発表

3A-087

学級の規範の伝え方が児童の心理的リアクタンス、規範の取り入れ意図に及ぼす影響

[責任発表者] 大谷 和大:1
[連名発表者・登壇者] 山村 麻予#:2
1:北海道大学, 2:京都市立芸術大学

問題
 児童に学級規範を内在化させていくことは学級経営において重要である。一方,規範の提示は,心理的な反発(リアクタンス)が生じやすい。心理的リアクタンスとは自身の自由を脅かす脅威に対する反発と定義される(Brehm & Brehm, 1981)。こうした心理的リアクタンスが発生すると規範を守ろうという意図が阻害されやすい(大谷・山村, 2017)。本研究では,どのような規範の伝え方が心理的リアクタンスを高めるのか,規範の伝え方に着目し検討する。規範の伝え方として,メッセージの統制感の強さ(提案・勧誘vs強制・指示),メッセージの価(接近vs 回避)を操作した。また,こうした伝え方が心理的リアクタンスを介し,規範遵守の意図にどのような影響を与えるのかも検討した。

方法
実験参加者と手続き
 174名の小学生(4~6年生)を対象とした 。子どもが内容を理解しやすいように架空の教師が規範についてのメッセージを述べる場面を作成した(図1)。規範場面について,メッセージの統制感(提案・勧誘vs 指示・強制 )×価(接近vs 回避)について,4つの場面を作成した。
(1)提案・勧誘+接近(e.g., 宿題をもってきましょう)
(2)提案・勧誘+回避場面(e.g., 宿題をわすれないでください)
(3)指示・強制+接近(e.g., 宿題をもってきなさい)
(4) 指示・強制+回避(e.g., 宿題をわすれないようにしなさい)
それぞれの場面を提示した後に以下の尺度への回答をもとめた(全て5件法)。
心理的リアクタンス(e.g., イライラする,クラスがつまらなさそう)7項目
規範の共有意図(e.g., 先生のいうことを聞こうと思う)3項目
 なお,参加者の負担を考慮し,このうち,統制感は参加者間要因とし,価は参加者内要因とした混合計画で実施した。実験参加者は,どちらかの統制感メッセージが提示される群にランダムに割り当てられ,接近と回避両方の場面への回答が求められた。接近と回避の提示順序はカウンターバランスを取った。実施については,事前に教師に進め方を書いた紙を渡し,実験は教室内で一斉に行われた。

結果
 心理的リアクタンスについて,2要因2水準混合計画の分散分析を行ったところ,メッセージの統制感の主効果がみられた(F(1,166) = 5.07, p = .03)。すなわち,指示・強制は勧誘・提案のメッセージに比べてリアクタンスが高かった。また,交互作用がみられたため(F(1,166) = 19.86, p < .001),単純主効果の検定を行った。その結果,提案・勧誘のメッセージにおいては,回避表現が接近に比べリアクタンスが高いことが分かった。また,強制表現については,接近表現が回避表現に比べ,リアクタンスが高いという逆のパタンがみられた。 なお,規範の共有意図についても,同様のパタンの主効果および交互作用がみられた。
参加者内計画媒介分析 規範の伝え方から規範の共有意図への間接効果を検討した。媒介変数は心理的リアクタンスであった。勧誘・提案群において,接近メッセージは心理的リアクタンスを低めることで,共有意図を高めていた(γ = -0.34, 95%CI [-0.55, -0.18], p <.001)。指示・強制群において,回避表現は心理的リアクタンスを低めることで,共有意図を高めていた(γ =.150, 95%CI [0.001, 0.35])。

考察
 同じ規範でも伝え方によってリアクタンスや規範の共有意図に及ぼす影響は異なることがわかった。基本的には統制感の低い伝え方,接近的な伝え方が望ましい。一方で統制感が強い表現では,回避型の伝え方がリアクタンスを低めるため望ましい。これらの結果から,価の違いはメッセージの統制感にアクセントを加える可能性があるといえる。すなわち,接近表現は当該メッセージを明確にし,回避表現はメッセージの強さをぼかす働きがあることが示唆される。

キーワード
学級の規範/小学生/心理的リアクタンス


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