発表

1D-077

批判的思考態度とメディアリテラシーの関連性の検討
保健医療学部・看護学部の初年次生を対象とした調査

[責任発表者] 時田 みどり:1
[連名発表者・登壇者] 安井 宏#:1, 佐藤 佐和子#:1
1:目白大学

 目 的
21世紀型スキルの育成において,汎用性の高いメディアリテラシー教育の重要性が指摘されている.医療技術の進歩や社会環境の変動が目覚しい中,健康教育や看護及びリハビリテーションの担い手となる学生の教育課程においてもまた,基礎教育の段階から,充実したメディアリテラシー教育が求められる.メディアリテラシーを高めるにはどのような教育が適切か,また,その教育効果をどのように測定すべきかの検討が必要となっている.本研究では,医療従事者を目指す学生における批判的思考態度とメディアリテラシーとの関連について検討する.両者の関連性ついては,これまでも様々な研究が行われてきたが,メディアリテラシーについての定義が曖昧であり,また内容について系統的な吟味がなされていない等の問題が指摘される.これらの点について,小寺(2017)は,教育効果の確認を可能とする汎用性の高いメディアリテラシー測定尺度の作成を試みた.本研究では,小寺の尺度を用いて検討を行った.
 方 法
対象者 保健医療学部及び看護学部の初年次生255名を対象として質問紙調査を行なった.2018年12月に集団で実施した.
質問項目 (a)批判的思考態度項目(33項目)平山・楠見(2004)が尺度化した33項目を用いた.本尺度は,[理論的思考の自覚,10項目][探究心,10項目][客観性,10項目][証拠の重視,3項目]の4つの下位尺度で構成される.各質問項目について,自分の考えや姿勢にどのくらい当てはまると思うか,5件法(1:そう思わない-5:そう思う)で回答を求めた.(b)メディアリテラシー項目(18項目) 小寺(2017)が尺度化した18項目を用いた.下位尺度(各3項目)は,A)メディアメッセージの構成性の理解について[情報の構成],B)メディアによる「社会的現実」の構成力について[現実構成力],C)メディアの商業的性質について[商業的性質],D)メディアのイデオロギー・価値観伝達力について[価値観伝達力],E)メディアの様式と言語[恣意的印象操作],F)受け手の解釈の非画一性について[非画一的解釈性]の6つである.(a)と同様に,自分にどれくらい当てはまると思うか,5件法で評定を求めた.

 結果と考察
 批判的思考態度項目の4つの下位尺度得点と,メディアリテラシー項目の6つの下位尺度得点を算出した.表1に,メディアリテラシーの下位尺度得点間の相関を示す.4つの批判的思考態度下位尺度を変数として,各リテラシー下位尺度に及ぼす効果を検討することを目的として,重回帰分析を行なった.標準偏相関係数をパス係数として,パス図を作成した(図1).批判的思考態度尺度の[客観性]は,メディアリテラシー項目の下位尺度との関連が低いので除いた.また,メディアリテラシー項目の下位尺度,[情報の構成][現実構成力][非画一的解釈性]については,批判的思考態度からの影響は示されなかったので除いた.[探究心]と[証拠の重視]態度は,メデイアリテラシーの[商業的性質]と[恣意的印象操作]に影響を及ぼしていた.[探究心]態度は,メディアリテラシーの[価値観伝達力]に影響を及ぼした.[論理的思考の自覚]は,僅かだが,[恣意的印象操作]と負の関連を示した.
 結果から,メディアリテラシーの一部の項目について,探究的な態度や証拠を重視する態度の育成の重要性が示唆された.また,論理的思考の自覚や客観的な態度は,メディアリテラシーとの関連性の低いことが示された.メディアリテラシー教育には,「自ら調べる」,「証拠を吟味する」といった具体的な行動の促しが重要であることが示唆された.
  引用文献
小寺敦之(2017).メディアリテラシー測定尺度の作成に関する研究,東京英和女学院大学, 人文・社会科学論集, 34, 89-106.
楠見孝・松田憲(2007). 批判的思考態度が支えるメディアリテラシーの構造.日本心理学会第70回大会発表論文集,858.
平山るみ・楠見孝(2004).批判的思考態度が結論算出プロセスに及ぼす影響.教育心理学研究,52, 186-197.

キーワード
批判的思考態度/メディアリテラシー/基礎教育


詳細検索