発表

3B-072

子育て上困難を有するASD児の保護者へのペアレントトレーニングの試み

[責任発表者] 田中 さやか:1
[連名発表者・登壇者] 大島 吉晴:1
1:いづみ福祉会 障害者相談支援センターいづみ

1 はじめに ペアレントトレーニング(以下,ペアトレ)は,1960~70年代にアメリカで開発された保護者向けプログラムである。日本でも,精研式,肥前式,奈良方式などのプログラムが開発され,今ではASD圏の子どもを中心に,障害の有無にかかわらず様々な困難をもった子どもの保護者を対象に実施されている。当センターには,子育てや発達に関する相談も多く,必要に応じて福祉サービスの利用調整,関係機関との連携を行い,生活全体に渡る相談・支援を行っている。子育ての困難さに関する相談がある,あるいは相談はないものの子育て上の困難さ,課題が見受けられるケースでは,子どもの障害程度や特性のみならず,家庭の状況や保護者自身の生育歴,障害や疾病がその困難さ,課題に影響を与えているように思われることも少なくない。当センターでは,そのような保護者に対してもペアトレを実施し,その効果について検証した。
2方法 (1)実施時期 H28年~H30年度にかけて,計3グループに対してペアトレを実施した。(2)対象者 子どもに障害や発達上の課題があり,当センターで既に相談支援を提供していて直近の相談内容や家庭の状況から参加が望ましいと思われる保護者を中心に個別に参加を呼びかけた。(3)実施内容 フォローアップを除き全7回,1セッション2時間で,1回/2wの頻度で行った。講義は福祉圏域(京都府の山城南圏域)で共通のテキストを基に,話を聞きながらテキストの所定欄を追って見る等並行処理が苦手な保護者に配慮して全てパワーポイント資料に変換し,その他資料も視覚的な分かりやすさを考慮するなどの工夫を行った。セッション内のロールプレイも意図が把握できないことや,拒否感,侵襲性が高いことを考慮し,事前に職員が行い録画したものも併用した。内容は京都府実施のペアトレに関する発達障害専門職研修の内容に準じ,実施が望ましいとされる項目を含んだものであった。質問紙法で初回開始時に事前アンケート,7回目終了時に事後アンケートに記入を求めた。内容は,H28年度は”子の安定”と”親の安定”について,H29年度からは“育児の自信”と“子育ての不安”について問うもの”であった。また,今後の検討課題としてストレスやうつとの関連を調査するため,H29年度からは不定愁訴を中心とした”身体症状”について問うアンケートを事前・事後に追加で実施した。事後には参加した感想について聞き取りまたは自由記述で回答を求めた。全体を通してグループワークを意識した進行を行い,必要に応じて個々への働きかけを行った。参加者の発言や取り組みを集団の中で褒め認める対応を重視した。
3結果と考察 参加した保護者は3グループで15家族17名,1グループあたり4名~8名が参加し,各グループに発達,生育歴上の課題,精神疾患などの障害やその疑いのある保護者が含まれた。参加の呼びかけ方からも参加に消極的な保護者,好ましく思っていない保護者もいたが,共通のアンケートをとったH29,30年度の結果を見ると,”子育ての不安”は維持または低下し,”育児の自信”が維持または上昇する傾向が見られた(図1,2)。参加後の感想や実施後のフォローからも,「なんで参加しないといけないのだろうと思ったが,参加してよかった」など,全員において良好な反応が見られ,ペアトレは,障害や課題がある保護者や公募では参加に至らないと考えられる保護者に対しても,実施方法の工夫や実施前後のフォローにより効果が期待できると考えられる。また,”身体症状”については上昇する参加者も見られた (図3)。個々に見ていくと持病の悪化や,子の進学など生活上の出来事に対する反応が考えられた。当センターが実施した,子どもの障害の有無を問わず地域の子育て世帯向けに参加者を募って行ったペアトレにおいて”身体症状”が低下する傾向が見られ,今後の検討課題としてペアトレが子育てにおけるストレスや抑うつ状態の低減・今後の発現の予防とも関連する可能性も考えられたが,障害や課題のある保護者は生活上の出来事に影響を受けやすく,ペアトレの効果を高めるためには生活面からの支援も重要であると考えられる。

キーワード
ペアレントトレーニング/ASD/子育て支援


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