発表

3A-084

誇大型自己愛と自尊心の相違点,および過敏型自己愛と対人不安の類似点
自己の否定的な特徴に対する受容的認知のあり方との関連性からの検討

[責任発表者] 新垣 有貴:1
[連名発表者・登壇者] 伊藤 拓:2
1:お茶の水女子大学, 2:明治学院大学

【問題と目的】誇大型自己愛と自尊感情は混同されることがある概念だが,両者の相違点には自己受容の有無があると指摘されている(上田, 1996)。川崎・小玉(2010)は,誇大型自己愛と自尊感情の相違点を自己受容の関連から明らかにするため,自己の肯定的な特徴(「人づきあいの多い」など)に対する自己受容の高低を測定する指標と,誇大型自己愛・自尊感情との関連を,自分が肯定的な特徴を有しているかどうかの認知を統制した上で,検討した。その結果,自尊感情尺度と自己受容指標との間に正の偏相関が見られた。一方,誇大型自己愛と自己受容指標との間に有意な偏相関は見られなかった。以上の結果から,自己が望ましい特徴を有すると認知するか否かに関わらず,自尊感情が高いと,自己に対する受容的傾向が高いことが示唆された。誇大型自己愛の場合には,自己が望ましい特徴を有すると認知するかどうかによって,自己を受容するかどうかが異なる可能性が示された。
 さらに,自己愛は対人不安との関連が指摘されるため,川崎・小玉(2010)では,自己愛と対人不安の共通点についても,自己受容の観点から検討が行われた。その結果,自分が肯定的な特徴を有しているかどうかの認知を統制したところ,対人不安と自己受容指標の間に負の偏相関が見られた。そこで,ありのままの自己全体への受容的な認知を有していない点が,誇大型自己愛と対人不安の共通点だと考察された。
 しかし,川崎・小玉(2010)では,過敏型自己愛については検討されていない。対人不安との類似性がたびたび指摘されるのは過敏型自己愛であるため,本研究では過敏型自己愛と対人不安の類似点を自己受容の観点からを検討する。また川崎・小玉(2010)では,自己受容の指標として「人づきあいの多い」などの肯定的な特徴が用いられている。しかし肯定的な特徴に対する自己受容と,否定的な特徴に対する自己受容では異なった結果が出る可能性がある。以上から本研究では,川崎・小玉(2010)による自己受容の指標を否定的な表現に変更して検討を行う。本研究の目的は(1)誇大型自己愛と自尊感情の相違点を,否定的な特徴に対する自己受容の観点から検討すること,(2)過敏型自己愛と対人不安の類似点を,否定的な特徴に対する自己受容の観点から検討することである。
【方法】大学生・大学院生189名(男性63,女性126,平均年齢20.84歳)に質問紙調査を行った。(1)誇大型自己愛(小塩, 1998),(2)過敏型自己愛(上地・宮下, 2009),(3)自尊感情(山本他, 1982),(4)対人不安(堀井・小川, 1997),(5)自己の否定的な特徴への受容を測定する指標(川崎・小玉, 2010)を用いた。(5)は「否定的自己評価」,「否定的評価への自己受容」,「否定的評価への他者からの受容度の推測」に分けられる。「否定的自己評価」では否定的な特徴 (例:「人づきあいが狭い」)を挙げ,それらが参加者自身にどの程度あてはまるか評定させた。「否定的評価への自己受容」では「否定的自己評価」での自己評定に対して「そうした特徴を持つ自身をどの程度受容できるか」回答させた。「他者からの受容度の推測」では「否定的自己評価」での自己評定に対して「友人はそうした特徴を持つ自分をどの程度受容すると思うか」回答させた。
【結果と考察】川崎・小玉(2010)に倣って「否定的自己評価」を統制し,「否定的評価への自己受容」,「否定的評価への他者からの受容度の推測」と各尺度間の偏相関係数を算出した。その結果(Table 1),自尊感情と「否定的評価への自己受容」「他者からの受容度の推測」の間に正の偏相関が見られた。対照的に,誇大型自己愛傾向と両指標との間には関連がなかった。以上から,自尊感情が高いと,自己の否定的な特徴に対する自己受容が高まりやすい傾向にあるが,誇大型自己愛が高くても,自分の否定的な特徴に対する自己受容は高まらないという違いが,両者にあることが示唆された。
 対人不安と「否定的評価への自己受容」の間には有意傾向で負の偏相関が見られ,過敏型自己愛と同指標の間には有意な負の偏相関が見られた。そこで,過敏型自己愛と対人不安の両者には,それぞれの傾向が高いと,自分の否定的な特徴に対する自己受容は低くなるという類似点が見られることが示唆された。

キーワード
自己愛/自尊心/対人不安


詳細検索