施し,42名から参加の同意が得られ,40名が研究に参加した。学年の内訳は,3年生が7名,2年生が17名,1年生が16名であった。実験群・統制群に,およそ半数ずつを無作為に割り当てた。実施時期は,2019年1月~2月であった。
調査の手順 形式は参加者と面接者(第一著者)との一対一による個別面接調査であった。調査手順は次の通りである。なお,特に明記しない部分については,実験群・統制群に共通の手順である。
鈴木(2013)の学習観尺度のうち,意味理解志向学習観と暗記再生志向学習観の項目を各5項目,「数学の学習が得意であるか」という1項目の合計11項目について,「よく当てはまる」から「ぜんぜん当てはまらない」の5段階で評定してもらった。
その後,板チョコレートの分割に関する問題を出題した。この問題は,縦2列,横3列に6つの長方形からなる板チョコレートについて,6つの破片にするには,一直線に割る操作を何回行う必要があるか,という問題である。課題が印刷された用紙と,具体物として板チョコレートの模型を手渡した。また,参加者に記録用紙を渡し,任意の手順で最後まで分割を行い,最大の破片,最小の破片,破片の数について,変化を1通り記述してもらった。さらに,実験者が事前に3通りの手順を記入した用紙を提示し,参加者の記述も含めて,共通点をいくつでも探すように指示した。参加者が「これ以上の共通点は見つからない」という旨の発言をした段階で,「すべてにおいて,破片の数の変化が同一である」という共通点について,参加者が言及しなかった場合のみ,実験者から教示を行った。その後,実験群に対してのみ「なぜ,破片の数の変化は同じになるのか」「その変化はどのようなものか」という追加質問をした。
そして,「最低では何回割る必要があるか」「なぜそのような回数になるのか」という回答とその理由を尋ねた。さらに,3×3ピースからなるチョコレートの場合は,どうなるかを尋ねた。この際は,問題用紙と具体物のみを示して回答を求めた。
結果と考察
本研究で用いた問題について,一般的な正答は「破片の数は,ルール通りの操作では1回割ることで1つしか増えないため,割らなければならない回数は,常にピースの数より1回少ない数になる」というものである。正答した参加者は,各条件で2名ずつであり,条件による差異は見られなかった。なお,回答分類の集計は,3×3ピースの場合の問題への回答まで含めて行った。
正答に至るためには,「ルール通りの操作では,破片の数は1回割ることで1つしか増えない」という点に着目する必要がある。破片の数の増加法則との対応付けは不明瞭であるものの,「ルール違反をしない限り,必ず5回の操作が必要であるから」というような,操作ルール違反の有無に言及した回答をしたか否かについて集計した(Table 1)。正答を含めルール違反に言及した場合を1,その他を0として,目的変数とした。条件(実験群=1, 統制群=0),2つの学習観下位尺度の得点,数学を得意と思う度合い,学年を表すダミー変数を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った。その結果,条件の係数のみが5%水準で有意であった(調整オッズ比(95%CI)=23.34(2.25, 242.48))。
破片の数の増加についての共通点発見後に,「なぜ増加数が1ずつ増えるのか」という追加質問をしたことにより,完全な正答とするには不十分ではあるが,説明中に「ルール違反をしなければ割る回数を減らすことはできない」というより問題の本質に近い回答をすることができる可能性が高まったと推察される。
謝辞
本研究はJSPS科研費JP17H02632の助成を受けたものです。

キーワード
共通点/比較検討/高校生


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