発表

1A-084

大学生を対象とする司法面接演習
心理学実験演習における実践のふり返り

[責任発表者] 赤嶺 亜紀:1
1:名古屋学芸大学

 司法面接は暗示や誘導の影響を小さく,面接者がオープン質問を用いて,被面接者の体験について自由報告を引き出すことを特徴とする。例えば,面接の文言が台詞化されているアメリカ国立小児保健・人間発達研究所のプロトコルなど,実用性の高い面接法が開発されている。しかし,トレーニングなしに面接を行うことは容易でない(仲, 2016)。
 名古屋学芸大学2018年度後期の心理学実験演習において2回の司法面接演習を行った。本報告ではその面接を再分析し,大学生を対象とする司法面接演習の要点を考察した。
【方法】
 分析の対象: 2回の面接演習の録音データが,授業期間後も保存されていた女性9名を分析の対象とした。
 面接のトピック: NHKの道徳番組『時々迷々』から4種の場面,各1分の映像を用いた。
 面接1回目: 2人1組になり,被面接者ははじめに映像を1種視聴した。面接者には5分間,被面接者からその内容を聴き取るよう教示した。会話は全て録音した。
 役割を交替して,同様に面接を行った。そして,全員が司法面接の特徴や面接法開発の背景について受講した。
 面接2回目: ペアを変えて,再び面接を行った。このとき面接者にクローズド質問ではなく,オープン質問を用いて被面接者の自由報告を多く引き出すよう教示した。
 発話量の分析: 全ての語句をひらがなで記した逐語録を作成し,面接者と被面接者の発話文字数を算出した。
 面接者の発話分類: 仲(2016)を参照し,次の6種に分類した。(1) オープン質問:「どんなお話しでしたか」「(さっき話していた)~について話して下さい」など応答を制約しない質問,(2) WH質問:いつ/誰/何などを尋ねる質問,(3)クローズド質問:「はい/いいえ」で応答を求める質問や複数の選択肢を含む質問,(4)返事:「うん,うん」などの応答や被面接者の発話のくり返し,(5) コメント:面接者の所感(「かわいい」「珍しい」など)や解釈(「小学生の3年生とか4年生とか5年生,それぐらいかなあ」を「10歳ぐらい」へ言い替えるなど),(6) その他:関連のない発話(「質問内容が全然思い浮かばない」など)。
【結果】
 発話量: 2回の面接の総発話量は差がなかった。話者(面接者・被面接者)×面接回数(1回目・2回目)の分散分析の結果,話者の主効果が認められ(F(1/8)= 267.4,p< .001),面接者より被面接者の発話量が有意に多かった。面接回数の主効果と交互作用は有意でなかった。なお,いずれの面接でも被面接者の発話のおよそ半分が最初の発話に集中していた。
 面接者の発話の種類: オープン質問は1回目の面接では0または1回に限られた。2回目の面接では最も多いケースで4回認められたが,9名中5名は1回以下であった。WH質問とクローズド質問は,2回の面接で差がなかった。一方,コメントやその他の発話は2回目の方が少ないようにみえた。
【考察】
 面接ごとの目標の明確化: 2回の面接に差はなかった。演習をくり返す際,面接者はクローズド質問ではなくオープン質問を用いる,被面接者の発話を解釈したり言い換えたりしないでくり返す(エコーイング)など,目標を明示することを留意するとよいだろう。
 面接のフィードバック: 面接者めいめいが逐語録を作ったが,その検討は十分でなかった。参加者が互いの面接を建設的に評価しあい,感想を共有することは,面接法の理解を促すものであり(仲, 2016など),演習で重視するポイントのひとつと考えられる。
 面接のトピックの選択: 被面接者は冒頭ひといきに,映像の内容を話した。面接者は直ちに概要を捉えることができたため,さらに何を問えばよいか,困惑する様子がみられた。短い映像は人物や場所など情報が限られるが,例えば最近の外食中の出来事など,被面接者自身の体験は拡張しやすく,初学者でも面接を展開しやすいかもしれない。
-----
 本研究はJST RISTEX「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域「多専門連携による司法面接の実施を促進する研修プログラムの開発と実装」研究プロジェクト(代表: 仲 真紀子)の一部である。

キーワード
司法面接/オープン質問/心理学実験演習


詳細検索