発表

1D-079

全国学力・学習状況調査における質問紙調査の再分析(8)
―平成28年度生徒質問紙データを用いた因子構造と学力との関連の検討―

[責任発表者] 寺尾 香那子:1
[連名発表者・登壇者] 吉澤 寛之:2, 谷 伊織:3, 杉本 英晴:4, 松本 明日香:5, 田村 知子#:6
1:名古屋大学, 2:岐阜大学, 3:愛知淑徳大学, 4:駿河台大学, 5:愛知淑徳大学, 6:大阪教育大学

問題と目的
 文部科学省により実施されている全国学力・学習状況調査は,当初より学力調査に加えて,児童生徒を対象とした質問紙調査を実施し,学力や学習状況の把握,教育改善の方針検討等に役立ってきたと考えられる。一方で,結果の報告が回答割合の記述や各項目と学力のクロス集計にとどまっており,学力の予測要因をより詳細に検討することが望まれる。
 そこで,本研究では中学生を対象としたH28年度調査データの因子構造を確認し,見出された因子と学力との関連を重回帰分析により検討することを目的とする。

方 法
対象者
 本研究では,中学3年生を対象とした生徒調査の分析を行った。平成28年度の全国学力・学習状況調査における中学3年生の対象者は1,044,797名であった。なお,本発表は文部科学省委託研究「平成28年度学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」の一部である。
測定内容
 平成28年度全国学力・学習状況調査における生徒調査は85項目から構成され,その領域は「学習に対する関心・意欲・態度」,「学習状況(言語活動)」,「基本的生活習慣」,「自尊意識」等の15領域に分類されていた。分析に使用した項目は4件法(1.当てはまる~4.当てはまらない)で測定された。また,学力調査について,国語A・B,数学A・Bの2教科4つの調査を実施した。国語・数学について,A問題については主に知識,B問題については主に活用についての問いから構成されていた。

結 果
 各項目の基礎的検討のため,記述統計量,各項目と学力調査の正答率との間の相関分析を実施し,その後,最尤法・プロマックス回転による探索的因子分析を実施した。生徒調査においては,ガットマン基準及び解釈可能性の観点から因子数を決定し,因子負荷量が.25に満たない項目は下位因子から除外した。その結果,11因子が抽出された。探索的因子分析によって見出された各因子を説明変数,学力(国語A,国語B,数学A,数学B)を従属変数とした重回帰分析を行った。
 分析の結果,国語Aに対しては,「国語への関心・意欲・態度」,「読書習慣」,「基本的生活習慣」,「記述問題への取り組み方」の4因子から有意な影響がみられた(国語への関心・意欲・態度 β=-.14;読書習慣 β=-.11;基本的生活習慣 β=-.10;記述問題への取り組み方 β=-.36;ps<.001)。国語Bに対しては,「国語への関心・意欲・態度」,「読書習慣」,「記述問題への取り組み方」の3因子から有意な影響がみられた(国語への関心・意欲・態度 β=-.11;読書習慣 β=-.11;記述問題への取り組み方 β=-.39;ps<.001)。一方で,「規範・自尊感情」について,負の影響がみられた(国語A:β=.14;p<.001;国語B:β=.13;p<.001)。
 数学A・Bに対しては,「数学への関心・意欲・態度」と「記述問題への取り組み方」が比較的強い正の影響をもち,また「基本的生活習慣」についても比較的弱い説明力がみられた(数学A:数学への関心・意欲・態度 β=-.30;記述問題への取り組み方 β=-.39;基本的生活習慣 β=-.13;数学B:数学への関心・意欲・態度 β=-.26;記述問題への取り組み方 β=-.41;基本的生活習慣 β=-.11;ps<.001)。一方で,「規範・自尊感情」について負の影響がみられた(数学A:β=.14;数学B:β=.15;ps<.001)。

考 察
 国語・数学共に「関心・意欲・態度」から正の影響がみられたことについて,動機づけ的側面の重要性が示されたといえる。本調査における「関心・意欲・態度」の項目内容は動機づけの異なる側面を併せて因子化したものであることから,今後は構成概念ごとの検討が必要だろう。また,「記述問題への取り組み方」について,この因子の項目は各学力調査で最後まで記述問題の解答を書こうとしたかを問う項目であったため,実際にテストに取り組んだという行動が学力に影響していると推測される。この点について,例えばグリット(竹橋・樋口・尾崎・渡辺・豊沢,2019)といった粘り強さなどとの関連が考えられる。「基本的生活習慣」と各学力との間に関連がみられた点について,セルフコントロールと学習時間との間に関連がみられていることから(尾崎・後藤・小林・沓澤,2016),基本的な生活習慣の背後には自己制御や満足遅延の程度があると予測される。
 「規範・自尊感情」と各学力との間に関連がみられたことについて,本調査の対象者は中学3年生であることから,受験や進路などに焦点化している時期であり,その結果グリットやセルフコントロールが統制されたことで残った学校生活における楽しさなどの項目と負の関連がみられたのではないかと考えられる。
 国語AとBにおいては,「読書習慣」から正の影響がみられた点について様々な文章に触れ,読書時間を多くとることが読解力の向上につながり,国語学力が向上した可能性が考えられる。

キーワード
学力/学習状況/質問紙調査


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