発表

2A-083

大学生のSense of Coherenceと自尊心の関係
主観的幸福感と抑うつに対するSOCの独自性の確認

[責任発表者] 磯和 壮太朗:1
1:なし

問題と目的
 子どもの自尊心(Self-esteem)をいかに高めるかということは,近年の教育現場において常に中心課題の1つとして位置づけられてきており,2008年の中央教育審議会答申においては,子どもの問題の背後には自尊心の欠如があるとされ,子どもの自尊心を高めることの重要性が指摘されている(中間,2016a)。自尊心とは,「自分自身を自ら価値のあるものとして感じること」(中間,2016b,p.10)である。心理学研究で多く用いられているRosenbergによる定義では,「自分はとてもよい(very good)」ではなく,「自分はこれでよい(good enough)」ものとして自己を捉えるものである(Rosenberg,1965,pp.30-31)。
 自尊心とSOCの類似性については山崎(2008)で触れられており,自尊心の尺度項目は,自分をどのように捉えているか,という次元を問題にするのに対し,SOCの尺度項目は自分の生活世界をどのように捉えているか,という次元を問題にすることに違いがあるとされる(山崎,2008)。
 本研究では,SOCと自尊心の関係を確認し,自尊心によってSOCがどの程度説明されうるのかを確認する。その上で,自尊心によって,SOCと主観的幸福感,SOCと抑うつとの間にある関係が説明されるかどうかを検討する。具体的には,重回帰分析を用いて,2つの仮説を検証する。仮説1として「主観的幸福感に対するSOCの効果は自尊心よっては完全には説明されず,SOCは主観的幸福感に対して独自の効果を有している」,仮説2として「抑うつに対するSOCの効果は自尊心によって完全には説明されず,SOCは抑うつに対して独自の効果を有している」とする。これによって,主観的幸福感の増進や抑うつの予防・低減について,SOCの涵養に注目することの意義を示すことが本研究の目的である。

方 法
 調査時期 2018年11月初頭〜中旬
 被調査者 地方国立A大学と地方国立B大学,関西圏の私立A大学の大学生176名
 分析対象者 調査に同意し,年齢が25歳までであり,不適切な回答や欠損値がなかった139名(男性:57名,女性:82名,平均年齢19.72歳(SD=1.06))
 調査内容(本稿で報告しないものは省略)
1.人生の志向性に関する質問票(Antonovsky,1987 山崎・吉井監訳 2001) 29項目
2.日本版主観的幸福感尺度(曽我部・本村,2010) 4項目
3.自尊感情尺度(桜井,2000) 10項目
4.邦訳版the Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(島・鹿野・北村・浅井,1985) 20項目
 倫理審査 大阪大学大学院人間科学研究科教育学系の研究倫理審査を経て,倫理的に配慮し研究を行った。

結 果
 各尺度のα係数を算出した。その結果,α=.75〜.87の値が確認された。
 また,自尊心を説明変数,SOCを目的変数とした単回帰分析を実施した。分析に先立って各変数の標準化を行なった。その結果,標準変回帰係数はβ=.72(p≦.001)であり,決定係数はR2=.52であった。次に,自尊心とSOCを説明変数,主観的幸福感を目的変数とした階層的重回帰分析と,自尊心とSOCを説明変数,抑うつを目的変数とした階層的重回帰分析を実施した。結果をTable 1に示す。

考 察
 単回帰分析の結果から,SOCと自尊心は強い正の相関関係にあり,自尊心でSOCの分散の約52%が説明されたことから,SOCは自尊心を相当程度含有しているか,あるいはSOCには自尊心が相当程度付随している可能性が示唆された。
 主観的幸福感に対する階層的重回帰分析の結果から,Step 1の決定係数はR2=.34であることから,主観的幸福感の約34%が自尊心の要素によって説明可能であり,Step 2の決定係数は R2=.45 であることから,増分の約11%が SOCの独自の要素によって新たに説明可能になった部分であると考えられた。このことより,仮説1は支持された。
 また,抑うつに対する階層的重回帰分析の結果から,Step 1の決定係数は R2=.33であることから,抑うつの約33%が自己肯定感の要素によって説明可能であり,Step 2の決定係数はR2=.50であることから,増分の約17%がSOCの独自の要素によって新たに説明可能になった部分であると考えられた。このことより,仮説2は支持された。
 以上の結果から,SOCは主観的幸福感と抑うつに対して,自尊心には含まれていない独自の効果を有している可能性が示唆された。このことは,子どもに対してSOCを涵養するような働きかけの重要性を示すものであり,SOCの涵養を目的とした教育的介入の検討が必要であることを示唆する結果であると考えられた。

キーワード
首尾一貫感覚/自尊心/大学生


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