発表

2B-077

体罰は金曜日,飲酒運転は月曜日
X市市立学校における不祥事事案と懲戒処分者等の特徴

[責任発表者] 大上 渉:1
[連名発表者・登壇者] 中村 知靖:2, 小泉 令三:3, 増田 健太郎:2
1:福岡大学, 2:九州大学, 3:福岡教育大学

1 問題と目的
 昨今,教職員の不祥事が後を絶たない。文部科学省が実施した「公立学校教職員の人事行政の状況調査」(2018)によると,2017年に公立学校において,5,109名の教育職員が懲戒処分又は訓告等を受けた。懲戒事由は,体罰やわいせつ行為,飲酒運転,個人情報の不適切な取扱いなどである。これらの不祥事は,ごく一部の者(全教職員の0.55%)によって行われたものであるが,保護者や国民の厳しい批判の対象となり,教員全体に対する社会の信頼を揺るがす要因となっている(中教審,2006)。
 X市の市立学校(小学校,中学校,高等学校,特別支援学校)においても,教職員による不祥事が相次いでいることから,教職員向けの不祥事防止研修プログラムの刷新がX市教育委員会によって進められている。著者らは研修プログラム刷新のために専門委員として委嘱され,各自の専門的立場,教育心理学,臨床心理学,犯罪心理学並びに計量心理学から助言を行っている。
 本研究は,不祥事防止研修プログラム刷新にあたり,X市の市立学校における不祥事の実態を探るために,過去11年間に発生した不祥事事案について,その傾向や懲戒処分者等の特徴などを探ることを目的としている。

2 方 法
分析データ:2006年~2017年までの11年間に,X市の市立学校において発生し,懲戒処分等の対象となった不祥事事案243件。データはX市教育委員会より提供された。
分析方法:まず基礎集計を行い,主な不祥事事案(体罰,飲酒運転,わいせつ行為等,個人情報紛失流出,セクハラ)の全体的傾向を把握した。次に不祥事事案の違いにより,懲戒処分者等や事案の特徴などに違いがみられるかを検証するために,目的変数に「不祥事事案の種類」,説明変数として「発生月」「曜日」「場面」「性別」「年齢」「校種」「役職」「担当教科」などを選択し,2変数のクロス集計分析(フィッシャーの直接確率法で検定)を行った。

3 結果と考察
 X市の市立学校において発生した不祥事事案のうち,多かった事案は順に「体罰」(約52%),「個人情報紛失流出」(14%),「一般服務義務違反」(約8%)であった。「わいせつ行為等」は約5%,「飲酒運転」は約1.6%であった。発生月は「6月」(13.6%)が最も多く,最も少ないのは「2月」(3.3%)であった。発生曜日は「金曜日」(20.6%)が最も多く,次に「火曜日」(17.3%)であり,「日曜日」(7%)が最も少なかった。校種別にみると「中学校」(54.3%)が最も多く,次が「小学校」(34.6%)であり,最も少ないのは「高等学校」(4.6%)であった。懲戒処分者等の性別は「男性」が81%,「女性」が19%であった。年齢は「50代」(41.6%)が最も多く,次いで「40代」(25.5%),そして「30代」(19.8%)が続く。担当教科は「全教科(小学校・特別支援学校)」(22.6%)が最も多く,次が「担当無(管理職・事務職)」(17.3%),「保健体育」(15.2%)の順であった。
 クロス集計分析の結果,不祥事事案の種類と,発生月,曜日,性別,年齢,校種,担当教科などの間に有意な関連性(1%水準)が認められた。調整済み残差分析を行い,有意差(5%水準)に寄与した下位項目を明らかにし,主な不祥事事案の特徴を表1にまとめた。
 体罰については,発生月が「5月」及び「6月」,発生曜日が「金曜日」,懲戒処分者等の性別は「男性」,年齢は「30代」,校種は「中学校」,役職は「教諭」,担当教科は「保健体育」及び「理科」の相対的割合が有意に高かった。個人情報紛失流出については,発生月が「3月」,発生曜日が「水曜日」,場面は「出退勤途上」,懲戒処分者等の性別は「女性」,年齢は「30代」,校種は「特別支援学校」,役職は「副校長・教頭」の相対的割合が有意に高かった。わいせつ行為等については,懲戒処分者等の年齢は「20代」及び「30代」,教員歴は「10年以下」,役職は「講師・事務職員」,被害者の職業は「高校生」の相対的な割合が有意に高かった。飲酒運転については,発生月が「4月」,曜日は「月曜日」,役職は「副校長・教頭」の割合が有意に高かった。
 以上のとおり,X市の市立学校においては,不祥事事案が異なれば,その発生月や発生曜日,また懲戒処分者等の性別や年齢層,担当科目,役職なども相違することが示された。これらの知見は,不祥事事案の理解や発生機序を検討する際の糸口になるとともに,教職員に対する服務の管理や指導を行う際の着眼点になるものと考えられる。

4 謝 辞
 この研究を行うにあたり,X市教育委員会の方々に多大なる力添えを頂きました。ここに記して感謝申し上げます。

キーワード
教員/不祥事/コンプライアンス


詳細検索