発表

2A-082

大学におけるアクティブ・ラーニングとその効果(4)
大学におけるAL研修でALの実施率は上昇するのか?

[責任発表者] 牧野 幸志:1
1:摂南大学

問 題 と 目 的
近年,多くの大学でアクティブ・ラーニング(以下,AL)が実施されている。本研究の最終的な目的は,大学教育において学生が主体となったALを運営し,その効果を明らかとすることである。本研究では,ALを「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」と定義し,特定の指導の型や技術ではなく,授業を進めていく上での考え方と位置づけている。牧野・久保(2018)では,ALの内容にはどのようなものがあるのかを明らかにし,それらが2016年度にどの程度実施されているのかを検討した。その結果,大学におけるALの内容は,学生の主体的活動と評価,学生同士の話し合い(ディスカッション),学生への資料・課題の提示,学生への問題提起に分類された。また,これらのALの内容の実施が学部などにより異なるかを検討したところ,全体として,教職やスポーツを含む学部以外と語学科目を含む外国語学部において実施状況が高い傾向がみられた。他方,理系学部において実施状況が低い傾向がみられた。本研究では,2017年度内におこなわれたAL研修をふまえて,1年後のAL実施状況を調査し,比較検討を行う。
方 法
調査参加者 調査は,「アクティブ・ラーニング・実践状況および意識調査にかかるアンケート」として,webを利用して職員番号を記入する無記名式で行った。調査参加者は大阪府内の私立大学の教員126名(男性86名,女性39名,未記入1名),職階(助教,講師,准教授,教授,非常勤))であった。調査時期は2018年5月。
質問紙の構成 質問紙の構成は,ALの実施状況(4段階評定,14項目),ALの具体例に対する知識(4段階評定,11項目),ALの具体例の活動度(4段階評定,11項目),ALのための運営スキル(4段階評定,17項目)。本研究では,ALの実施状況について分析をし,2016年度との比較を行った。
結 果 と 考 察
アクティブ・ラーニング因子の抽出(因子分析) 
ALの内容に関する14項目に対して主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。その結果,水野・久保・牧野・藤林・大塚・上杉・吉田・柳沢(2018)の因子構造と多少異なる構造がみられた。しかしながら,本研究では年度における変化を検討するため,同様の4因子の項目を用いて因子得点を抽出した。第1因子は「学生の主体的活動と評価」因子であった。第2因子は「学生同士の話し合い」因子であった。第3因子は「学生への資料・課題の提示」因子であった。第4因子は「学生への問題提起」因子であった。
2017年度ALの実施状況(学部による差異)
2017年度にどの程度各学部でAL実施されているのかを検討するため,学部を独立変数とする1要因分散分析を行った。7つの学部(薬学部,看護学部,理工学部,経営学部,経済学部,経営学部,外国語学部)と学部以外(教職支援センター,スポーツ振興センターなど)の8つで1要因8水準の分散分析を行った。従属変数は4つのALの因子得点であった。
学生の主体的活動と評価 「学生の主体的活動と評価」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,118)=4.84, p <.01)。多重比較の結果,経済学(M = 2.13),理工学部(M = 2.26)は,経営学部(M = 3.02),外国語学部(M = 2.94),看護学部(M = 2.96),学部以外(M = 3.11)よりも「学生の主体的活動と評価」の実施状況が低かった。また,薬学部(M = 2.48)は,経営学部(M = 3.02),外国語学部(M = 2.94),学部以外(M = 3.11)よりも「学生の主体的活動と評価」の実施状況が低かった。
学生同士の話し合い 「学生同士の話し合い」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,118)=2.61, p <.05)。多重比較の結果,法学部(M = 2.48)と理工学部(M = 2.71)は,経営学部(M = 3.46),外国語学部(M = 3.13),看護学部(M = 3.27),学部以外(M = 3.52)より,そして,薬学部(M = 2.82)は経営学部(M = 3.46)よりも「学生同士の話し合い」の実施状況が低かった。
学生への資料・課題の提示 「学生への資料・課題の提示」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,118)=2.20, p <.05)。多重比較の結果,理工学部(M = 2.93)は,経営学部(M = 3.43),外国語学部(M = 3.21),看護学部(M = 3.30)よりも「学生への資料・課題の提示」の実施状況が低くかった。また,経営学部(M = 3.43)は,経済学部(M = 2.83)と薬学部(M = 2.92)よりも「学生への資料・課題の提示」の実施状況が高かった。
学生への問題提起 「学生への問題提起」因子に対する分析の結果,学部の主効果は有意ではなかった(F(7,118)=0.82, n.s.)。学部によって「学生への問題提起」の実施状況に差はみられなかった。
全体としては文系と理系においてALの実施状況に差がみられた。教職支援センターやスポーツ振興センターを含む学部以外と語学科目を含む外国語学部において主体的活動と話し合い活動というALの実施状況が高い傾向がみられた。他方,薬学部,理工学部などの理系学部において主体的活動や話し合い活動の実施状況が低い傾向がみられた。これは,理系における基礎科目での知識獲得型の授業においては,「自己評価」や「話し合い」といった活動があまり必要とされていないのかもしれない。これらの結果は,2016年度の実施状況を調べた水野他(2018)とほぼ同様の結果であった。
次に,年度比較を行った結果,「学生の主体的活動と評価」において,2016年度低かった薬学部においては,2017年度に上昇がみられた。また,2016年度既に高かった看護学部,経営学部においては2017年度も高かった。一部の学部ではALの実施率が上昇していた。

キーワード
アクティブ・ラーニング(AL)/大学教育/年度変化


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