発表

2D-073

高1への9週間の構造方略教示は説明文理解と学業達成を促すか?(1)
一9週間におよぶ構造方略教示のプロセス一

[責任発表者] 山本 博樹:1
[連名発表者・登壇者] 織田 涼:2
1:立命館大学, 2:東亜大学

 目的
 「高1クライシス」の解消を図るために,1学期での説明文理解と学業達成を支援するための構造方略教示に期待が寄せられてきた (山本・織田, 2018)。そこで本研究では9週間の構造方略教示を実施する教示群と実施しない非教示群を設定し,その影響プロセスを検証した。なお構造方略教示が9週間と長期に及ぶため,この長期間の訓練に立ち向かうには学習適応性の介在が考えられるため,そのレベルにより上位・中位・下位群を設定し影響プロセスを検討した。今回の発表では教示群における9週間の教示プロセスの成果を報告する。

    方法
参加者:公立高1年の4クラス。151人(男58人,女93人)。2クラスが非教示群で,残り2クラスが教示群。6月段階での教研式「学習適応性検査」(AAI)の結果に基づいて,参加者が均等に別れるように上位群・中位群・下位群の3群を構成した。その結果,教示群は順に19人,24人,29人となり,非教示群は同様に31人,28人,20人となった。人数構成についてカイ自乗検定を行ったところ有意にならず,人数構成の妥当性が示された。
手続き:構造方略教示と事前事後評価を以下の通り行った。
構造方略教示:2018年1学期の6月下旬から9月上旬までの9週間。毎週金曜日のSHで実施。1週につき説明文の構造を同定させる簡単な問題1問を解答させた後,前週からの一週間を振り返って各自の構造方略の使用傾向を評価させる評価的支援を行わせた。
事前・事後評価:以下を構造方略教示の前と後とで実施。
構造方略の使用傾向:犬塚(2002)の構造注目方略を使用し,7項目 (言葉関係,接続詞,意味段落,内容予測,文章構造,題名,全体像) を7段階で評定させた。
説明文理解度: 標識の有無が異なる2つの説明文を提示し理解度を7段階で評定させた。
学業達成:5教科の理解度を7段階で評定させた。

 結果と考察
1) 群構成に関する予備的分析
 6月段階での教研式「学習適応性検査」(AAI)の結果を用いて,教示 (2: 有無) ×学習適応レベル (3: 上中下群) の2要因分散分析を行った結果,学習適応レベルの主効果が有意であった (F(2,145)=260.84, p<.01)。多重比較の結果,下位群<中位群<上位群となった。ここから,学習適応レベルに基づく群構成の妥当性が示された。以下では,教示群について9週間の教示時期の成果を検討する。
2) 9週間にわたる構造方略の使用傾向の自己評価
 7項目の合計評定値を合算し,学習適応レベル (3) ×教示時期 (9週) の2要因分散分析を行った結果,学習適応レベルの主効果 (F(2,69=4.86, p<.05),教示時期の主効果 (F(8,552=15.17, p<.01),両者の交互作用 (F(16,552=1.92, p<.05) が有意に認められた。単純主効果の分析から,4週目以降で学習適応レベルの主効果が有意に認められ,それぞれ下位群<上位群の結果となった。中位群と上位群とで教示時期の単純主効果が認められた。多重比較より,いずれも教育時期による向上が顕著に見られた。
3) 構造方略を構成する下位方略の使用傾向の自己評価
 まず上位群で,教示時期 (9週) ×下位方略使用傾向 (7項目) の2要因分散分析を行ったところ,時期と下位方略使用傾向の主効果,交互作用が有意に認められた (F(8,224)=15.88, p<.01; F(6,168)=17.17, p<.01; F(48,1344)=2.23, p<.01)。単純主効果の分析では全週で下位方略使用傾向の単純主効果が認められた。また,「言葉関係」,「意味段落」,「内容予測」,「文章構造」,「題名」,「全体像」で教育時期の単純主効果が有意となり,多重比較からいずれも時期による向上が顕著に見られた(Figure1)。
 次に中位群では教示時期と下位方略使用傾向の主効果,交互作用が有意に認められた (F(8,184)=6.11, p<.01; F(6,138)=7.17, p<.01; F(48,1104)=2.41, p<.01)。単純主効果の分析より第4週を除く全週で下位方略使用傾向の単純主効果が認められた。また,多重比較の結果は「意味段落」と「題目」で教示時期による顕著な向上を示した(Figure1)。
 最後に,下位群については,教示時期の効果は認められなかった(Figure1)。
4) 9週間の教示プロセスと変化
 9週間の教示期間中では学習適応レベルの上位群と中位群で教示時期が進むにつれて構造方略の使用傾向が変化した。特に上位群では下位方略の使用傾向が全般的に高まった。
付記 科研費 (基盤(C):23530877) の助成を受けた。

キーワード
高1/構造方略教示/学業達成


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