発表

3A-086

大学生の友人数とテスト対処方略が学業成績に及ぼす影響

[責任発表者] 清水 陽香:1
[連名発表者・登壇者] 福井 謙一郎#:2, 中島 健一郎:3
1:日本学術振興会, 2:長崎女子短期大学, 3:広島大学

目 的 試験の前にどのような準備を行うかは,個人によって異なる。勉強をするといった積極的な対処をとる個人もいれば,試験について考える事を避けるような回避的な対処をとる個人も存在する。一般に,学習時間と学業成績に正の関連があるという指摘(松沼,2008)を鑑みれば,積極的な対処が高い成績に,回避的な対処は低い成績につながると考えられる。
 また,友人関係も学習に対する動機づけや学習行動,学業成績に影響することが明らかになっている(e.g., 石田,2005; 松岡,2003)。狩野・田崎(1990)は,良好な友人関係が効率的な学習を促すと述べている。このことから,友人関係,すなわち学生の対人ネットワークは,学業成績を高める上での資源となりうると考えられる。
 そして,学生の持つ資源によって試験への対処方略が学業成績に及ぼす影響が異なる可能性がある。例えば,個人が回避的な対処を行っていても,資源が豊富,すなわち広い対人ネットワークを持っている場合には,試験に関する情報や,積極的対処をとっている他の個人に触れる機会が増え,回避的対処が継続しにくくなる可能性が考えられる。
 以上をふまえ,本研究では,対人ネットワークの指標として友人数に着目し,友人数とテスト対処方略が学業成績に及ぼす影響を検討することを目的に,質問紙調査を実施する。
方 法 参加者 私立女子短期大学の1年生101名が調査に参加した。平均年齢は18.98歳(SD = 1.89)であった。
 手続き 調査は1月の後期試験の約1週間前に実施した。一斉教示・個別回答による集団調査であった。
 測定指標 まず,「これから実施される各科目の期末試験に向けて,今現在どのように考えたり行動したりしていますか。以下に示す考えや行動を,あなた自身が実際にどのくらいしているのかについて,最もよくあてはまる数字に○をつけてください」と教示した上で,テスト対処方略尺度(外山,2005)を用いてテスト対処方略を測定した。20項目について,5件法で回答を求めた。次に,「大学内でよく話をする人」のイニシャルを記入するよう求め,これを友人数の指標とした。なお,イニシャルを記入する人数の上限は設定しなかった。さらに,後期の期末試験における各科目の得点の平均値を学業成績の指標として用いた。また,学力の差を統制するため,前期の期末試験における各科目の得点の平均値のデータも用いた。
結 果 テスト対処方略尺度について確認的因子分析を行ったところ,適合度が基準を満たさなかった(CFI = .49,RMSEA = .07)。そのため,改めて探索的因子分析を実施した。積極的対処(e.g., “テスト対策を立てる”,“勉強をして学力をつける”,α = .82),回避的対処(e.g., “どうにでもなれと思う”,“なるようになれと思う”,α = .81),気晴らし(e.g., “誰かに話を聞いてもらい,気持ちを晴らす”,“誰かに話を聞いてもらい,どうしたらよいか考える”,α = .76)の3因子が抽出され,この因子構造に基づいて対処方略尺度得点を算出した。
 友人数とテスト対処方略が学業成績に及ぼす影響を検討するため,3つの対処方略ごとに,後期の学業成績を目的変数とする階層的重回帰分析を実施した。Step 0に統制変数として前期の学業成績,Step 1に対処方略および友人数,Step 2にそれらの交互作用項を投入した。その結果,回避的対処を用いた分析について,Step 2のR2の増分が有意であり(ΔR2 = .01,p = .03),回避的対処と友人数の交互作用項が,学業成績の変化量と有意な正の関連を示した(β = .11,p = .03)。単純傾斜の検定の結果,友人数低群(-1SD)において,回避的対処が学業成績と負の関連を示した(β = -.15,p = .004)。友人が少ない個人において,回避的対処を行うほど学業成績が低かった。友人数高群(+1SD)における回避的対処と学業成績の関連は有意ではなかった。また,回避的対処低群(-1SD),回避的対処高群(+1SD)のいずれにおいても,友人数と学業成績の有意な関連は認められなかった。その他2つの対処方略を用いた分析では,対処方略あるいは友人数と学業成績の間に有意な関連は認められなかった。
考 察 本研究の目的は,大学生の友人数とテスト対処方略が学業成績に及ぼす影響を検討することであった。
 階層的重回帰分析の結果,友人数によって回避的な対処方略と学業成績の関連が異なることが明らかになった。具体的には,友人が少ない学生において,回避的対処が学業成績と負の関連を持っていた。友人の多い学生は,友人との間で試験に関するコミュニケーションが生じる機会が多いと考えられる。個人が試験について考えないようにするなどの回避的対処を取っていても,受動的に試験に関する情報に触れやすいことが推測される。そのため,回避的対処の有無が学業成績に影響しにくい可能性がある。一方で,友人の少ない学生は,個人が回避的対処を取った場合にはそのまま試験に関する情報に触れる機会が減り,成績の低下につながったのではないかと考えられる。
 以上をふまえると,特に友人の少ない学生が回避的対処方略を取っている場合には,方略を切り替えられるような働きかけが学業成績を高めるために有効である可能性が示唆される。
 ただし,本研究では試験に関するコミュニケーションは測定していないため,友人数の多い学生において実際にそうしたコミュニケーションが生じる機会が多いのか,またそれが学生のテスト対処方略や学業成績にどのように影響するのかについては,今後の検証が必要である。

キーワード
対人関係/テスト対処方略/学業成績


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