発表

3A-082

保育実践が保育者の自己評価に及ぼす影響:自由記述の結果から

[責任発表者] 伊藤 美加:1
1:京都光華女子大学

目的
 京都光華女子大学こども教育学部こども教育学科の2年次の学生に対して,初めての実習である『幼稚園教育実習Ⅰ(観察実習)』へ行く前後で,保育者としての自己評価がどのように変化したのかを,質問紙調査(自由記述)により検討した。

調査方法と結果
 『幼稚園教育実習Ⅰ(観察実習)』(2018年度は6月11日から15日までの5日間)終了後に調査冊子を配布し,実習を振り返ってそれぞれの質問に回答してもらった。はい・いいえの諾否法による10の質問項目に加え,具体的な内容について自由に回答してもらった(自由記述項目)。調査実施に協力し回答したのは81名であった。
【子どもとの関わり】「積極的に子どもと関わることができた」に続けて「どのような関わりをしましたか」と尋ねた。一緒に遊ぶ,制作が最も多く,絵本の読み聞かせや手遊び,歌といった部分保育や,着替えやトイレ,食事の補助・援助がそれに続いた。「自由遊びの時に一人1グループにいるのではなく,いろいろな子どものところへ行った」「挨拶をしたり,『どんな食べ物が好き?』などといった会話をたくさんするようにした」と積極的な声かけ・言葉かけを心がけたとの報告があった。
【指導や援助の方法】「適切な指導や援助の方法が分かった」に続けて「どのようなことが分かりましたか」と尋ねた。「一人一人の発達を理解し,その子に合わせた指導」を挙げる割合が最も多く,「頭ごなしに注意するのではなく,子どもたち自身に自分の行動や発言がどうだった分からせる必要がある」「子どもは先生の行動を良く見ているため,指導をする際,私たちも子どもたちと同じように守りごとを守り,同じ行動をする」「なんでも手伝うのではなく,『やってみよう』と声かけをする」「子ども同士のけんかが起こった際,すぐに怒るのではなく,子どもの気持ちを考え共感する」のように,具体的な指導や援助の方法を,自分の身をもって学んだことが伺えた。
【コミュニケーション】「先生とコミュニケーションを取ることができた」に続けて「どのようにコミュニケーションを取れましたか」と尋ねた。毎日の挨拶の他,反省会や掃除の時間に質問する等会話の機会を持てたことや,絵本・手遊びについてのアドバイスをもらったことで,コミュニケーションをとることができたと回答していた。「分からないことや疑問に思ったことはすぐに聞く」「やることがなかったら,手伝うことがないか,聞きにいく」と,主体的に働きかける大切さを学んだとの回答もあった。
【保育職の理解】「幼稚園教諭という仕事の楽しさが分かった」に続けて「どのような楽しさが分かりましたか」と尋ねたところ,子どもの笑顔が見れる,子どもとたくさん遊べる,子どもの成長を感じられると,子どもとの関わりに関する回答が最も多かった。例えば「今までできなかったことが援助がきっかけでできるようになった姿を見るとやりがいを感じる」「自分の努力が子どもに喜ばれるので,達成感があると思った」との回答があった。
 また,「幼稚園教諭という仕事の厳しさ・大変さが分かった」に続けて「どのような厳しさ・大変さが分かりましたか?」と尋ねた。「子ども一人一人に対応する難しさ・大変さ」が最も多かった。例えば「一人ひとりの発達の仕方が違うため適切な援助をそれぞれの子どもに行うことが難しいと感じた」「集団の中で一人一人に寄り添うこと」が挙がっていた。そして多くの子どもを見ること,クラスをまとめることがそれに続き,子どもを特定の行動に促す声かけ・言葉かけその他,労働時間の長さや記録の多さ,休憩時間がなく常に動いていること,保護者対応についての回答もあった。
【実習成果】「今回の実習で成長したと感じた」に続けて「どのような点で成長を感じましたか」と尋ねた。まず,「初日に子どもたちに教えたりするとき,分かりやすい言葉を使おうと意識しすぎていたが,最終日には自然と言葉がでていた」のように,子どもと実際に関わることで具体的な保育指導・援助の方法が実践できるようになったとの回答があった。次に,「子どもについてもっと興味が沸いたし,好きになった」と子ども理解の深化を示す回答もあった。そして,「園でやる一つ一つの活動に込められた狙いや意味を考えるようになった」と,保育への理解の深化を示す回答もあった。更に「実習を通して,あなたの身についたと思うことは何ですか」と尋ねたところ,「すぐに援助しようとせず,子どもの様子を見守るということ。保育技術だけでなく,周りや全体を見る大切さや,積極性,責任感,あるいは,子どもを好きだと思う気持ちや自信」との具体的な回答があった。
【実習の感想】「実習全体を通しての感想を書いてください」と尋ねたところ,「実習へ行く前は不安がたくさんあったが,実習で様々なことを学ぶことができて良かった」「学んだことを次の実習にいかしたい」との前向きな感想が最も多かった。その他,実習前に知っていたことでも実感を伴って理解が深まったこと,知っていることとできるようになることとは違うこと,それが今後の学びに繋がることも挙げられていた。

まとめ
 実習後の調査結果から,実習体験を通して実際の保育現場を目の当たりにし,現場の厳しさや大変さを痛感しつつも,同時に楽しさや自らの成長を見出し,保育者になるための学びを深める学生の様子が伺えた。同時に,保育者になるという職業選択の揺れ,保育者の適性に対する疑念も僅かではあるものの見出された。

キーワード
実習前後の変化/保育者としての資質や能力/自由記述


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