発表

2B-082

児童の他律的セルフ・エスティームとストレスの関連
全体およびコンピテンス領域別の他律的セルフ・エスティームに着目した短期予測的研究

[責任発表者] 賀屋 育子:1
[連名発表者・登壇者] 横嶋 敬行:2, 内田 香奈子:2, 山崎 勝之:2
1:兵庫教育大学, 2:鳴門教育大学

目 的 近年,SEを適応的な面と不適応的な面に弁別して捉える研究が行われている。山崎他(2017)は,適応的な側面を自律的SE,不適応的な側面を他律的SEとして提唱している。他律的SEは,外的な基準や他者との比較に依拠して決まるSEであると論じられている。他律的SEは,全体的な傾向と,特定の領域に特化して高まる領域別の概念に区別され,全体的な特徴を測定する尺度と(賀屋他,2018),学校教育で扱われるコンピテンス領域に特化した他律的SEを測定する尺度が作成されている(賀屋他,印刷中)。子どもたちが多くのコンピテンスを習得していく過程で繰りかえされる,他者との比較や他者が設定する基準との比較によって形成されていく他律的SEは,子どもたちの日々のストレスを高めている可能性が懸念される。他律的SEがストレスに及ぼす影響を横断的に検討した研究では,他律的SEのストレスに対する影響は正負の両方の関係がみられ,他律的SEがストレスを軽減する一方で,別のストレスを高めてしまう可能性が示された(賀屋他,2019)。しかし,横断的な研究では同地点での測定であるため,逆の因果関係の可能性を否定することができない。そこで,本研究では,他律的SEが児童のストレスに及ぼす影響を縦断的に検討することを目的とする。

方 法調査時期・調査対象 調査対象はA県の小学校(3校)の4から6年生と,B県の小学校(1校)の5年生から6年生の計592名(男子 291名,女子 301名)を対象に行った。調査は5―6週間の期間を空けて2回行われた。
測定方法 測定には,以下の3つの尺度を使用した。まず,全体的な他律的SE(全体HSE)を測定するために,児童用の他律的SE尺度(賀屋他,2018)を使用した。「わたし(ぼく)は,友だちよりも,よいところを多くもっている」など,7項目で構成されている。評定は,「1.まったくあてはまらない」から「4.とてもよくあてはまる」の4件法でたずねた。次に,領域別の他律的SEを測定するために,コンピテンス領域別の他律的SE尺度(賀屋他,印刷中)を使用した。領域は,勉強(勉強HSE),運動(運動HSE),芸術・技術(芸術・技術HSE)の3領域である。全体的な他律的SEの尺度と同様の項目を領域ごとにたずねる,全21項目から構成される。評定は全体的な他律的SEの尺度と同様の4件法でたずねた。そして,児童の学校生活におけるストレスを測定するために,心理的ストレス尺度(長根,1991)を使用した。classmate(対人関係に対するストレス), presentation(人前でのパフォーマンスに対するストレス), achievement(学業成績など評価に対するストレス), failure(失敗に対するストレス)の4因子,全20項目で構成されている。評定は,「1.いいえ」から「4.はい」の4件法でたずねた。

結果および考察 全体および各領域の他律的SEが,各ストレスに及ぼす影響を検討するため,Time1(T1)の各他律的SEと各ストレスを独立変数,Time 2(T2)の各ストレスを従属変数として,全体および男女別に2ステップから構成される階層的重回帰分析を行った。Table1には,ストレス変数のclassmateを従属変数にして他律的SEを単独で投入した結果と,すべての領域別の他律的SEを同時に投入した結果を示す。
 classmateには,男女を合わせた全体と男子において,全体および勉強,運動領域が有意な正の影響を与えることが示された。女子では,全体と勉強,芸術・技術領域が有意な正の影響を及ぼすことが確認された。次に,presentationには,芸術・技術領域が有意な正の影響を与え,全体的な他律的SEからの影響は有意傾向に留まった。Achievementには,男女を合わせた全体において運動領域が有意な正の影響,女子においては全体と運動領域が有意な正の影響を与えていることが示された。最後にfailureには,男女を合わせた全体では運動領域が有意な正の影響を与え,全体と芸術領域からの影響は有意傾向にとどまった。女子においては全体と運動領域が有意な正の影響を与えることが示された。いずれにおいても,有意な正の影響が認められ,他律的SEがストレスを高める要因になっていることが示された。横断的研究(賀屋他,2019)では他律的SEとストレスの負の相関や,負の標準回帰係数がみられている。しかし,因果関係の推定精度を高めた本研究の分析方法では,他律的SEは将来的なストレスを高めることが示唆されており,健康・適応を阻害する要因となっていることが明らかにされた。

Table 1全体的な他律的SEおよびコンピテンス領域別の他律的SEを説明変数,心理的ストレス尺度の各変数を従属変数とした階層的重回帰分析の結果(全体・男女)

キーワード
自尊感情/ストレス/児童


詳細検索