発表

3A-085

中学生のネットメディア使用に対する自制心を育てる心理教育
-時間的展望の視点から-

[責任発表者] 日潟 淳子:1
1:姫路大学

目 的
 スマートフォンやタブレット端末の普及により,オンラインのゲームや動画視聴,ソーシャルネットワークサービス(Social Networking Service:SNS)による友達との交流などを児童・生徒も行うようになった(内閣府,2018;総務省通信政策研究所,2018)。その結果,ネットメディアの使用をコントロールできず,社会生活や人間関係に支障をきたすネット依存に陥っている児童生徒の約1割に生じていることが報告されている(伊藤,2017)。
 このような現状を鑑みると,子どもたちに自己コントロール力を高めるようなネットメディア依存への防止のための心理教育を行うことが必要である。本研究は自分の人生の過去や未来を見通し,現在の行動を調整したり,現在の行動から過去や未来を予測したりする時間的展望への働きかけを行う心理教育を実施し,その効果を検討した。

方 法
1) 調査対象者:
兵庫県下の公立中学校1校1年生
心理教育実施群(実施群):26名(男子10名 女子16名 平均12.92歳 SD=.39)
統制群(心理教育実施せず):57名(男子29名 女子28名 平均12.86歳 SD=.35)
2) 調査時期:2018年2月-2018年3月
3) 調査手続き:
(1) 第1回質問紙調査(心理教育実施1週間前に実施群と統制群に実施)
 調査内容:ネットメディア使用状況 ネット依存尺度 時間的展望に関する尺度など
(2) 心理教育の実施:「自分の夢・目標をかなえるためのネットとの向き合い方」と題した50分の授業とワークシートの作成
 内容:ネットメディア依存の状態を説明し,ネットメディア依存に陥った場合に生じる脳の変化,社会生活での問題などを伝えた。その後,人間には過去,現在,未来を見据えて現在を過ごす力がある,それによって夢や目標に近づくことができることを示し,夢や目標をかなえるために今何をすべきかを考えるワークシートを作成させ,1カ月間,毎日1つのことを行っていくように伝えた。
(3) 第2回質問紙調査(心理教育実施訳1カ月後に実施群と統制群に実施)
 調査内容:ネットメディア使用状況 ネット依存尺度 時間的展望に関する尺度 心理教育後の取り組み状況,心理教育の感想等

結 果
1) ネットメディアの使用状況
(1) ネットメディアの1日の平均使用時間
 1日の平均使用時間は156分であり,内閣府(2018)の中学生の平均使用時間148.7分よりもやや長かった。
(2) ネットメディア依存傾向
 総務省(2013)の全国調査と比較するとネット依存傾向低群は49.4%(全国56.8%),ネット依存傾向中群は46.0%(全国35.7%),ネット依存傾向高群は4.6%(7.6%)であり,依存傾向がやや高かった。
2) 心理教育の効果
(1) 実施群と統制群の比較
 ネットメディア依存傾向尺度,時間的展望尺度に有意差はみられなかった。
(2) 実施群のネットメディア依存傾向の低群(n=17)と中群(n=9)の比較
 ネットメディア依存傾向尺度に有意差はみられなかったが,時間的展望尺度については「空虚感」に有意な交互作用がみられ(F(1,24)=6.68 P<.05),ネットメディア依存傾向中群は低減した。また,「現在と未来の連続性」は中群と低群の間に有意な交互作用が見られ(F(1,24)=4.83,P<.05),心理教育によってネットメディア依存傾向の中群は高まることが示された。

考 察
 心理教育によるネットメディア依存の改善への直接的な効果はみられなかったが,時間的展望には変化がみられた。ネットメディア依存傾向にあるものは「空虚感」を感じていることは多くの研究で示されており,心理教育によって「空虚感」が低減されたことから,時間的展望への働きかけを行うことで,ネットメディア依存傾向の改善を促す可能性が示された。また,現在は未来につながっているという意識が高まったことからネットメディア依存に対する自制心を育む可能性が示唆されたと考える。今後は時間的展望をより具体化し,ネット依存改善への意識を高めていく必要がある。

付記:本研究は福原心理教育研究振興基金からの助成金によって遂行された。

引用文献
内閣府(2018).平成29年度青少年のインターネット利用環
 境実態調査 調査結果(速報)
総務省情報通信政策研究所(2013).青少年のインターネッ
 ト利用と依存傾向に関する調査
総務省情報通信政策研究所(2018).平成29年情報通信メ
 ディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
伊藤賢一(2017).小中学生のネット依存に関するリスク要
 因の探究-群馬県前橋市調査より- 群馬大学社会情報学
 部研究論集,24,1-14.

キーワード
時間的展望/ネット依存/心理教育


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