発表

2B-076

総報酬量の違いが大学生の幼児への報酬分配に及ぼす影響

[責任発表者] 津々 清美:1
1:美作大学

 作業量の異なる人物に対してどのように報酬を分配すれば公正であるのだろうか。これまで先行研究の多くが,同年代の人との間でどのように報酬を分配するのかを検討してきた。しかし,日常生活場面では必ずしもそのようなことばかりではない。例えば,大人が子どもに分配する場合もある。では,このとき,大人はどのような公正観(感)に基づいて分配しているのだろうか。
 総報酬量を操作した報酬分配研究では,5歳児が総報酬量の豊かさや乏しさによって分配行動や分配理由を変化させることが見出されており(津々,2010),その頑健性についても確認されている(津々,2013)。一方,大人を対象とした研究では,保育者を養成する短期大学の学生が,総報酬量によって分配行動を変化させることが見出されており,幼児とほぼ同様の結果になることが示された(津々,2015)。しかし,津々(2015)の学生を対象とした研究はこの一つだけであり,再度同じように行っても同様の結果になるかどうかは不明である。そこで本研究では,4年制大学の学生を対象に,津々(2015)と同様の方法を用いて再度検討していくことを目的とする。
 方 法
 参加者 O県北部に位置する4年制大学の教員(小学校・幼稚園)および保育士を養成する学科の2年次開講の科目を履修している大学生103名を対象とした。このうち,同意が得られなかった12名と課題を途中辞退した4名を除く,計87名(2年生:85名,3年生1名,他学科4年生1名;男性23名,女性62名,不明2名)を分析対象とした。実施にあたり,参加者に本研究の目的および個人情報やデータの取り扱い,研究倫理について書面および口頭で説明し,書面による同意を得て実施した。
 実験用紙 津々(2015)で使用された実験用紙を加筆・修正したものを使用した(津々,2015参照のこと);加筆・修正部分は,1)フェイスシートの部分であり,参加者の同意が分かるように,「同意する」「同意しない」の選択項目を設けたこと,2)物語の提示箇所で,津々(2015)では,“先生から星を作ったご褒美にアメをもらった”と記していた箇所を,“先生から”という部分を削除して記載したこと,3)全ての課題終了後に,この課題で気になったことを自由に記載する項目を設けたこと,の3点であった。
 手続き 参加者はA4版の両面印刷された質問紙のセットを一斉に配布された後,実験者より本研究の目的や個人情報,データの取り扱い,倫理的配慮に関する説明を受けた。そして同意に関する質問に対して回答するよう求められた。同意後,参加者は個人属性(所属学科,学年,性別,きょうだいの有無,きょうだい数,出生順位)に回答した。次に以降のページ記載している物語文および総報酬量を操作した三つの質問項目を読み,2名の登場人物に分配する分配数およびその理由について回答した;物語文は津々(2015)と同様であり,2人の登場人物(幼児)がもうすぐ七夕なので笹に飾る星を,それぞれ3個と9個作ったという内容のものであった。その後,星を作ったご褒美にアメをもらったという教示文が書かれており,ご褒美のアメが12個の場合,4個しかなかった場合,20個とたくさんもらった場合の各々についてどのように分けるのが一番よいかを尋ねる質問項目が続いていた。最後にこれらの課題遂行において気になったことを自由に記述した。配布から回収までの時間は約15分であった。
 なお,提示した登場人物の性別は参加者と同性とし,作業量の多少や登場人物の左右位置,4個と20個の総報酬量条件の提示順序についてはカウンターバランスした用紙を配付した。
 結果と考察
 総報酬量効果 参加者が登場人物2名に分配した分配数から三つの分配パターンに分類した;公平分配(作業量の多い人物に7個以上分配した場合),平等分配(作業量の違いを無視して等しく分配した場合),逆転分配(作業量の少ない人物に7個以上分配した場合)。総報酬量条件によって分配パターンの違いがあるかどうかを調べるため,統制条件である12個条件を基準としてMcNemar-Bowker検定を行ったところ,有意な相違が見出された(12個条件 対 4個条件:x2(1)=12.00,p=.001;12個条件 対 20個条件:x2(1)=4.50,p=.034)。自由度は1になっているが,これはSPSSが自動的に調整しているためである。またゼロになるセルが多かったため,有意水準は漸近有意確率となっている。
 ゼロになるセルが多かっため,分配パターンを平等分配と平等分配以外の2カテゴリーにしてMcNemar型の直接確率法を用いた。その結果,12個条件と4個条件のみに有意な相違が検出された(p=.000)。12個条件と20個条件では有意な差は検出されなかった(p=.070)。
 本研究結果は,教師・保育士を目指す大学生においても総報酬量の豊かさや乏しさが影響して分配行動が変化するということであり,短大生を対象とした津々(2015)の研究結果とも一致する結果である。

キーワード
分配公正/総報酬量/大学生


詳細検索