発表

1C-076

保育学生の身振り表現
縦断的検討

[責任発表者] 大神 優子:1
1:和洋女子大学

 【問題及び目的】
 保育者を目指す学生(以下,保育学生)は,在学中に複数の実習を経験する.これらの実習を通して,ピアノや絵本の読み聞かせ等の保育技術だけではなく,保育室内外の保育環境に関する認識1)や,子どもとのかかわり方2)も変化していく.保育学生自身の報告によると,子どもへの説明の仕方は,責任実習(一部の保育活動だけではなく,1日を保育者として担当する実習)を経験することで変化するという2).ただし,これらの報告は自覚できる部分に限られており,振り返りという手法の限界もある.
 本研究では,保育学生の入学後から最終実習終了までの縦断面接調査を行い,保育学生の説明の変化について,身振り表現の観点から検討した.
 【方法】
対象
 4年制女子大学の保育者養成課程に所属する学生51人(1年次調査時).原則として,全員が幼稚園教諭免許・保育士資格の両方の取得を目指し,4年間で幼稚園・保育所等で計5回(各2週間)の実習を行う.1年次(実習未経験)・3年次(見学実習×3終了)・4年次(責任実習×2終了)の3時点で面接調査を行った.全5回の実習を終了し,全ての面接調査に参加したのは31人であった(追跡率60.1%).
課題及び手続き
 個別面接内の複数の課題の一部として,「はさみ」への言及を含む説明課題を実施した.保育者の助言を得て,日常的にみられる説明場面として,3歳児クラスの担任としてはさみを保育に取り入れる状況を設定した.いずれも仮想場面であるが,子ども集団向け説明では,「自分のはさみをもってくるところから,実際に切り始める前まで」持ち方を含めて説明するよう求めた.大人(保護者)集団向け説明では,同じ状況で,はさみを上手く持てない子がいるため,家庭でも持ち方に気をつけてほしいことを保護者会で説明するよう求めた.説明時の様子は,正面からビデオカメラで撮影した.各調査時点で,対象者から書面で調査・分析に関する許可を得た.
分析
 映像に基づき,説明時の発話を全て書き起こした.さらに,子ども/大人(保護者)向けの各説明内で,はさみがどのように身振りで表現されたかに基づいて,説明ごとに以下の4パターンに分類した:形の模倣(チョキの形で手ではさみを表現)/操作の模倣(手の平の空間内にはさみを保持して動かしたり形をなぞったりし,手は手として使用)/混合(形・操作両方あり)/身振り表現なし.

 【結果及び考察】
 実習経験がない1年次と,全ての実習を終了した4年次の説明を比較した.各学年の説明の例を表に示した.
 説明中の身振り表現について,まず,身振り表現あり(形・操作・混合)/身振り表現なしに大別したところ,大人(保護者)向け説明のみで,1年次から4年次にかけて,身振り表現ありの割合が増加していた(マクネマー検定, p<.05).内訳を下図に示した.子ども向け説明では1年次からほぼ全ての保育学生が身振りを用いていた.なお,子ども向けの説明時には,はさみの実物を用いて子どもに示すつもりで説明を行った学生が多く,このことが操作表現の多さにつながったと考えられる.また,4年次では,子どもからの見えやすさ(向き・速さ)への言及がみられた.
 今後,本研究で用いた分類パターン以外での検討が必要であると考える.

文献
1)大神優子 2017 保育環境知識に関する語想起課題の検討(3)-実習段階の比較- 和洋女子大学紀要,57,75-85.
2)大神優子 2019 保育実習生の子どもとの関わり- 集団及び個人への対応の変化- 和洋女子大学紀要,60,13-22.
謝辞
本研究の一部は,科研費(基盤研究C)(課題番号26380901:幼児向け説明方略の熟達過程と身振りの変化―保育実習生の縦断研究―)の助成を受けた.

キーワード
保育学生/縦断研究/身振り


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