発表

1D-080

全国学力・学習状況調査における質問紙調査の再分析(9)
―平成28年度学校質問紙データ(中学校)を用いた因子構造と学力との関連の検討―

[責任発表者] 吉澤 寛之:1
[連名発表者・登壇者] 谷 伊織:2, 杉本 英晴:3, 松本 明日香:2, 寺尾 香那子:4, 田村 知子#:5
1:岐阜大学, 2:愛知淑徳大学, 3:駿河台大学, 4:名古屋大学, 5:大阪教育大学

問題と目的 文部科学省により実施されている全国学力・学習状況調査は,当初より学力調査に加えて,学校や児童生徒を対象とした質問紙調査を実施しており,児童生徒の学力や学習状況の把握,教育改善の方針検討等に役立ってきたと考えられる。一方で,結果の報告が回答割合の記述や各項目と学力のクロス集計にとどまっているため,学力の予測要因をより詳細に検討することが求められる。
 そこで,本研究では学校管理職(主に校長)を対象とした平成28年度学校質問紙データ(中学校)の因子構造を確認し,見出された因子と学力との関連を重回帰分析により検討することを目的とする。その際,小学校データを対象に同じ検討を行った吉澤他(2018)との比較検証をする。

方 法対象者 本研究では,中学校の校長など管理職を対象とした学校質問紙の分析を行い,新しい分析手法の試みとその提案を行うことを目指す。平成28年度の全国学力・学習状況調査における中学校学校質問紙の対象校数は10,152校であった。
測定内容 平成28年度学校質問紙は114項目から構成されており,平成28年度全国学力・学習状況調査の『報告書』において,その領域は「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善の取組状況」,「学習評価の在り方」,「カリキュラム・マネジメント」,「教職員の資質能力の向上」,「小中連携」,「ユニバーサルデザイン,規範意識,道徳の時間」,「指導方法」,「学力向上に向けた取組」,「国語科の指導方法」,「数学科の指導方法」,「習熟度別少人数指導」,「ティームティーチング」,「コンピュータなどを活用した教育」,「家庭学習」,「教職員の取組」,「地域の人材・施設の活用」,「全国学力・学習状況調査等の活用」,「就学援助」の18領域に分類されていた。各項目は,特殊な回答方法を除き,ほとんどが4件法で測定された。また,学力調査について,国語A・B,数学A・Bの2教科四つの調査を実施した。国語・数学について,A問題については主に知識,B問題については主に活用についての問いから構成されていた。国語Aは33問,国語Bは9問,数学Aは36問,数学Bは15問であった。

結果と考察 各項目の基礎的検討のため,記述統計量,各項目と学力調査の正答率との間の相関分析を実施し,その後,最尤法・プロマックス回転による探索的因子分析を実施した。ガットマン基準及び解釈可能性の観点から因子数を決定し,因子負荷量が.25に満たない項目は下位因子から除外した。分析の結果,小学校13因子に対して,中学校は12因子となり,若干異なる因子構造となった。
 第1因子は,小学校の第2因子「組織的取組,校内研修」と全く同じ項目群から構成されていたため,同様に「組織的取組,校内研修」とした。第2因子の項目は全て小学校の第1因子「主体的・対話的で深い学びの視点による授業改善」に含まれていたため,同様に「主体的・対話的で深い学びの視点による授業改善」とした。第3因子は,小学校の第3因子「前向きな児童の様子」の項目が全て含まれていたため,「前向きな生徒の様子」と命名した。第4因子は,小学校の第6因子「国語と算数の指導」とほぼ同じ項目群から構成されたため「国語と数学の指導」とした。第5因子は宿題・予習・復習などの家庭学習に関わる項目群から構成されたため「国語と数学の家庭学習の指導」と命名した。小学校の場合は,家庭学習に関わる項目が第11因子「国語と算数の家庭学習」と第12因子「国語と算数の家庭学習の徹底指導」に分かれていたので,若干異なる構造となった。第6因子は小学校の第4因子と同じ項目群から構成されたため,同様に「小中連携」とした。第7因子は小学校の第7因子と同様の項目群から構成されたため,同様に「全国学力・学習状況調査の活用」とした。第8因子は,小学校の第5因子と同様の項目群から構成されたため,同様に「カリキュラム・マネジメント」とした。第9因子は,小学校の第9因子と同じ項目群から構成されたため,同様に「地域との連携・協働」とした。第10因子は,小学校の第13因子と共通性が高い。共通点は,どちらも「ねらい・めあて」の指示に関わる点である。小学校はこれに学習規律の項目が加わり,中学校は「振り返り」が加わる。いずれにせよ,課題解決的な学習の前提となる授業過程の形や基盤に関する点で共通するため小学校と同様に「課題解決的な学習の基盤づくり」とした。第11因子は,小学校の第10因子「算数の習熟度別授業」と同様の項目から構成されるため,「数学の習熟度別授業」とした。第12因子は,小学校の第8因子と同様の項目から構成されるため,同様に「コンピュータを活用した授業」とした。小学校と同様に,分析の結果からは,『報告書』に示された領域とは異なる構造が見出された。
 上記の探索的因子分析によって見出された各因子を説明変数,学力(国語A,国語B,数学A,数学B)を従属変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。いずれの学力に対しても,全因子からの説明力は小学校よりも高く(R2 = .15~.19),小学校と同様に「前向きな生徒の様子」の説明力が比較的高い値を示した(β = -.37~-.43)。本分析から,授業改善を含め,学校要因の直接効果は弱いことから,今後は間接効果や児童生徒の個人差変動効果を考慮したさらなる追加分析が求められる。

付 記 本発表は文部科学省委託研究「平成28年度学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」の一部である。

キーワード
学力/学習状況/質問紙調査


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