発表

1C-078

国語の記述式問題における評価基準の検討
―評価基準の段階数に着目して―

[責任発表者] 安永 和央:1
[連名発表者・登壇者] 野口 裕之#:2
1:九州大学, 2:名古屋大学

 目 的
 多枝選択式問題は記述式問題に比べて,回答の正誤を客観的に評価することが可能であるため,採点に必要な評価基準が問題になることは少ないと考えられる。一方,記述式問題においては,受験者が回答を自ら作成することから,回答が多種多様となる。そのため,評価基準の設定が,採点結果等に影響を及ぼすことが予想される。したがって,記述式問題そのものが,測定したい能力を測定できるものであったとしても,その評価基準が適切なものでなければ,受験者の能力を正確に評価できないこととなる。しかしながら,わが国においては,記述式問題における評価基準に関する研究が少ないのが現状である。
 これを踏まえ,本研究では国語の記述式問題を用いて,評価基準の設定の仕方に着目した検討を行う。具体的には,正答,誤答,無回答から構成される評価基準とこれらに準正答となる基準を加えた評価基準を設定し,これらの評価基準の違いが記述式問題の結果に及ぼす影響について検討する。
 方 法
国語テスト 大学入学者選抜試験の問題を基に作成された国語テスト(記述式7問,選択式6問,合計14問)を実施した。本研究で検討した設問は,設問1:人間の社会とゴリラの社会にどのような共通点があるかを説明する問題,設問2:人間の社会とゴリラの社会にどのような相違点があるかを説明する問題であり,両設問とも回答に字数制限のない問題であった。
実施 高校2年生を対象に,2018年3月に実施した。設問1は147名,設問2は145名が受験した。
評価基準 2種類の評価基準(A,B)を設定した。評価基準Aは,類型1:「正答」(1点),類型9:「その他の回答(誤答)」(0点),類型0:「無回答」(0点)を設定した。評価基準Bは,評価基準Aの類型に類型2と類型3:「準正答」(0.5点)を加えたものである。両設問とも,正答するためには2つの内容に着目した回答を記述することが求められる。2つの内容のうちの1つしか記述されていない場合には,類型2か類型3:「準正答」に分類される。
分析 項目分析の手法を用いて得点率及び識別力,解答類型分類率を算出した。
 結 果
 まず,設問1の評価基準Aでは,受験生の回答は類型1に73.5%,類型9に25.9%,類型0に0.7%が分類され,得点率は.735 (SD = .443),識別力(I-T相関)の値は.121 (95%CI [-.041, .278])であった。一方,設問1の評価基準Bでは,類型1に73.5%,類型2に1.4%,類型3に18.4%,類型9に6.1%,類型0に0.7%が分類され,得点率は.833 (SD = .300),識別力の値は.065 (95%CI [-.098, .225])であった。
 次に,設問2の評価基準Aでは,受験生の回答は類型1に8.3%,類型9に90.3%,類型0に1.4%が分類され,得点率は.083 (SD = .276),識別力の値は.059 (95%CI [-.105, .220])であった。他方,設問2の評価基準Bでは,類型1に8.3%,類型2に3.4%,類型3に66.9%,類型9に20%,類型0に1.4%が分類され,得点率は.434 (SD = .265),識別力の値は.209 (95%CI [.047, .359])であった。
 考 察
 設問1の評価基準Aでは,約26%の回答が類型9:「その他の回答(誤答)」に分類された。他方,評価基準Bでは,約18%の回答が,類型3:「準正答」に分類されていた。この結果から,評価基準Aでは誤答に分類されていた多くの回答が,正答の内容の半分に言及できているということを把握することができた。
 設問2の評価基準Aでは,約90%の回答が類型9:「その他の回答(誤答)」に分類され,類型1:「正答」に分類される回答が少ないことから,得点率が低くなっていた。それに対して,評価基準Bでは,評価基準Aで誤答に分類された回答の約67%が類型3:「準正答」に分類された。このことから,半数以上の受験者が,実際には正答の半分の内容は記述できているということがわかった。
 また,設問1と設問2ともに,準正答には部分点として0.5点が配点されていることから,評価基準Bの方が,得点率が高くなった。設問2においては,評価基準Bの方が,識別力の値が高くなった。
 以上から,誤答をまとめて評価するよりも,回答を段階的に評価することで,正答の回答と比べてどのような記述が足りないかを把握することができ,設問2においては識別力が高くなることが示唆された。

キーワード
国語テスト/記述式問題/評価基準


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