発表

2B-080

児童用の自律的ならびに他律的セルフ・エスティーム潜在連合テストの開発
タブレットPCを用いた自律的および他律的SEの同時測定

[責任発表者] 横嶋 敬行:1
[連名発表者・登壇者] 大上 遊路#:2, 賀屋 育子:3, 内田 香奈子:1, 山崎 勝之:1
1:鳴門教育大学, 2:トラスト・テック, 3:兵庫教育大学

目 的 近年,非意識レベルのセルフ・エスティーム(Self-Esteem: SE)が精神的健康および適応行動に与える効用が注目されている(e.g., Jordan et al., 2003; Rudman et al., 2007; 山崎・横嶋・内田, 2017)。山崎他(2017)では,SEの適応的側面を自律的SE,不適応的側面を他律的SEと定義している。加えて,SEの測定に意識上のバイアスが与える影響力を考慮し,自律的SEは非意識レベルで測定する必要があると論じている。非意識レベルで心的特性を測定する方法には,潜在連合テスト(Implicit Association Test: IAT)があり,横嶋他(2017)では,IATを用いて児童用の自律的SEの測定法を開発している。一方で,横嶋他(2017)で作成されたSE-IATは,「自己」への肯定および否定の潜在連合に焦点化して測定する構成であり,自律的SEの本来の定義(自己信頼心,他者信頼心,内発的動機づけが総じて高い)を考慮すると,他者信頼心の要素を測定に組み込む必要性が指摘されている(山崎・横嶋・賀屋・内田, 2019)。自己信頼心と他者信頼心を同時に測定するSE-IATを作成することにより,得点高群には自律的SEの高い者を,低群には他律的SEの高い者(自己不信心,他者不信心,外発的動機づけが高い)を測り分けることができると考えられている。さらに,学校教育でより簡便に実施できる方法に改良する方法も考案されている(横嶋・賀屋・内田・山崎, 2019)。
 以上の観点から,本研究では山崎他(2019)および横嶋他(2019)で考案されているSE-IATの刷新案を基盤として,より簡易な方法で児童の自律的SEと他律的SEを同時測定することができるSE-IATを作成し,信頼性と妥当性の検討を行うことを目的とする。
方 法調査対象 小学校(2校)の4から6年生367名(男児166名,女児201名)および担任教員15名(男性5名,女性10名)を対象に調査を行った。調査は1ヶ月の時間を空けて2回行われた。信頼性の分析(再検査法)では,2回の調査でどちらも有効回答となった182名(男児87名,女児95名)を扱った。妥当性の分析では,1回目の調査で有効回答となった255名(男児107名,女児148名)を扱い,そのうち,教師による児童評定の対象者は±1SD基準で高群と低群に分けられた対象の中から抽選で選ばれた。実際に評定が行われた人数は,高群40名(男児16名,女児10名),低群24名(男児16名,女児9名)である。
調査材料 (1) 自律的ならびに他律的SE-IAT (AHSE-IAT) 自律的SEと他律的SEの両側面を測り分けることを目的として刺激語を設定した。加えて,全4回のIAT課題で実施される簡易版の構成で作成を行った。(2) 紙筆版SE-IAT (SE-IAT) 横嶋他(2017)で作成された自律的SEを測定するIATを使用した。構成は全7回のIAT課題で作成されている。(3) 担任教員による児童評定 他者評定法による構成概念妥当性を行うために,自律的SEおよび他律的SEに関する行動特徴を評定する評価用紙を作成した。自律的SEに関する特徴は「1人でいても友だちといても,主体的に(楽しそうに)やりたいことができていることが多い」とし,他律的SEに関する特徴は「競争意識が高く,他の児童の出来や結果を気にしてしまう様子が多い」とした。評定は7件法で行い,1点(まったく当てはまらない)から7点(とてもよく当てはまる)で評定を行った。
結果と考察信頼性の検討 AHSE-IATに対して再検査法による信頼性の検討を行った。2回の調査データから級内相関係数(ICC)を求めた。結果,全体がICC = .50 (95%CI: .39 .67),男児がICC = .54 (95%CI: .37 .67),女児がICC = .47 (95%CI: .30 .62) となり,正の相関が確認された。先行研究(Greenwald & Farnham, 2000)と比較すると,許容範囲の信頼性が確認されたと考えられた。
妥当性の検討 基準関連から妥当性を検討するために,AHSE-IATとSE-IATの相関係数を求めた。結果,全体がr = .29, p < .001, 男児がr = .34, p < .001, 女児がr = .26, p < .01 となり,有意な正の相関が確認された。さらに,担任教員による児童評定との一致度から構成概念妥当性を検討するために,自律的SEおよび他律的SEの特徴に関する評定得点を目的変数,性別(男児・女児)と群(高群・低群)を説明変数とした2要因分散分析を行った(Table 1)。結果,自律的SEの特徴に関しては,性別の主効果と交互作用は有意にならず,群の主効果が有意になり(F (1,47) = 113.95, ηp2 = .71, p < .001),AHSE-IATの低群よりも高群の評定得点が高かった。他律的SEの特徴に関しては,性別の主効果と交互作用は有意にならず,群の主効果が有意になり(F (1,47) = 11.59, ηp2 = .20, p < .01),AHSE-IATの高群よりも低群の評定得点が高かった。以上の2つの分析から,AHSE-IATの構成概念妥当性の一部が確認された。

Table 1担任教員による児童評定に対するAHSE-IAT高低群および男女別の平均値(標準偏差)と分散分析の結果

キーワード
潜在連合テスト/自尊感情/児童


詳細検索