発表

1C-074

学校での強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす影響

[責任発表者] 阿部 望:1,2
[連名発表者・登壇者] 岸田 広平:1,2, 石川 信一:3
1:同志社大学, 2:日本学術振興会特別研究員, 3:同志社大学

目 的
 強み介入とは,ポジティブ心理学的介入の1つであり,自己の強みを特定したり活用・育成したりする介入のことである (Ghielen et al., 2017)。これまで,大人を対象とした研究を中心に,強み介入が幸福感の向上や抑うつ症状の低減に対して有効であることが報告されてきた (Seligman et al., 2005)。また,近年,学校で子どもを対象とした強み介入も実施されるようになってきた。しかし,子どもを対象とした研究では,子どもの幸福感 (生活満足度) の向上に対する効果は示されているものの (Proctor et al., 2011),強み介入が子どもの幸福感だけでなく抑うつ症状に対しても有効であるのかについては十分明らかにされていない。精神的健康は,幸福感と精神症状 (抑うつ等) の両者を用いて包括的に捉える必要があることが指摘されている (Suldo & Shaffer, 2008)。これを踏まえ,本研究では,生活満足度 (幸福感) と抑うつ症状 (精神症状) の両指標を用いて,強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす影響について検討することを目的とした。

方 法
 対象者 公立中学校の3年生87名 (平均年齢14.64歳,標準偏差0.48,男子43名,女子44名) を対象とした。
 調査材料 1. 日本語版SLSS (吉武,2010):生活満足度に関する7項目の尺度である。6件法で回答を求めた。2. 自己記入式抑うつ評価尺度 (DSRS-C) 短縮版 (並川他,2011):抑うつ症状に関する9項目の尺度である。3件法で回答を求めた。3. 児童用強み認識尺度 (小國・大竹,2017) :強みの認識に関する8項目の尺度である。5件法で回答を求めた。4. 児童用強み活用感尺度 (小國・大竹,2017) :強みの活用感に関する14項目の尺度である。5件法で回答を求めた。
 強み介入の手続き 授業は全2回 (月1回/約50分) で構成されており,指導案に沿って各クラスの担任教師が実施した。第1回の授業では,24個の強み (Character Strengths) についての説明と,担任の先生やクラスメイトの強みをみつける活動を行った。そして,友達や家族の強みをみつけるホームワークを実施した。第2回の授業では,第1回の授業でクラスメイトに指摘された強みや強みのアンケート (CST24; 島井,2018) の結果を参考に,自分の強みを3つ選び,それぞれの強みの活用方法について考える活動を行った。そして,実際に授業で考えた方法で強みを活用するホームワークを実施した。
 倫理的配慮 本研究は同志社大学「人を対象とする研究」に関する倫理審査委員会の審査・承認 (申請番号18054) を得ており,中学校の学校長の許可を得た上で実施された。

結 果
 3年生87名を分析対象とし,精神的健康 (生活満足度,抑うつ症状) と強みに関する変数 (強みの認識,強みの活用感) に対する介入効果について,混合効果モデルを用いて検討を行った (Table 1)。なお,固定効果として,時期の効果 (介入前,介入後,介入1ヶ月後) を,変量効果として対象者の効果をモデルに加えた。分析の結果,生活満足度の時期の主効果が有意であり (p < .05),介入前よりも介入後,介入1ヶ月後の得点が有意に高いことが示された。また,抑うつの時期の主効果も有意傾向であり (p < .10),介入前よりも介入後,介入1ヶ月後の得点が有意に低い傾向にあることが示された。続いて,強みに関する変数についても分析を行った結果,強みの認識の時期の主効果が有意であり (p < .01),介入前よりも介入後,介入1ヶ月後の得点が有意に高いことが示された。また,強みの活用感の時期の主効果も有意であり (p < .05),介入前よりも介入1ヶ月後の得点が有意に高いことが示された。

考 察
 本研究の結果,先行研究と同様に強み介入が中学生の生活満足度 (幸福感) の向上に対して有効である可能性が示された。また,有意傾向であるため今後さらなる検討が必要であるものの,強み介入が子どもの抑うつ症状に対しても効果的である可能性が示された。さらに,介入によって中学生の自己の強みの認識や活用感が向上することが示された。本研究の強み介入は全2回で構成されており,これまで実施されてきた学校での強み介入 (例えば,Proctor et al., 2011) と比較すると短期的な介入であった。本邦において学校で長期的な介入を実施することは困難であることから,2回の短期的な強み介入であっても子どもの精神的健康や強みの認識が向上するといった本研究の知見は意義があるだろう。今後は,統制群と比較し,強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす影響について更なる検討を行っていく必要がある。

キーワード
強み介入/精神的健康/子ども


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