発表

1D-082

全国学力・学習状況調査における質問紙調査の再分析(11)
―校長および教務主任を対象とした独自学校調査における因子構造の検討―

[責任発表者] 松本 明日香:1
[連名発表者・登壇者] 吉澤 寛之:2, 谷 伊織:3, 杉本 英晴:4, 寺尾 香那子:5, 根津 朋実#:6, 田村 知子#:7
1:愛知淑徳大学, 2:岐阜大学, 3:愛知淑徳大学, 4:駿河台大学, 5:名古屋大学, 6:筑波大学, 7:大阪教育大学

 問題と目的
 文部科学省によって,学校を対象とした質問紙調査が実施されてきたが,活用方法や分析方法の曖昧さ,回答者と項目の対応など,問題点も指摘されている(谷他,2018)。松本他(2018)は,小・中学校の教員を対象とした,調査内容に対応した回答者に回答を求める3種類の質問紙を作成し,担任教師向け質問紙の項目について検討を行った。本研究は,担任以外の校長等管理職と教務主任に対応した質問紙の項目に関して分析を行い,質問紙の信頼性や妥当性を検証する。
 方 法
 調査対象者 文部科学省委託研究「平成28年度学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」の一環で実施した調査において,Z市立および全国から層化抽出された小・中学校の教員を対象とした(小学校:Z市46校,全国166校,n=212。中学校:Z市22校,全国182校,n=204。全体でn=416)。回収率は全体で69.2%であった。
 分析に使用した調査内容 OECD-PISAやTALIS等の国内外の調査項目,カリキュラムマネジメント・チェックリスト(田村,2016)を参考として作成された新たな学校質問紙のうち,校長等管理職および教務主任が回答した以下の項目を分析した。1.全国学力・学習状況調査の扱いに関する14項目,2.学校のビジョンの共有範囲に関する9項目,3.指導計画を作成する際重視する点16項目,4.教職員の協働に関する6項目,5.校長等からみた教職員の様子20項目,6.自己の力量の不十分さに関する18項目(1,3,4は5件法,2,6は4件法,1~5は校長等管理職,6は教務主任が回答)。
 結果と考察
 尺度ごとに探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,信頼性をα係数で検討した。
 1.全国学力・学習状況調査の扱いは,小・中学校とも3因子が抽出された。第1因子は学習指導や指導計画への活用に関する項目の負荷が高く「指導改善への活用」とした。第2因子は,保護者や地域住民への説明および学力向上に対する協力に関する項目の負荷が高く,「保護者等への説明と協力依頼」とした。第3因子は,調査の分析や,学年,学校での共有に関する項目の負荷が高く,「結果の分析・共有」とした。概ね小・中学校で類似性の高い結果を示した(α=.701.~806)。
 2.学校のビジョンの共有範囲では,小・中学校とも2因子が抽出された。第1因子は,地域や保護者など,校外の関係者との共有に関する項目の負荷が高く,「校外の関係者とのビジョンの共有」とした。第2因子は,高次な話し合い活動に関する項目の負荷が高く,「校内でのビジョンの共有」とした。概ね小・中学校で類似性の高い結果を示した(α=.770~.818)。
 3.指導計画を作成する際重視する点では,小学校で3因子が抽出された。第1因子では,PDCAサイクルや言語活動,教科横断的な視点など,学習指導要領で要点とされる事項に関する項目の負荷が高く,「基本的重点課題の重視」とした。第2因子は,教職員の参加など,学校での組織的な展開を重要視する項目の負荷が高く,「組織的な取り組みの重視」とした。第3因子は,学校内外の人的・物的な資源などの条件設備を重視する項目の負荷が高く,「人的・物的資源の重視」とした(α=.767~.819)。中学校では2因子が抽出された。第1因子は,教育内容やPDCAサイクルを重視する項目の負荷が高く,「カリキュラム面の重視」とした。第2因子では人的・物的資源や教職員の参加などを重要視する項目の負荷が高く,「マネジメントの重視」とした(α=.710~.836)。
 4.教職員の協働では,小・中学校とも1因子が抽出された。学校内での課題の共有や教職員同士の組織的な協働に関わる項目の負荷が高く,「教職員の協働」とした(α=.749~.791)。
 5.校長等からみた教職員の様子では,小・中学校ともに3因子が抽出された。第1因子では,教職員間の話し合いや協力に関する項目の負荷が高く,「同僚性」とした。第2因子では,教育課程の実施段階におけるマネジメントに関する項目の負荷が高く,「カリキュラムマネジメントの実践」とした。第3因子では,児童生徒の関係や関心に関する項目の負荷が高く,「児童・生徒志向」とした(α=.770~.818)。
 6.自己の力量の不十分さに関しては,小・中学校ともに内容の異なる4因子が抽出された。小学校の第1因子では,近年重視される教育課題に関する項目の負荷が高く,「新しい教育課題への対応」とした。第2因子では,担当教科や学級経営に関する項目の負荷が高く,「学習指導と生徒指導」とした。第3因子では,学校の運営やマネジメントに関する項目の負荷が高く,「マネジメント」とした。第4因子は,ICT技能に関する項目の負荷が高く,「ICT技能」とした。中学校の第1因子では,教科の指導や知識に関する項目の負荷が高く,「学習指導」とした。第2因子ではマネジメントや,協働学習等の新しい学習方法に関する項目の負荷が高く,「マネジメントと新しい学習指導」とした。第3因子は,特別支援や健康面等に関する項目の負荷が高く,「教育臨床領域の指導」とした。第4因子では,「ICT技能」とした(α=.744~.900)。中学校では教科ごとの指導が重要であり,教科の指導や知識に関して力不足を感じる機会が多く,構造が異なった可能性がある。
 以上より,校長等管理職向けの質問紙では小・中学校間に概ね類似した因子構造が示されたが,教務主任向けの質問紙では大きく異なった。小学校はほぼ学級担任制であるため,学習指導と生徒指導が密接に関連することにより,教科担任制の中学校とは異なる因子構造となった可能性がある。引き続き,本尺度と児童生徒調査との関連を検討することにより,児童生徒に対する影響を詳細に検討でき,実際の教育実践に活用が可能だと考えられる。

キーワード
学力/学習状況/質問紙調査


詳細検索