発表

1D-074

グリットを支える成長マインドセットとは何か?
知能、人格、グリットの生得性信念に焦点を当てた検討

[責任発表者] 竹橋 洋毅:1
[連名発表者・登壇者] 豊沢 純子:2
1:奈良女子大学, 2:大阪教育大学

問題と目的
 グリットは重要目標への粘り強さについての特性であり,興味の一貫性と努力の粘り強さという2因子からなる。グリットは,長期目標の成否をよく予測・説明することが示唆されてる(Duckworthら, 2007; 竹橋ら, 2018)。近年,教育において知能や学力などの認知的特性だけでなく,グリットや自制心などの非認知的特性の重要性が指摘され,わが国の新学習指導要領においても非認知能力育成の観点が導入されることになった。
 しかしながら,グリットの育成法については殆ど明らかにされていない。現在,グリットの先行要因として注目されているのが知能のマインドセットである(Eskreis-Winklerら, 2016)。知能を生得的でなく成長可能とする信念(マインドセット)をもつ人ほどグリットが高い。ただし,近年のマインドセット研究では知能だけでなく,様々な特性(e.g., 人格)についても同様の検討がなされるようになった。それら(e.g., Schroderら, 2015)によれば,どのような現象を説明対象(e.g., 勉強,健康)とするかによって,どのような特性のマインドセットが有効になるかが異なる。
 以上に基づき,本研究ではグリットを支えるマインドセットを探索することを目的とする。わが国には「努力の天才」や「努力の才能」という表現があるように,グリット自体の生得性についても暗黙の認知が働き,それが目標への粘り強さに影響している可能性がある。従来のマインドセット研究では「知能」と「人格」という特性が注目されてきたが,本研究ではそれらに加え,グリットの下位因子である「興味」と「努力」という特性についてのマインドセットを測定し,グリットとの関連を検討する。

方法
調査対象 就労者2,064名(20-59歳の男女)
調査内容 インターネット調査への協力者に以下を尋ねた。
 グリット:日本語版グリット尺度(竹橋ら, 2018)を用いた。本尺度は重要目標への粘り強さを5件法で測定し,努力の粘り強さ因子と興味の一貫性因子(逆転)からなる。尺度得点が高いほどグリットが高くなるように点数化した。
 マインドセット:次の3つの特性についてどれほど生得的だと思うかについて6件法で測定した(高得点ほど固定的マインドセット,低得点ほど成長マインドセット)。①知能のマインドセットについては及川(2005)の尺度を用いた。項目は「私の中で,才能はほとんど変えることのできないものだと思う」などの3項目だった。②人格のマインドセットについてはChuiら(1997)の尺度を翻訳したものを用いた。項目は「その人らしさは根本的なもので,大きく変えることはできない」などの3項目であった。③グリットのマインドセットについては知能観尺度を参考として,努力の粘り強さと興味の一貫性の生得性信念について3項目ずつ,合計6項目のオリジナル尺度を作成した。前者の項目は「短期的にやる気を出すことはできても,根本的な粘り強さは変えられない」,後者の項目は「短期的に一つのことにのめり込むことはあっても,長期的に興味をもち続けられるかどうかは変えられない」などであった。

結果
マインドセット項目の因子分析 最尤法,プロマックス回転による探索的因子分析を行い,固有値1以上の基準から3因子が抽出された。項目内容から,因子1はグリットのマインドセット,因子2は人格のマインドセット,因子3は知能のマインドセットとして解釈された。各因子に含まれる項目の得点を平均することで,尺度得点を算出した。
グリット得点を従属変数とする回帰分析 グリット得点を従属変数,3種類のマインドセット得点,性別,年齢を独立変数とする強制投入法による回帰分析を行った(表1)。その結果,グリットのマインドセットの効果が有意で(β=-.19, p<.01),努力や興味の特性が努力によって向上できると信じる人ほどグリットが高かった。一方で,知能や人格のマインドセットの効果はみられなかった。

考察
 本研究の結果から,1)人は知能,人格,グリットの生得性について異なる認知をもつ,2)グリットと関連するのはグリット(興味と努力)のマインドセットのみで,知能や人格のマインドセットは関連しないことが示唆された。これまでグリットの先行要因としては「知能」のマインドセットが注目されてきたが,一つの目標に興味を向けて努力し続けるという「努力の資質・能力(グリット)」が成長可能であるという信念を形成することが重要かもしれない。

キーワード
グリット/マインドセット/モチベーション


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