発表

3C-076

5ヵ月の乳児を持つ母親のかかわりと子どもの社会性発達の関連について

[責任発表者] 矢藤 優子:1
[連名発表者・登壇者] 孫 怡#:1, 藤戸 麻美#:1, 連 傑濤:1, 眞田 和恵:2, 小島 晴予#:2
1:立命館大学, 2:花王 感覚科学研究所

【目的】本研究は,親のかかわりが子どもの発達にどのような影響を及ぼすか,特に,日常生活の中での母親の笑顔の表出が乳児の情緒・社会性とどのように関連するかについて検討することを目的としてなされた。本研究では,親子のおもちゃ遊び場面における行動観察により親子のかかわり,表情表出等の分析に加えて,母親に対する質問紙による育児ストレスを分析の対象とした。
【方法】2018年10月-12月の間に,大阪茨木市の子ども健康センターで4カ月健診に訪れた親子を対象に実験に関する募集チラシを配布し,同意を得た上で,1ヵ月後(生後5ヵ月),立命館大学いばらきキャンパスの実験室に訪問を依頼した。対象児は第1子のみとし,計47組の母子(男児20名,女児27名)が実験に参加した。そのうち1組が双子家庭のため母親は46名であった。実験では,積み木遊び場面における親子のかかわりを動画で撮影・記録し,その後母親には育児ストレス尺度(PSI)等の質問紙への回答を依頼した。撮影された動画は「かかわり指標」(Interaction Rating Scale,安梅・矢藤・篠原・杉澤,2007)に基づき,評定者2名によるコーディングを行った。また,1秒1コマのワンゼロサンプリング法により,母親と子どもの表情(ポジティブ/ネガティブ/ニュートラル)が評定された。
【結果】母親の笑顔(ポジティブ表情)表出生起数と親子のかかわり指標(IRS)の各領域,および母親のストレス尺度(PSI)との関連について分析を行った(表1,表2参照)。相関分析の結果から,母親の笑顔表出生起数とかかわり指標における子どもの「主体性」および母親の「認知発達への配慮」との間に有意な正の相関がみられた(r = .30, p < .05;r = .40, p < .01)。母親の育児ストレスの各側面とかかわり指標との関連については,C5(母親に付きまとう/人に慣れにくい)と「認知発達への配慮」との間に有意な負の相関(r = .31, p < .05),P1(親役割によって生じる規制)と「応答性発達への配慮」,「認知発達への配慮」,「社会情緒発達への配慮」との間にも有意な負の相関(r = .36, r = .36, r = .34, p < .05),P4(親としての有能さ)およびP6(退院後の気落ち)がそれぞれ子どもの「感情制御」との間に有意な負の相関が見られた(r = .40, p < .01;r = .31, p < .05)。また,積み木遊び場面における子どもの笑顔が生起した群(n=11)と生起しなかった群(n=36)で比較した結果,子どもの笑顔が表出された群のほうが,母親の「共感性発達への配慮」得点が有意に高かった(t= 2.14, p < .05)。PSIの「子ども側ストレス」と「母親側ストレス」との相関分析の結果では,子どものC3「期待どおりにいかない」およびC1「親を喜ばせる反応が少ない」と母親のP7「子どもに愛着を感じにくい」の間に有意な正の相関が見られた(r = .71, p < .01;r = .51, p < .01)。
【考察】
親子の日常的なかかわりの場において笑顔の表出が多い母親は,対象物の名称や特徴について説明するなど「認知発達への配慮」が高く,子どもも自ら母親に働きかける「主体性」が高いことが示された。一方,母親の育児ストレスが高いほど,母親の「応答性発達への配慮」,「認知発達への配慮」,「社会情緒発達への配慮」が低く,子どもの「感情制御」も低いことが示された。また,観察時間内に笑顔表出が見られた子どもの母親は「共感性発達への配慮」が高かった。本研究の結果より,母親の笑顔や子どもとの関わり方は,子どもの笑顔表出や社会性発達に及ぼす可能性が示唆された。さらに母親の関わり方には,母親の育児ストレスが影響している可能性が示唆された。
【引用文献】
安梅勅江・矢藤優子・篠原亮次・杉澤悠圭(2007).子どもの社会能力評価「かかわり指標」の妥当性と信頼性.日本保健福祉学会誌,14/ 1, 23-31.

キーワード
乳児/かかわり指標/社会性発達


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