発表

1B-079

心理統計学の理解度把握のための予備的調査
統計的仮説検定および分散分析を中心として

[責任発表者] 堀内 正彦:1
[連名発表者・登壇者] 永田 陽子:1
1:駒澤大学

 心理学関連の学科において,統計学もしくは心理統計学は必須科目になっていることが多い。学生が一般企業に就職した際に,統計解析の技能を有していることは,今後益々活躍の場を広げると考えられる。その一方で,統計学は,学ぶ学生にとっても教える教員にとっても難しい科目である。このような状況を踏まえると,統計学の教育方法を改善することは,重要であり,なおかつ有益性が高いと考えられる。そのためには,教育方法の検討とともに,統計学に関する理解度の現状を正確に把握すること,そしてそのための調査における質問項目を確立することも重要な課題である。

 目的
 心理系学科の学生における統計的仮説検定と分散分析に関する統計学の理解度を把握するとともに,そのための,質問項目を検討することを本研究の目的とする。

 方法
調査対象者 心理系学科の学部学生・大学院生64名。
手続き 授業時間内において調査用紙が配布され,調査実施者による教示の後,調査対象者は回答した。
質問項目 調査実施日の他に,調査対象者のプロフィールとして,年齢,学年,大学入試の際に数学で受験したか,高校において履修した数学の科目,高校生の時に得意だった科目,苦手だった科目,大学で心理統計学の授業を履修した時の主観的な理解度について調査した。統計学的な内容についての設問は,1) 帰無仮説について,2) 対立仮説について,3) 両側検定,片側検定について,4) 棄却域,臨界値,有意水準について,5) 第1種の過誤,第2種の過誤について,6) 統計的仮説検定の基本的考え方について,7) 「検定統計量が臨界値を超えた」の意味について,8) 分散分析の基礎概念について,9)分散分析の計算過程について,10) 平方和,平均平方,F値について,11) 主効果,交互作用について,であり,5つの選択肢からの選択式であった。また,各設問についての主観的な難易度について5段階評定で回答が求められた。

 結果
全体的傾向全 設問の正答率は,0.45であった。また,Q1を除く9つの設問において,最も多く選択された選択肢は,正答である選択肢であった。各設問の間における正答率についての関連性を調べるために,φ係数を求めた(表1)。φ係数±0.4以上を示したのはQ2とQ4の間だけであり,その一方で,±0.2未満のφ係数が相当に多くの設問間で示され,極めて小さい値である±0.1未満も多く示され,全体的にかなり多くの設問間において正誤の関連性は希薄であった。
学年別の分析 学年要因(2年,3年,4年)を独立変数,正答数を従属変数とする1要因3水準のANOVAを行ったところ,F(2,59) = 0.945(n.s.)であった。各設問にごとに,2年生・3年生・4年生の3条件における正答数と誤答数の比率を検討するためにχ2検定を行ったところ,全ての設問において正答率に有意差があるとは認められなかった。各学年の間における標準偏差の差を検討するために,F検定を行った。その結果,2年生と3年生の間ではF(22,18) = 1.506(n.s.),2年生と4年生の間ではF(19,18) = 1.151(n.s.),3年生と4年生の間ではF(19,22) = 1.309(n.s.)であり,どの学年間においても有意差は認められなかった。

 考察
 全設問の正答率が0.45であったこと,および各設問において正答の選択肢が最も多く選択された結果から,統計的仮説検定および分散分析の全般について十分に理解している学生が多いとは言えないが,各設問に問われている内容については,誤認や誤解をしている学生よりは正しく理解している学生のほうが相対的に多いと推測される。多くの設問間において,正誤に関する関連性は希薄であった結果から,統計的仮説検定などに関する知識が関連付けられておらず,体系的になっているというよりは,断片的であると示唆される。
 学年別の正答率を検討した分散分析において有意と認められなかった結果,および各設問における学年説の正誤の比率を検討したχ2検定においても有意差が認められなかった結果から,統計的仮説検定および分散分析の全般に関して,学年が進んでもそれほど理解が深まっていないこと,さらに特定の領域についても学年が進んでもそれほど理解が深まっていないことに変わりないことが示される。各学年間における標準偏差の差を検討したF検定の結果から,学年間で顕著に変化することは示されなかったが,臨界値に近い値もあったことを考慮すると,今後改めて検討されるべき課題である。

 なお本研究は駒澤大学「人を対象とする研究」に関する倫理委員会の審査を平成30年10月に受けて,承認されている。

 表1. 正誤の度数に関する設問間のφ係数

キーワード
心理統計学/統計的仮説検定/分散分析


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