発表

1D-075

ポジティブな強みを活かした防災教育の実践(2)
大学生の協働による新しい防災訓練の提案

[責任発表者] 豊沢 純子:1
[連名発表者・登壇者] 竹橋 洋毅:2, 島井 哲志:3
1:大阪教育大学, 2:奈良女子大学, 3:関西福祉科学大学

 問題と目的
 自然災害の多い我が国においては,これまで,自助や共助の促進を目的とした様々な防災教育が行われてきた。その際,災害がもたらすネガティブな側面に注目させ,被害を抑制するように動機づけることが多かったように思われる。このような教育は対策の重要性を理解することには有効であるが,実際に行動を促して習慣にすることは難しい。ネガティブなことを考え続けることには苦痛が伴うことから,実際の行動を後押しするためには更なる工夫が必要になる。一方,ポジティブ心理学は人が持つポジティブな強みに注目し,それを育み人生の重要な局面で活かすためのアイディアを提供する。ポジティブな介入は視野を広げ,思考を柔軟にし,他者との相互作用を活性化することで,未来に向けたリソースの形成に役立つとされる。本研究はこの考えを防災教育に導入し,自助だけでなく共助にも役立つ可能性を検討した。具体的には,学生が徳性としての強み(Peterson & Seligman, 2004)の概念を理解した後,自分の強みの診断を行い,グループの中で自他の強みを共有した上で,各自の強みを活かして共助(大学での防災訓練)のためのアイディアを話し合う授業を行った。そして,今後の自助や共助の意図が高くなるか,さらにこれらの意図が授業内容のどの要素によって規定されうるのかについても探索的に検討した。

 方法
 参加者:大学3年生25名。
 手続き:事前に,大学の防災訓練に参加して問題点を抽出することを求めた。その後,別日に以下の流れで90分の授業を1回行った。(1)ポジティブ心理学の概要,(2)徳性としての強みの理解,(3)自分の強みの診断,(4)グループでの自他の強みの共有,(5)強みカルタの実施(強みの概念の理解深化),(6)新しい防災訓練の提案(各自で検討した後にグループ討論),(7)学習後調査(7項目)。
 調査項目:強みの理解,強みの活用意図,自助・共助の意図など7項目(Table1を参照)に5件法(1:全くそう思わない-5:とてもそう思う)で回答を求めた。

 結果
 記述統計値:調査項目の記述統計値をTable1に示す。尺度中点との比較では,いずれも有意に高かった(ts (24) = 5.77~16.74, ps < .001)。
 自助・共助の意図の規定因:自助・共助の意図を従属変数,他の調査項目を独立変数とした重回帰分析の結果をTable2に示す。自助の意図は,自分の強みの活用意図との関係が有意であった。一方,共助の意図は,自分に不足する強みの自覚との関係が最も強く,自分の強みの活用意図との関係も有意であった。

 考察
 本研究は自他の強みの理解とその活用を考える防災教育を行い,今後の防災における自助と共助の意図が高くなる可能性を検討した。その結果,尺度中点との比較ではいずれも有意に高く,本実践によって自他の強みの理解と今後の防災意図が促された可能性が示唆された。
 重回帰分析の結果からは,自分の強みを理解するだけでなく,強みを活用する意図を高くすることが,今後の自助・共助意図の形成に役立つ可能性が示唆された。また共助の意図を高くするためには,自分に不足する強みを自覚することが有効である可能性が示唆された。
 本実践は強みの自己診断や強みカルタの実施を通して,強みの概念の理解深化を図ったが,強みの活用方法を丁寧に説明することはしなかった。上記の結果に基づくと,防災における強みの活用事例を示すことや,自分に不足する強みを補う他者の存在を意識することが更なる効果をもたらす可能性がある。今後,調査項目の精緻化,統制条件の設定,長期的な効果の測定等と併せて更なる検討が必要である。

 本研究はJSPS科研費JP19K03230の助成を受けた。

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