発表

3B-067

保育園児の感情調整の発達を促す保育者の援助
場面による子どもの不快感情の表出とその対処

[責任発表者] 加藤 邦子:1
[連名発表者・登壇者] 近藤 清美:2
1:川口短期大学, 2:帝京大学

目 的 子どもは,保育所などの集団場面において,他児とのトラ ブル,ディリープログラムによる活動の区切りを伝える保育者の促しなどに対して,不安や不快を訴える等,葛藤を生じる場面を経験する.保育者等は,子どもの感情表出に対し て,何らかの対応をすると考えられる.加藤・近藤(2007) は,2歳児とその両親の親子遊び場面の行動分析から,両親 による子どもへの働きかけの特徴によっては,集団場面での 感情調整の行動評定が低くなるという結果を示している.す なわち,3歳未満児の場合,養育者がどのように子どもの感 情に対応するかが子どもの感情調整の発達に関連をもつと考 えられる.保育所等の集団場面において,子どもは保育者及 び他児との関係を築く過程でさまざまな感情を体験するが, 保育者による援助が欠かせないと考えられる.加藤・近藤 (2017)は,保育士へのインタビュー調査を実施し,保育場面 において子ども達が不快感情を表出する場面とその原因につ いて尋ねたところ,保育者の対応として,①子どもの内的感 情を理解し,感情表出に寄り添う,②相手への不快感情の表 出については,状況に応じて戒めたり,関係に介入する,③ 保育活動や環境を変えるなど原因を取り除く,などが考えら れ,様々な場面に応じて対応が異なること,子ども達の豊か な感情経験に対して,感情調整の発達を促すように保育者が 援助することが明らかになった. そこで本研究の目的は,保育所において子どもが泣く,怒 るなど不快感情を表出する場面をとりあげ,場面や年齢によ って子どもの感情表出とその対応が異なるのか,子どもの感 情調整の発達を支える保育者の援助や保護者との連携のあり 方を明らかにすることである.

方 法 保育所に通所している子どもが不快感情を表出した際に, 保育者がどのように対応しているのかについて,場面による 感情表出と保育者の対応との関連を明らかにするために,保育者を対象とした調査票を作成した.質問紙調査は 2018 年 11 月~2019 年 1 月に,東京都内公立保育所,大阪府内公立保育所に勤務する保育者 1511 名に実施した.各自治体の保育課に研究の目的・主旨を伝え,質問紙調査への協力を依頼し,協力していただける園に調査票を送付し,留め置き法で回収した. 調査票の内容は,年齢,勤務先,勤務形態,保育所の規模,担当クラス,勤務経験年数,子どもやその保護者と関わ る各場面において子どもが不快感情を表出した際への対応方法,西山(2006)を参考に作成した保育者効力感 12 項目,担 当する子どもの関わりにくさの評価として,Parenting Stress Index (Abidin,2005=2006)を参考に保育者の子ども評価9 項目であった.調査の回答票は,データ入力の専門業者に入力を依頼した.無記名で回収した.調査協力保育者のうちわけは,東京都内は 810 名,大阪府内は 701 名であった.協力 者の年齢は 29 歳から 51 歳,経験年数は 5 年から 30 年までばらつきがみられた.また担当する子どもの年齢は,0 歳児 担当 10%,1 歳児担当 16.2%,2 歳児担当 16.2%, 3 歳児担当 11.9%,4 歳児担当 12.1%,5歳児担当 11%であった.
結 果 保育園児が泣いたりぐずったり等の感情表出が見られたか否か,その際対応が難しいと保育者が感じたかどうかについ て場面ごとに尋ねたところ,朝の受け入れ 49%,着替えや身支度 46%,保育活動・遊び場面 59%,片づけ・切り替えの場面 60%,午睡の寝入り・目覚め場面 48%,子ども同士のトラ ブル時 64%が「あった」としていた.担当する子どもの関わ りにくさの評価に影響する要因として,保育活動・遊び場面,片づけ・切り替えの場面,午睡の寝入り・目覚め場面,子ども同士のトラブル等で,手こずるとした保育者ほど,関わりにくさを感じており,朝の受け入れ,着替えや身支度での 対応の難しさとの有意な関連は見られないことが明らかにな った.また担当する子どもの関わりにくさの評価は,保育者の年齢,経験年数(3歳未満児,3歳以上児いずれも),担当する子どもの数,子どもや保護者と関わる頻度,対応する 方略のちがいによる影響は有意ではなかったが,担当する子 どもの年齢が高いほど,保育者が子どもについて関わりにく いと感じていることが示された. 次に保育者効力感を規定する要因について分析したとこ ろ,保育者の年齢が高く,3歳以上児の経験年数が長いほ ど,保育者効力感が有意に高くなる.また朝の受け入れ時に 「親子分離で保護者に働きかける」ほど,「子どもの気持ち を理解し落ち着くまで寄り添う」ほど,効力感が高いことが わかった.子ども同士のトラブル場面では,「双方の気持ち をよく理解し,気持ちが落ち着くまで寄り添う」ほど,「双 方の気持ちを説明し,具体的にどうすればよいかを示す」ほ ど,担当する子どもの関わりにくさを感じていないほど保育 者効力感が高まることが示唆された.
考 察 保育園児が不快な感情を表出する場面は,1)子ども同士の トラブル場面,2)片づけや活動の切り替え場面,3)保育活 動・遊び場面,4)受け入れ時など,他児との対人関係,保育所のデイリープログラムによる切りかえ・活動の進め方など 保育環境要因,親子分離時などを要因とする難しさである. それが保育者にとって,担当する子どもの関わりにくさの評 価に影響することが明らかになった.一方担当する子どもの 年齢が高いほど,保育者は関わりにくさを感じており,感情 調整の発達を援助することは重要な課題である.そのための 保育者の方略として,一人ひとりの子どもの気持ちを理解し 落ち着くまで寄り添う,気持ちを代弁し具体的にどうすれば よいかを示す,等対人感情へのアプローチが必要であること が示唆された.
本研究は科学研究費補助金基盤研究 C(課題番号 16K04414) 研究代表加藤邦子「未就学児の感情コントロールの発達を促 す保育者の支援」の助成を受けた研究の一部である.

キーワード
感情調整/未就学児/不快感情


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