発表

2B-084

家族・友人へのサポート期待に焦点を当てた心理教育の効果

[責任発表者] 亀山 晶子:1
[連名発表者・登壇者] 及川 恵:2, 坂本 真士:1
1:日本大学, 2:東京学芸大学

  目的
 周囲の人との支え合いや支持的な対人関係は,ソーシャルサポートとして我々の心身の健康と関連することが示されている(Cohen & Wills, 1985, 2005)。そこで近年,大学生の抑うつ予防としてサポートをもらえるという期待に着目した心理教育プログラムが開発・実施され,受講者において友人へのサポート期待の有意な向上が示された(亀山・及川・坂本,2016)。さらに,心理教育受講者のうち友人へのサポート期待が向上した者の特徴を検討した研究から,社会的スキル,他者との関わりにおける推論の誤り(些細なことで嫌われたと思ってしまうなど)に焦点を当てた心理教育が有効であることが示唆された(亀山・及川・坂本,2018)。
 本研究では,社会的スキルの向上と他者との関わりにおける推論の誤りに焦点を当てた介入ワークを授業内で実施し,サポート期待やサポートのやりとりの関連要因への効果を検討した。
  方法
 都内女子大学心理学専攻の選択授業内で介入ワークを実施し,この授業の受講者を介入群とした。統制群は,同大学同専攻でこの授業を履修しなかった者とした。
 介入ワークを実施した授業は全15回の授業のうち,第9-12回に行い ,サポートに関する回と社会的スキルに関する回が2回ずつの計4回であった。これらは亀山他(2016)の対人的対処の回をもとに作成された。各回の構成は,講義とホームワーク,グループワークであった。介入による変化を検討するため,介入群,統制群ともに効果指標を含む質問紙調査を介入前,介入後,介入1か月後に調査した。分析対象者数は,3回の効果測定のいずれかに参加した介入群39名,統制群61名であった。各指標のα係数は.72-.93の範囲であった。
1. 効果指標(介入前,介入後,介入1週間後に測定) 
 家族/友人へのサポート期待と提供 宮崎・小玉・佐々木(1999)の知覚されたソーシャルサポート尺度から,家族/友人へのサポート期待8項目と,サポート提供についての8項目を作成し,5段階(1-5)で評定してもらった。
 社会的スキル KiSS18(菊池,1988)について5段階(1-5)で評定してもらった。
 サポートのやりとりに関する自己効力感 意思表示,サポート提供,支え合いなどに関する項目を授業内容から独自に作成した9項目について5段階(1-5)で評定してもらった。
2.介入内容の実践状況 (介入群のみ,授業最終日に実施)
 介入授業で習ったサポートのやりとり,スキル獲得に関する知識や技法を日常的にどの程度実践しているかを,無関心期(実践に関心がない),関心期(実践に関心はある),準備期(実践するための準備をしている),実行期(実践している)から1つ選択してもらった。
  結果
 統制群,介入群で各効果指標の変化を検討するため,各指標の3時点の測定データから潜在曲線モデルの共分散構造分析を行った。今回のサンプルサイズを考慮し,マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)による一次式の変化(傾き)とその分散(個人差)を推定し,95%信用区間を算出した。ベイズ適合度は良好であった。分析にはAmos ver.24を用いた。
 家族・友人へのサポート期待,サポート提供,サポートのやりとりに関する自己効力感は授業を通して変化はみられなかった。変化がみられたのは,効果指標のうち介入群の社会的スキルであった。すなわち,社会的スキルの変化は,統制群ではほぼ0なのに対し,介入群では授業を通して向上がみられた(Figure 1)。 なお,すべての効果指標では変化の個人差の分散が有意にみられた。
 さらに,介入群の授業最終日の実践状況の割合を調べた。サポートのやりとりでは,無関心期4.9%,関心期19.5%, 準備期63.4%, 実行期12.2%であった。スキル獲得については,無関心期0%,関心期9.8%,準備期70.7%, 実行期19.5%であった。サポートのやりとりより,スキル獲得に関する実践状況のほうがやや進んでいたといえる。
 考察
 介入群では授業を通して社会的スキルの向上がみられ,社会的スキルの介入の効果がみられたといえる。また,受講者の授業後の実践状況から,スキル獲得に関する実践はサポートのやりとりよりも関心を持たれ,すでに実行に移している者もいることから,社会的スキルの向上につながったと考えられる。一方で,サポートのやりとりに関しては,授業を通して効果指標に向上がみられなかった。スキル獲得に比べるとサポートのやりとりに関心を持たない者や,実践までに至っていない状態の者が多く,効果指標に変化がみられなかった可能性がある。とはいえ,準備期の者も多かったため,授業を通して得た知識を使っていこうという動機づけにはつながったと考えられる。
 今後はサポートに関する効果指標の変化の個人差についてさらに検討する必要がある。
※本研究は日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)課題番号17K18157の助成を受けて行われた。

キーワード
サポート期待/サポート介入/心理教育


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