発表

3B-070

大学生のキャリア発達に関する研究(2)
~進路意識と学生生活や低年次の取り組みとの関連の再検討~

[責任発表者] 五十嵐 敦:1
1:福島大学

【目 的】大学において「低学年からのキャリアに対する意識づけ」が重視されている。しかし,その効果の実証性については“祭りの後”的なデータを示すだであり,1時点の限られた調査などである。五十嵐(2018ほか)は,大学生のキャリア発達において初年次の取り組みの功罪や日常の大学生活の重要性について指摘してきた。特に初年次の職場見学といった取り組みについての疑問を示唆した(五十嵐2018)。これがその年の学生に限った特徴かどうか,進路成熟度を指標に進路選択時効力感などとあわせて検証を試みた。
【方 法】(1)調査対象;地方国立大学の2年生2016年入学者695人,2017年入学者723人。性別や所属学類を明記した各657人と683人を分析対象とした。
(2)調査内容;基本的属性や進路希望,大学への満足度と卒業後の不安(4件法)などである。
①進路成熟態度;坂柳・竹内(1986)の尺度から関心性・自律性・計画性の3要因各2項目(6件法)。②進路選択効力感;浦上(1995)などの尺度に加え就職後の生活への自信など(6件法)。自己理解,就活自信,主体的選択,職業自信の因子構造が確認されている。
③大学生活のとらえ方;普段の大学生活への意識や態度など8項目とチャレンジや感情制御といった個人特性の側面4項目(5件法)。
【結 果】2017年入学者の状況は進路希望は,「あり」が550人(76.1%),「なし」は172人(26.5%)であった。その決定時期については,62.7%が入学前からであった。大学満足については全体平均2.73(.874),卒業後の進路不安は2.54(.903)と前年度より有意に低い値であった(いずれもp<.001水準)。また,性別による有意な差も確認されいずれも女子が男子より有意に高い値を示した(前者はp<.05,後者はp<.001)。
職場見学は,COC+事業の一環で行われており,分析対象者中396人(61.6%)が参加し,その有無による各変数の平均の差の検定を行ったところ統計的に有意な結果は得られなかった。ただし,計画性において不参加群の方が参加群よりやや高い傾向が見られた(p<.056)。
次に2017年入学者について進路成熟度の各変数を目的変数として,進路選択や大学生活の各変数による重回帰分析を行い,その結果をFig.1に示した。全体としては前年度と類似した特徴は見られたが,一部違いも確認された。五十嵐(2018)の報告では,大学生活不適応は「関心性」の有意な負の,主体的選択が「自律性」の有意な正の説明変数であったがここでは確認されなかった。
2016・17年入学者全体で重回帰分析を行った。その結果をFig.2に示した。各目的変数別にR2=.194,F=50.562,p<.001,R2=.262,F=80,601,p<.001,R2=.141,F=51.607,p<.001であった。「関心性」に対して,これまで有意な説明変数として抽出されなかった「大学生活積極性」が正の,「大学生活不全」が負の有意な説明変数として抽出され,あらためてキャリア成熟において日常の大学生活の大切さが示唆された。また,「卒業後の不安」と「主体的選択」が有意とはならず,「就活行動自信」が「計画性」と「自律性」の正の有意な説明変数となっていた。
職場見学参加は,全体で725人(54.7%)であったが,各変数で参加の有無による有意な違いは確認されなかった。情報提供の意味はあってもキャリア発達には直接的な影響については確認されなかった。

キーワード
キャリア発達/進路成熟/大学生活


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