発表

2B-081

大学帰属感尺度(SUM-6)の開発(3)
縦断データによる学年変化の検討

[責任発表者] 奥田 亮:1
[連名発表者・登壇者] 川上 正浩:1, 坂田 浩之:1, 佐久田 祐子:1
1:大阪樟蔭女子大学

目 的
 リスクのある学生にとって,学校への帰属意識やその一員であるという意識が,学校への参加やリテンションにおける潜在的な決定因であるとされている(Goodenow,1993)。筆者らは大学への帰属感や大学生活充実感(大学へのコミットメント・学業満足・交友満足・不安のなさ)に影響を及ぼす要因やこれらを高める教育プログラムの開発を継続的に行う中で,大学生活充実度尺度(SoULS-12)の信頼性と妥当性を検討し(佐久田他,投稿中),さらには上記の一連の研究に用いられた帰属感尺度についても再検討を行った。 帰属感の測定尺度として, Goodenow(1993)のpsychological Sense of School Membership (PSSM) scaleがあるが,これは大学生を対象として作成されたものではなく,項目数も比較的多い。近年では海外において大学生版のPSSMの開発が進められている(Alkan(2016)など)が ,本邦では大学生版のPSSM は開発されていない。また,帰属感尺度は他の指標と共に用いることで,活用の幅が広がると考えられるため,大学生を対象とした,項目数の少ない,施行の簡便な大学帰属感尺度の開発を目指し,奥田他(2017)は,帰属感尺度(川上他, 2009) の確認的因子分析および信頼性・妥当性検討の結果から,6項目の一因子構造からなるSUM-6を構成した。
 このような大学への帰属感は,大学に所属する期間が長くなるにつれ高まることが当然予測されるが,実際に大学帰属感の学年変化に関して測定した研究は,国内外を問わず見当たらない。筆者らも大学生活充実感に関しては4年間の学年変化について検討している(坂田他(2013)など)が,大学帰属感に関しては4年間を通じた学年変化について検討していない。そこで本研究では,SUM-6の縦断データから大学帰属感の学年変化について検討を行う。
方 法
調査協力者 近畿圏の私立女子大学に所属する大学生97名が調査に参加した。彼女らは2008年度入学生38名(平均年齢18.8歳,SD =1.00:初回調査時),2011年度入学生25名(平均年齢18.0歳,SD =0.20:初回調査時),2015年度入学生34名(平均年齢18.7歳,SD =0.46:初回調査時)であった。
調査内容 帰属感尺度(川上他,2009)が用いられた。
手続き 2008〜2011,2011〜2014,2015〜2018の各年度において11月に,授業時間内に集団法で質問紙を実施した。本研究では,そのうちSUM-6を構成する項目のみを抽出して分析に用いた。
倫理的配慮 回答に際しては,研究の目的が集団の傾向を把握するものであること,結果が研究の目的以外に使用されることはないこと,プライバシーに関しては秘密厳守することがフェイスシートに記載された。
結 果
 SUM-6に関して,調査時点(1年次~4年次のいずれも11月)を調査協力者内要因,入学年度(2008年度, 2011年度, 2015年度)を調査協力者間要因とする二要因分散分析を行った結果,調査時点に関して0.1%水準で有意な主効果が認められた(F (3, 282) = 17.26, p < .001)。Bonferroni法による多重比較を行ったところ,1年次と3年次,1年次と4年次の間にそれぞれ0.1%水準,1年次と2年次の間に1%水準,2年次と4年次の間に5%水準で有意差が認められ,1年次より2年次・3年次・4年次,2年次より4年次のほうが得点が高かった(Fig.1)。一方,入学年度の主効果(F (2, 94) = 3.06)および交互作用(F (6, 282) < 1)は有意でなかった。
考 察
 以上より,1年次から3・4年次にかけて帰属感が高まることが認められた。予測したように,大学への帰属感は学年進行と共に高まることが確認された。またこれは,本研究で用いた帰属感尺度の妥当性を支持する結果であると言える。今後さらにデータ数を増やして検討することが求められる。
引用文献
Alkan, N. (2016). Psychological sense of university membership: an adaptation study of the PSSM scale for Turkish university students. The Journal of psychology, 150, 431-449.
Goodenow, C. (1993). The psychological sense of school membership among adolescents: Scale development and educational correlates. Psychology in the Schools, 30, 79-90.
川上 正浩・坂田 浩之・佐久田 祐子・奥田 亮 (2009). 新入生オリエンテーションに関する研究(5)大学における所属学科への帰属感高揚プログラムの開発に関する探索的研究 日本心理学会第73回大会発表論文集, 1282.
奥田 亮・川上 正浩・坂田 浩之・佐久田 祐子 (2017). 大学帰属感尺度(SUM-6)の開発 日本心理学会第81回大会発表論文集, 943.
坂田浩之・佐久田祐子・奥田亮・川上正浩 (2013). 複数コホートの大学1回生—4回生の縦断データから見た大学生活充実度の学年変化 大阪樟蔭女子大学研究紀要, 3, 29-37.

キーワード
大学への帰属感/縦断研究/学年差


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