発表

2B-079

学びのユニバーサルデザイン(UDL)に基づいた授業デザインにおける学生の変容
外的リソース方略の使用に着目して

[責任発表者] 藤井 厚紀:1
1:福岡工業大学短期大学部

目 的
 Rose & Meyer(2002)が提唱した「学びのユニバーサルデザイン(以下:UDL)」は,学習者の多様なニーズに対応するためのオプション(選択肢)をまとめた理論的枠組みである。この理論に基づき,藤井・石橋(2017)は授業内で3種類の外的リソースを用いる学習方法(外的リソース方略)を選択肢として学生に提供し,学生自身の学びやすい方法で取り組むことを可能にする授業デザインを導入した。
 本研究では,当該授業デザインのもとで学生の外的リソース方略の使用に及ぼす影響について検討することを目的とした。

方 法
 調査対象 本研究の対象とした授業科目は,X大学の専門教育科目の「情報処理演習II」である。当該科目は「文書作成や表計算ソフトの諸機能について演習を通して理解を深め,ビジネスツールとして活用できるスキルを身につける」ことを目的としている。授業の担当者は本稿著者である。開講時期は1年次後期であり,選択科目(2単位)である。本研究を実施した2018年度における各クラスの履修人数は,163名(男性:102名,女性:61名)であった。
 授業デザイン 当該授業の演習内容の水準は,授業が進むにつれ高くなるように設計している。演習時の学習方法として,UDLの3原則のうちの一つである「取り組みのための多様な方法の提供」に基づいた「学習方法自己選択方式」(藤井・石橋,2017)を導入した。当該方式における学習方法の選択肢として,佐藤・新井(1998)の「外的リソース方略」に分類される「教師への救援」「友人への救援」「情報収集」を設定した。演習中では,各自の学習スタイルや状況に応じて3つの学習方法のうちどれを選択しても,また途中で切り替えても良いこととした。
 手続き 本研究では,第2週目(プレ)と第14週目(ポスト)において学習方略の使用に関する質問紙調査を実施した。本研究では,プレ・ポスト調査の両方に回答した学生104名のデータを分析対象として使用した。なお,本調査は福岡工業大学の倫理委員会の承認を得たうえで実施された。
 質問紙 佐藤・新井(1998)が作成した学習方略の使用尺度のうち「認知・リソース方略」領域の中から「外的リソース方略」に該当する3項目について一部文言を改変した上で使用した(e.g.「勉強でわからないことがあったら,インターネットや参考書などを用いて調べる」)。 回答は,「ほとんどあてはまらない(1点)」から「とてもあてはまる(5点)」の5件法により行った。


結果と考察
 「外的リソース方略」の項目得点について,プレ・ポスト調査間で比較を行った(Figure 1)。その結果,「教師への救援」の使用はポストにおいて有意に増加した(t(103)=4.29, p<.001)が,反対に「友人への救援」の使用については有意に減少した(t(103)=-7.81, p<.001)。また,「情報収集」の使用はプレからポストにかけて得点の上昇があったものの,統計的有意差は認められなかった(t(103)=1.25, n.s.)。
 外的リソース方略のうち「友人への救援」の使用が減少した理由として,授業が進むにつれ学習内容が高度になるために,友人に対して質問のしづらさ(救援のコスト)が増大したことが考えられる。またそれに伴って,友人よりも習得の実効性が高い「教師への救援」を多く用いるようになったのはではないかと推測される。

謝 辞
 本研究はJSPS科研費(JP18K02718)により行われた。

引用文献
Rose, D.H., & Meyer, A. (2002). Teaching every student  in the digital age: Universal Design for Learning.  Alexandria, Virginia: Assn for Supervision &
 Curriculum.
藤井厚紀・石橋慶一 (2017). 学修スタイルの多様性を考慮し た授業デザイン:知識・技能の習得を目的とした科目へ の導入.大学教育学会誌,39 (2):85-94.
佐藤純・新井邦二郎 (1998). 学習方略の使用と達成目標及 び原因帰属との関係.筑波大学心理学研究,20:115- 124.

キーワード
学びのユニバーサルデザイン/外的リソース/学習方法


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