発表

3A-083

中学生はどの程度学校に行きたくなければ実際に欠席するのか
項目反応理論による欠席志向性尺度の作成および妥当性の検討

[責任発表者] 侯 玥江:1,2
[連名発表者・登壇者] 原田 勇希:2,3
1:北海道大学, 2:日本学術振興会特別研究員, 3:高知大学

問題 本研究は項目反応理論に基づいて,忌避感情と苦痛感情から構成される欠席志向性尺度を作成し,欠席日数,ストレス反応との関連の検討を目的とした。本研究では欠席志向性を,学校に行きたくない願望の程度と定義する。
 森田(1991)によると「学校に行くのが嫌になった」ことがある生徒は70.6%と多い。しかし実際の欠席は少数の生徒にのみ観察されることから,その予測性を高めるためには,より精度の高い尺度項目が必要である。
 従来測定されてきた“学校に行きたくない”という水準の欠席志向性(以下,忌避感情)は多くの生徒に見られる。しかし“学校に行くことが辛い”という水準の欠席志向性(以下,苦痛感情)は,深刻な臨床像と近いため,欠席の予測性が高いと考えられる。軽度から深刻な項目表現を含む尺度は欠席志向性の個人差を適切に捉え,欠席生徒の理解とその予測に寄与すると考えられる。
方法調査対象 公立中学校1校に通う非不登校生徒1—3年生(n = 347)を対象とした。
欠席志向性項目の作成 忌避感情と苦痛感情を含む6項目(5件法)を作成した(Table1)。
欠席日数 生徒の了承と学校長の許可を得た上で取得した(日数全32日中)。
ストレス反応 「抑うつ・不安感情」と「無力的認知・思考」因子を用いた(岡安・嶋田・坂野,1992)。
結果と考察1.項目反応理論による欠席志向性尺度の分析 固有値の減衰状況より1因子構造が確認された。よって,忌避感情と苦痛感情は同一次元に位置する変数であるといえる(α=.88)。
 項目反応理論(段階反応モデル)に基づき,項目の識別力パラメータ(a)と困難度パラメータ(b)を算出した(Table1)。識別力の値は許容可能であった(Baker, 2001)。困難度は忌避感情を表現する項目1,2,3が相対的に低く,苦痛感情を表現する項目4,5,6が相対的に高かった。この結果は,忌避感情と苦痛感情は同一次元上における深刻度の程度として捉えられることを意味している。項目4,5,6はより深刻な欠席志向性を持つ生徒のみが反応するため,支援を要する子どもの発見に寄与できると考えられる。
2.中学生の欠席志向性のクラスター分析 欠席志向性尺度の6項目をもとに,Ward法による階層的クラスター分析を行った結果,3クラスターが妥当と判断された。それぞれクラスターの特徴をTable 2に示した。各クラスターの欠席志向性の特徴に基づき,それぞれ軽度群,非欠席志向群,深刻群と命名した。
3.欠席志向性群分けと欠席およびストレス反応との関連 各群における欠席日数の差を検討するため,ブルンナー・ムンツェル検定を行った(Holm法, α = 0.05)。その結果,非欠席志向群と軽度群の間に差はなかったが(効果量r = .01),深刻群は他2群よりも欠席日数が多かった(r = .23, .23)。次に各群におけるストレス反応の差を検討するため分散分析を行った結果,いずれの下位尺度とも深刻群が軽度群と非欠席志向群より高く,軽度群が非欠席志向群より高かった(d = 0.53―1.50)。
 以上を踏まえると,深刻群は学校への忌避感情と苦痛感情や慢性的なストレス反応が高く,学校を欠席しやすいといえる。軽度群は苦痛感情を持つに至らず欠席しないが,慢性的なストレス反応は見られるといえる。本欠席志向性尺度はその回答パターンにより欠席行動を予測でき,また支援を要する生徒の発見に寄与できる点で,実践上の意義があるといえる。

キーワード
欠席志向性/欠席行動/項目反応理論


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