発表

1A-082

小学校児童の家庭および学校におけるソーシャルスキルが学級適応感に与える影響

[責任発表者] 古田 穂奈美:1
[連名発表者・登壇者] 田副 真美:1
1:ルーテル学院大学

目的
教育現場において,不登校,いじめ,発達障害等のある児童への対応が課題となって久しい。これらの問題の原因の一つに,ソーシャルスキル(以下,SS)の乏しさや不適切さが挙げられている。藤枝・相川(2001)は,学級は,児童が対人関係を維持していく上で必要とされるSSを学習する絶好の場と述べており,つまり学級はSSを用いる絶好の場であることが言えるだろう。また, Cowen et al.,(1973)によると,児童期はSSを学習するには最重要時期であると述べており,小学校の時期にSSを獲得することは今後の人格形成や人間関係において重要な役割を果たしていくことが考えられる。そこで本研究では,小学校児童の家庭および学校におけるSSが学級適応感に与える影響について検討することを目的とする。
方法
調査対象
首都圏近郊の私立・公立小学校に在籍する4,5,6年生の児童(各学年61名)を対象とした。有効回答数は183部となった。
質問紙調査
1)フェイスシート
2)家庭におけるソーシャルスキル尺度(戸ケ崎・坂野,1997)
3)学校におけるソーシャルスキル尺度(戸ケ崎・坂野,1997)
4)小学生用学級適応感尺度(江村・大久保,2012)
結果
1.因子分析
家庭におけるソーシャルスキル尺度に関して最尤法,バリマックス回転による因子分析を行なった結果,因子負荷量を考慮し18項目が採択された。4つの因子が抽出され,それぞれを関係維持行動,主張行動,関係向上行動,家族への気遣いと命名した。各因子のα係数は,α=.42~.69であった。
学校におけるソーシャルスキル尺度に関して最尤法,プロマックス回転による因子分析を行なった結果,4つの因子が抽出され,それぞれを友好的・向社会的関わり,積極的関わり,リーダー気質,自律性と命名した。各因子のα係数は,α=.69~.79であった。
小学校用学級適応感尺度に関して最尤法,プロマックス回転による因子分析を行なった結果,3つの因子が抽出され,それぞれを充実感,受容感,居心地の良さと命名した。各因子のα係数はα=.57~.78であった。
2.相関分析
1で抽出された各因子間の相関関係を検討するために,8つの因子に関してピアソンの積率相関係数を算出した。その結果,学級適応感尺度の充実感には関係維持行動(r=.152,p<.05),主張行動(r=.329,p<.01),積極的関わり(r=-.991,p<.01),リーダー気質(r=.214,p<.01)において有意な相関が見られた。受容感では,関係維持行動(r=.382,p<.01),友好的・向社会的関わり(r=.398,p<.01),家族への気遣い(r=.290,p<.01),リーダー気質(r=.198,p<.01),自律性(r=-.967,p<.01)において有意な相関が見られた。居心地の良さでは,主張行動(r=.147,p<.05),関係向上行動(r=.219,p<.01),友好的・向社会的関わり(r=.467,p<.01),積極的関わり(r=-.199,p<.01),リーダー気質(r=.729,p<.01)において有意な相関が見られた。
3.重回帰分析
学級適応感に与える影響を検討するために,学級適応感の下位尺度である充実感と受容感,居心地の良さを目的変数,関係維持行動,主張行動,関係向上行動,家族への気遣い,友好的・向社会的関わり,積極的関わり,リーダー気質,自律性の8つの要因をそれぞれの説明変数として重回帰分析を行った(Table1)。その結果,充実感は積極的関わり(β=-.899,p<.001)が,受容感は関係維持行動(β=.052,p<.05)と自律性(β=-.933,p<.001)が,そして居心地の良さは友好的・向社会的関わり(β=.208,p<.05)と,リーダー気質(β=.644,p<.001)が影響を及ぼしていた。
考察
本研究の結果,学級適応感の充実感には学校における積極的関わりが,受容感には家庭における関係維持行動と学校における自律性が,そして居心地の良さには学校における友好的・向社会的関わりが影響していることが分かった。
学級適応感を高めるためには,これまで学校生活における児童の教師や友達との関わりといった学校で用いるSSが重要視されてきたが,本研究によって家庭で用いるSSにも学級適応感を高める可能性があることが示唆された。今後は,家庭でのSSに影響を及ぼしている要因について検討する必要があると考えられる。

キーワード
小学生/ソーシャルスキル/学級適応感


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