発表

2D-076

ボーイスカウトにおける1年間のスカウト活動の教育効果について

[責任発表者] 田中 優:1
[連名発表者・登壇者] 安藤 正紀#:2, 櫻井 康博#:3, 中島 豊#:4, 黒澤 岳博#:5, 孫 佳茹#:6
1:大妻女子大学, 2:玉川大学, 3:埼玉大学, 4:長野大学, 5:城西大学, 6:中央大学

目的 2022年に100年を迎える日本のボーイスカウト運動であるが,その教育効果に関する実証的研究は,スカウトキャンプの教育効果に関するもの(中野ら,2012;2014, 田中,2016;
2017;2018)がわずかにあるのみである。本研究では,1年間のスカウト活動(以降,スカウティング)の教育効果を明らかにするため,活動の楽しさ,進級レベル,進級意欲のそれぞれと,スカウティングとが,自律の力(田中ら,2018),リーダーシップに与える影響について検討した。
方法 事前調査(2017年4~6月)と事後調査(2018年4月~6月)をボーイスカウト日本連盟の都道府県登録数比率に基づき,全国のボーイスカウト708名(男子531,女子177)を対象者に,郵送法での質問紙調査を実施した。
調査内容:(1)スカウト活動(スカウト活動の楽しさ,現在の進級レベル,進級意欲等),(2)自律の力(田中ら,2018):社会的能力,問題解決能力,愛他心,危険回避,共感性,自己理解,自制心,身体的耐性の8側面から構成される57項目,(3)リーダーシップ測定尺度(国立妙高青少年自然の家,2011)
20項目等である。分析対象:事前調査449名(男子319,女子129,不明1),事後調査213名(男子152,女子60,不明1)の回答者のうち,事前事後の両調査に回答した156名(男子111,女子45)。分析:自律の力(自律の力(全体),自律の力の8側面),リーダーシップ(リーダーシップ,課題達成機能,集団維持機能,リーダーシップの5つの力)のそれぞれを従属変数とし,(1)活動の楽しさ(楽しくない・どちらでもない,楽しい,すごく楽しいの3水準)とスカウティング(事前,事後の2水準)を独立変数,(2)進級レベル(初級,2級,1級,菊の4水準)とスカウティング(事前,事後の2水準)を独立変数,(3)進級意欲(1級・2級まで,菊まで,隼・富士までの3水準)とスカウティング(事前,事後の2水準)を独立変数とする混合計画の2要因分散分析をそれぞれ行なった。
結果 スカウト活動の楽しさとスカウティングの教育効果 自律の力については,自制心において活動の楽しさの主効果(F(1,138)=6.24,p<.05)が認められた。また,自律の力(全体)と共感性において,活動の楽しさとスカウティングの交互作用が認められ(F(2,112)=3.35,p<.05;F(2,148)=4.94,p<
.01),活動の楽しさにおけるスカウティングの単純主効果検定を行なったところ,いずれも,活動をすごく楽しいと感じている水準で,スカウティングの単純主効果が認められた(F(1,112)=8.38,p<.01;F(2,148)=4.10,p<.05)。
 リーダーシップについては,集団維持機能,および,課題達成機能の下位指標である情報を収集し,創造力をもって課題を解決しようとする力において交互作用が認められ(F(2,132)=3.33,p<.05;F(2,136)=3.45,p<.05),活動の楽しさにおけるスカウティングの単純主効果検定を行なったところ,いずれも,活動をすごく楽しいと感じている水準において,スカウティングの単純主効果が認められた(F(1,132)=
4.98,p<.05;F(1,136)=5.15,p<.05)。
進級レベルとスカウティングの教育効果 自律の力については,自制心において,スカウティングの主効果(F(1,136)=
5.19,p<.05)と進級レベルとスカウティングの交互作用が認められ(F(3,136)=3.46,p<.05),進級レベルにおけるスカウティングの単純主効果検定を行なったところ,2級スカウトにおいて,スカウティングの有意な単純主効果が認められた(F(1,136)=18.83,p<.001)。
 リーダーシップについては,課題達成機能,中位指標の「計画的に考えて行動する力」と下位指標の「計画・判断」において,いずれも,進級レベルとスカウティングの有意な交互作用が認められ(F(3,123)=2.73,p<.05;F(3,130)=4.17,p<
.01;F(3,136)=5.02,p<.05),進級レベルにおけるスカウティングの単純主効果検定を行なったところ,1級スカウトにおいて,スカウティングの有意な単純主効果が認められた(F(1,123)=9.39,p<.01;F(1,130)=12.59,p<.001;F(1,136)=
16.01,p<.001)。
進級意欲とスカウティングの教育効果 自律の力については,自制心において,スカウティングの有意な主効果が認められた(F(1,112)=13.34,p<.001)。
 リーダーシップについては,リーダーシップ(全体),課題達成機能の中位指標の計画的に考えて行動する力と下位指標の計画・判断において,また,集団維持機能,集団維持機能の中位指標の集団内の人間関係を円滑にしようとする力と,その下位指標のユーモア・明るさにおいて,いずれも,進級意欲とスカウティングの交互作用が認められ(F(2,98)=3.60,p
<.05;F(2,107)=3.28,p<.05;F(2,111)=3.09,p<.05;F(2,105)
=4.22,p<.05;F(2,110)=3.95,p<.05;F(2,120)=3.84,p<.05),進級意欲におけるスカウティングの単純主効果検定を行なったところ,いずれも,富士・隼までの進級意欲のあるスカウトにおいて,スカウティングの有意な単純主効果が認められた(F(1,98)=8.74,p<.01;F(1,107)=12.49,p<.001;F(1,111)
=11.68,p<.001;F(1,105)=8.05,p<.01;F(1,110)=5.08,p<
.05;F(1,120)=4.17,p<.05)。
考察 (1)スカウティングには,自制心を高める教育効果があると考えられる。(2)スカウティングの教育効果は,活動を楽しいと感じているスカウトにおいて,自律の力(全体,共感性,自制心),リーダーシップ(集団維持機能,情報を収集し,創造力をもって課題を解決しようとする力)を向上させた。(3)スカウティングの教育効果は,2級スカウトにおいて,自制心を高め,1級スカウトにおいて,リーダーシップ(課題達成機能(上位指標),計画的に考えて行動する力(中位指標),計画・判断(下位指標))を向上させた。(4)スカウティングの教育効果は,隼・富士までの進級意欲のあるスカウトにおいて,リーダーシップ(全体),計画的に考えて行動する力(中位指標)と計画·判断(下位指標),集団維持機能(上位指標),集団内の人間関係を円滑にしようとする力(中位指標)とユーモア・明るさ(下位指標)を向上させた。

キーワード
スカウト教育法/教育効果/ボーイスカウト


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