発表

2D-080

児童の数学的な見方・考え方の形成的評価に向けたルーブリックの開発
図を利用した問題解決に着目して

[責任発表者] 後藤 崇志:1
[連名発表者・登壇者] 石橋 優也#:2, 髙田 咲季#:1, 八木 菜月#:1
1:滋賀県立大学, 2:みずからまなぶ

問題
 平成29年に改訂された学習指導要領において,算数科では数学的な見方・考え方の育成が重要視されている (文部科学省, 2017)。算数科における数学的な見方・考え方は「事象を数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え,根拠を基に筋道を立てて考え,統合的・発展的に考えること」(pp. 7)と定義される。数学的な見方・考え方を身に着けることは,知識や技能を習得・活用して創造的な学習を進め,日常の事象を数理的に捉えて問題解決を図るために重要であるとされている。
 数学的な見方・考え方の習得を促すためには,児童が問題解決を図る際の思考過程を顕在化させ,児童と教授者がその習得状況を評価できるようにすることが有効であろう。これにより,児童は自身の問題解決の過程を振り返ることが容易になるとともに,教授者も児童のつまずきに着目した適切な指導を行いやすくなる。本研究では,児童に対して算数の文章問題を解く際に問題文に書かれた状況を図示するように求め,得られたパフォーマンスについて数学的な見方・考え方の習得という観点から形成的に評価するためのルーブリックの作成を試みた。評価の信頼性を検討するため,複数の評価者でルーブリックを用いて評価をし,一般化可能性理論による分析を行った。

方法
評価対象 学習塾に通う小学3年生~6年生14名(男子11名・女子3名)が,解いた15問の算数の文章問題の解答(計210点)を評価対象とした。なお,問題は数を数えて四則演算を行うものから,割合や距離・速さ,変化・関係を扱うものまで,難易度の異なるものが含まれていた。
ルーブリックの作成 先行研究(市川, 2013; 植坂他, 2014など)を参考に数学的な問題解決の過程を踏まえて第一,第二発表者が合議し,「絵・図表による表現(問題文に書かれた情報をすべて使って,絵で表現できる)」「数学的知識の利用(数学的な知識を使って,長さ,割合,重さ,数量などの数値表現を絵で表現できる)」「絵の操作と立式(絵を操作しながら,立式につなげ,適切な解法を選択できる)」「計算の実行(計算式を解き,数学的な解を導くことができる)」の4観点(表1中では順にA, B, C, Dと表記)について,0から3までの4段階で評価するルーブリックを作成した。
ルーブリックを用いた評価 第一発表者,およびルーブリックの作成に関わっていない第三,第四発表者の3名がルーブリックに基づいて解答を評価した。評価の際には,解答者が特定されないように,解答は問題内で無作為な順に並べ替えられた。

結果と考察
 観点ごとに,評価者(3水準)・解答者(14水準)・問題(15水準)の3要因(相)の完全クロス計画として分散成分の推定を行った。結果は表1に示した通りであった。「絵の操作と立式」「計算の実行」については評価者を含む要因の分散が比較的小さいことから,評価者の主観によって評価がばらつきにくいルーブリックを作成できていると考えられる。得られた推定値を元に行ったD研究の結果(図1)から,特に「絵の操作と立式」については比較的少ない数の問題の評価からも信頼性の高い評価を行えることが示唆された。一方で,「絵・図表による表現」「数学的知識の利用」については評価者を含む要因の分散が比較的高く,評価者の主観によって評価がばらつく要素を含んだルーブリックになっていたと考えられる。これらの観点について,ルーブリックの信頼性を高めるためには観点や各評定段階の特徴について,評価者が把握しやすいように表現を明確化することが必要であることが示唆された。
謝辞 本研究は滋賀県立大学 SDGs特化型地域課題研究の助成を受けて行われた。

キーワード
数学的な見方・考え方/ルーブリック/信頼性


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