発表

2C-065

モラルシンキング概念構築のための探索的研究(3)
モラルシンキングとキャリア基礎力の関係

[責任発表者] 森 津太子:1
[連名発表者・登壇者] 池田 まさみ:2, 高比良 美詠子:3, 宮本 康司#:4
1:放送大学, 2:十文字学園女子大学, 3:立正大学, 4:東京家政大学

【問題と目的】
 本一連研究では,新しい道徳科のなかで求められている「道徳性」を,思考面を重視する「モラルシンキング」として捉え直す。そしてその資質・能力を構成する要素や関連する資質・能力を検証することで,モラルシンキングの概念構築を図ることが目的である。
 本稿では,一連研究の(3)として,モラルシンキングとキャリア基礎力の2波のパネルデータの解析結果を報告する。文部科学省中央教育審議会は,2011年に提出した答申のなかで,キャリア教育を「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育」と定義している。すなわち,キャリア基礎力の育成を目指すキャリア教育と道徳科は,その教育目標に重なるところが大きい。そこで本研究では,モラルシンキングとキャリア基礎力の因果関係を,交差遅延効果モデル(Figure 1)による構造方程式モデリング(SEM)を用いて検証する。
 キャリア基礎力については,高校生を対象とした調査研究の結果より,「目標志向」「状況理解」「創意工夫」の3因子構造からなるキャリア基礎力尺度が開発されている(池田・宮本・平田・田中,2015)。本研究では,この尺度と一連研究(1)で開発されたモラルシンキング尺度を用いて,各尺度の因子ごとに両者の因果関係を検討する。なおキャリア基礎力は,過去にクリティカルシンキングとの因果関係も調べられており,クリティカルシンキングの「探究心」因子はキャリア基礎力全般と双方向に,また「他者理解」因子はキャリア基礎力の「創意工夫」因子と双方向に影響し合うことが明らかにされている(池田他,2015)。
【方法】
 調査対象 一連発表(2)と同じ。
 調査時期 一連発表(2)と同じ。
 調査内容 一連発表(1)で作成した中学生版モラルシンキング尺度に加え,3因子22項目から成るキャリア基礎力尺度(池田他,2015)を用い,いずれの尺度も6件法により回答を得た(因子はTable 1を参照)。
 分析モデルの選定 誤差間の共分散に等値制約を置いたModel 2,学年からのパスに等値制約を置いたModel 3,誤差間の共分散および学年からのパスに等値制約を置いたModel 4と,これらの制約をおかないModel 1(解放モデル)の適合度をχ2差異検定により比較した。その結果,「公正な個人」と「目標志向」の関係,「公正な個人」と「状況理解」の関係についてはModel 1を,それ以外の関係についてはModel 3を採用した。各モデルの適合度指標は,RMSEA=.000~.060,CFI=.996~1.000,TLI=.980~1.013であった。
【結果と考察】
 Table 1に示すように,2変数の因果関係は,モラルシンキングからキャリア基礎力への影響を示すパスaにおいて,より大きな正の標準化係数が示される傾向があった。しかしその逆方向,すなわちキャリア基礎力からモラルシンキングへの因果的影響を示すパスbも,一部を除き,有意である。このことから,モラルシンキングとキャリア基礎力は,総じて相乗的に互いを高め合うものだと考えられる。なかでもモラルシンキングの「責任ある個人」因子と,キャリア基礎力の「目標理解」因子および「創意工夫」因子との間のパスは,いずれの方向のパスも標準化係数の値が高く,関係が強いことが示唆される。また,モラルシンキングの「公正な個人」因子と,キャリア基礎力の「状況理解」因子との関係も強い。
 このように本研究の結果は,一連研究(1)のモラルシンキングの尺度開発,および一連発表(2)のモラルシンキングとクリティカルシンキングの関係検証に続き,モラルシンキング概念の一部を明らかにするものであった。今後,一連の研究結果を包括的に検討し,さらには2019年3月に実施した3波目となるパネル調査のデータの解析を進めることで,より精緻なモラルシンキング概念の構築を図っていく予定である。それをもとに,モラルシンキングの教材や教授法開発に繋げていきたいと考えている。
【引用文献】
池田・宮本・平田・田中(2015). 高校生のキャリア教育とクリティカルシンキング(自主企画シンポジウム) 日本教育心理学会第57回総会発表論文集, 84-85.

キーワード
モラルシンキング/クリティカルシンキング/キャリア基礎力


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