発表

1C-071

一人TT方式による教育心理学の授業実践と評価
: 一人TT方式の授業に適したビデオ教材の開発

[責任発表者] 小川 亮:1
1:富山大学

目 的
 授業場面において教師は,授業全体の流れ,教授活動,学習者の行動・認知・理解状態の観察評価,教室環境の変化などの課題を,同時並行処理している.よって,授業内容に集中しすぎると学習者の状況に認知的リソースを割くことが難しくなり,逆に個々の学習者の状況に関わろうとすると,授業全体の制御が難しくなるという問題が発生する.特に,情報機器を利用した演習を伴う授業では,PCの操作方法等の指導も重なるため,個々の学生の作業進行状況ならびに受講者の理解状況が捉えづらく,授業を適切な速度で進めたり, 説明を補足したりすることを難しくしている.
 小川(2018a)は,このような状況を改善する方策として,「一人TT方式」による授業を提案した.本研究では,学部学生を対象とした教育心理学の教材を開発し評価した.ここで「一人TT方式」とは,自分が作成した教材解説ビデオを流しそれに自分で解説を加える形で授業を進める授業実践である.小川(2018b)は,一人TT方式による心理学教育の実践評価を行い,授業用ビデオ教材の作成には,授業解説ビデオをとは異なる特徴が必要であることが示された.
 本研究では,教育心理学の授業において一人TT教材を用いた教育実践を行った結果から,効果的な一人TT方式の教材の作成方法を検討する.

方 法
[参加者] A大学B学部の教育心理学の受講生.
[授業者・教材開発者] A大学B学部の教授1名.
[授業計画] 以下のような授業計画に基づいて教材を開発した.
 (01) 教育心理学とは何か 授業の進め方(授業構成と評価)
 (02) 教育心理学への様々なアプローチ
 (03) 認知発達と,知識の獲得
 (04) 子どもの学習と熟達の要因
 (05) 学習者の動機づけ
 (06) 学習の転移
 (07) メタ認知の発達と「生きる力」
 (08) 個人差(適性)と指導方法の関係
 (09) 学習者の運動,言語,認知,社会性の発達と障害
 (10) 障害を持つ子どもの学習指導
 (11) 学習者の学びと学級における指導
 (12) 学習者の発達と学習指導
 (13) 学習者の発達と学習環境
 (14) 学習者の発達と教育の測定
 (15) 学習者の発達と教育の評価
[教材開発] 以下の手順で教材を開発した.
 (1) 授業用拡大呈示資料(PDF)の作成.
 (2) 授業解説ビデオ: 授業用PDF資料を使って授業の内容について説明している様子を録画したビデオ教材の作成.
 (3) 学生用の印刷資料(6Slide/1page)の作成配布.
[環境] 一人TTを実施する環境は以下の通り.(1) 教材を拡大呈示するプロジェクターとスクリーン(大型ディスプレイ),(2) 授業内容を記録しているビデオ教材,(3) 教材を提示する際の音声拡声装置, (4) 授業内容をメモできる受講生用印刷資料,(5) 授業者がビデオ教材の内容に補足説明するための拡大呈示用資料,(6) 印刷教材やビデオ教材を,受講生にわかりやすく配布するLMS等.

結 果
[授業実践]本論文を執筆している段階では,授業が完了していないが,現時点まででの授業実践について報告する.4週目までの実践で,3回の授業を一人TT方式の授業を行った.1回については,授業者がビデオ教材を使わない,通常の授業を行った.
[実践から明らかになった事]次のような点が明らかとなった.(1)授業内容を丁寧に説明したビデオ教材は,学生の予習復習用の教材として有用である. (2)一人TT形式での授業のためのビデオ教材は,授業内容の要点だけを説明する形で作成するのが適切である.しかし,要約しすぎると使いづらいものになる.今回の授業内容に限って言えば,授業時間の40%程度(90分授業に対して30〜40分)の長さの教材が適当であった.(3) この長さにビデオ教材をまとめるためには,教材の要点をまとめた資料を作成した上で,その要点を授業の流れにそって膨らませる形で収録することが適当であることが分かった.(4) 単純に授業内容を解説するビデオを作成する場合と比較して,撮り直しを含めると,ビデオ作成にかなりの時間を必要とすることが分かった。

考 察
 現在までの実践から,授業時間の半分を超えない長さの授業用ビデオ教材が望ましいことが明らかになった。今後,実践を続けながら,より作成の負担が軽く,効果的な教材の作成の方法を検討していく必要がある.発表当日には,実践の成果と課題について,対応策を含めて報告する.

引用文献
小川亮 (2018a). 一人TT(Self Team Teaching)方式による教育改善. 日本心理学会第82回大会.
小川亮 (2018b). 一人TT方式による心理学教育 実践的研究 :一人TTは「教える」と「学ぶ」を改善するか?. 日本教育工学会第34回全国大会.

<謝辞> 本研究は,JSPS科研費 18K02895の助成を受けたものです.

キーワード
一人TT方式/教材開発/教育心理学


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