発表

1B-084

学校親和性尺度の作成と検討

[責任発表者] 小林 亮太:1
[連名発表者・登壇者] 袰岩 秀章:1
1:埼玉工業大学

問題と目的
 不登校について様々な対策が講じられてきたが,未だ不登校は臨床の課題として重要である。不登校の研究ではしばしば学校回避感情といった不登校傾向を扱うが,こうした不登校傾向を測定する尺度の課題は二つ考えられる。第一に,こうした尺度では「学校に行きたくない」という感情を直接たずねるため,回答する生徒の心理的負担が大きい可能性がある。実際に筆者は,学校がこうした可能性を考えて,調査を断られた経験がある。また心理的負担が大きいと,より望ましいとされる方向へ回答が歪められる可能性も高くなると考えられる。第二に,不登校傾向がそれほど高くない生徒について扱うことが難しい点である。不登校を考える上では不登校傾向が高い生徒についてだけ扱うのではなく,予防的観点も含め,不登校傾向がそれほど高くない生徒についても探っていくことが重要ではないだろうか。
 以上を踏まえ,本研究では「学校に行きたい」といった学校に対する親和的な感情を学校親和性とし,学校親和性を測定する尺度の作成を試みる。学校親和性を扱うことで回答の心理的負担は小さくなると考えられ,また学校に対してそれほど強い回避感情をもたない生徒についても,予防的観点から指導することが容易になると考えられる。

方法
 調査対象者 関東の公立高校2年生(全日制,普通科)204名(男100名,女104名,平均年齢16.31歳,SD=0.46)。
 調査時期 20XX年夏期
 調査方法 ホームルームの時間を利用し集団で実施した。
 調査項目 学校ぎらい感情測定尺度(古市,1991),登校回避感情尺度(渡辺・小石,2000)を参考に12項目を作成した。1:「まったくあてはまらない」から5:「よくあてはまる」までの5件法で回答を求めた。

結果
 天井効果のみられた1項目(6「学校をやめたくなることはない」)を除き,因子分析(主因子法,promax回転)を行ったところ(Table1),十分に説明のつく因子構造は見られなかった。次に性差についてt検定を行ったところ,合計得点については有意でなかった(t(202)=1.67,n.s.)。男性の得点が有意に高かった4項目(2「この学校生活がずっと続けば良いのにと思う」,t(202)=2.13,p<.05;4「学校に来て,いやだと思うことはない」,t(202)=2.71,
p<.01;5「学校になるべく長くいたい」,t(202)=2.91,p<.01;7「学校にいると気分が明るい」,
t(199.95)=1.98,p<.05)を除き,再度7項目について因子分析(主因子法)を行ったところ,固有値の変動や因子の解釈可能性から1因子が妥当であると判断し,一次元性を確認するため主成分分析を行った(Table 2)。第一主成分の説明率が67.9%と高く,各項目の主成分負荷量も十分大きな値であることから,一次元性が確認された。平均値は24.56,標準偏差は5.99であった。得点の分布は左に歪んでおり,全体として高い傾向にあった。α係数は.914であった。

考察
 単一尺度であることが認められたが,除いた項目の中に男子の得点が有意に高いものが4項目存在した。高校生の登校回避感情の性差について有賀(2013)では,一部の因子で性別の影響が認められることが報告されている。男子の得点が高かった4項目は,そのような側面に関連しているために性差が認められた可能性がある。しかし,因子分析ではそれらの項目が別の因子としてまとまることはなかった。このことは,今回作成した項目が,性差の認められる学校親和性の側面を測定するには不十分であることを示唆している。この点についてはより多角的に項目を作成し,複数の因子を想定した学校親和性尺度を検討する必要がある。
 一方でα係数が十分高い値であったことから,今回作成された学校親和性尺度は,性差のみられない学校親和性の一側面を測定する目的では有用と考えられる。全体として得点が高い傾向であったことは,登校している生徒を対象に調査を行ったためと考えられ,今後不登校の生徒にも調査を実施し,妥当性や分布を検討する必要がある。

キーワード
学校親和性/不登校傾向/不登校


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