発表

2A-081

状況的動機づけとエンゲージメントの関連
動機づけレベルと変動性の交互作用効果

[責任発表者] 梅本 貴豊:1
[連名発表者・登壇者] 稲垣 勉:2
1:京都外国語大学, 2:鹿児島大学

問題と目的
 動機づけは,学習に影響を与える重要な要因であり,これまで多くの研究が行われてきた。そして近年では,特定の学習活動や学習課題におけるより状況的な動機づけについて検討する重要性が高まっている(鹿毛, 2018)。この状況的な動機づけを捉える1つの視点として,岡田他(2013)は,「動機づけの変動性」を提案している。これは,一定期間内における動機づけの変動を表す概念であり,その前提として短期間で変化するような動機づけが仮定されている。動機づけの高さを表す「レベル」とともに,「変動性」を考慮することで,学習プロセスの精緻な検討を行うことができる。
 この動機づけの変動性は,自尊感情の変動性から着想を得たものであり,自尊感情研究ではレベルと変動性の交互作用効果について検討されている(例えば市村, 2012)。一方で,動機づけの変動性に関する研究はまだ少なく,レベルと変動性の交互作用効果については検討されていない。学習プロセスを深く理解するためにも,動機づけを捉える新たな視点である「変動性」が,どのように学習に影響するのかを明らかにする必要があるだろう。
 そこで本研究では,授業中の動機づけの変動性を扱った梅本・稲垣(印刷中)のデータを再分析し,エンゲージメントに対する動機づけレベルと変動性との交互作用効果について検討する。エンゲージメントとは,学習への取り組みのあり方を示す概念であり,学業達成を直接的に規定する重要な要因とされている(鹿毛, 2013)。

方法
 研究手続き 2つの大学の大学生計82名を分析対象とした(A大学22名,B大学60名; 男性36名,女性46名)。
 調査内容 授業での学習に対する状況的動機づけについては,授業中に6時点(開始時,開始20分後,40分後,60分後,80分後,終了時)で測定した(7件法)。岡田他(2013)を参考に,6時点の得点の個人内平均値を動機づけレベル,個人内標準偏差を動機づけの変動性とした。また,授業中の行動的エンゲージメント(4項目),感情的エンゲージメント(5項目)については,梅本他(2016)の項目を用いて授業終了時に測定した(5件法)。

結果と考察
 まず,梅本・稲垣(印刷中)と同様に,各変数を構成した。そして,行動的および感情的エンゲージメントを従属変数とした階層的重回帰分析を行った。ステップ1では,統制変数(大学,自己効力感,内発的価値)を投入した(行動的R2=.272, p<.001; 感情的R2=.518, p<.001)。そして,ステップ2において,動機づけレベル,動機づけの変動性を加えたところ,決定係数の増分は有意であった(行動的ΔR2=.200, p<.001; 感情的ΔR2=.093, p<.001)。最後に,ステップ3において,レベルと変動性の積を加えたところ,行動的エンゲージメントにおいて決定係数の増分は有意であったが(Table 1),感情的エンゲージメントについては有意ではなかった(Table 2)。
 行動的エンゲージメントにおいて交互作用効果が有意であったため,単純傾斜分析を行った。具体的には,動機づけの変動性の得点が平均値±1標準偏差である場合の動機づけレベルにかかる偏回帰係数の値を求めた。その結果,変動が小さい場合には,動機づけレベルによって行動的エンゲージメントは変化せず(b=0.158, SE=0.102, p=.126),変動が大きい場合には,動機づけレベルが高いほど行動的エンゲージメントが高いことが示された(b=0.459, SE=0.133, p<.001)。
 以上より,動機づけの変動が大きい場合でも,動機づけのレベルが高ければ,積極的な学習行動につながることが示された。また,動機づけが安定していれば,動機づけのレベルが比較的低い場合でも,努力して積極的に学習に取り組むことができる可能性が示された。これは,学習への取り組みに対する動機づけの変動性の有用性を示すものである。一方で,こういった効果は感情的エンゲージメントに対しては見られず,変動性は主に行動面に影響する可能性が示唆された。

キーワード
状況的動機づけ/動機づけの変動性/エンゲージメント


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